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二話 嫌いな男にイかされて
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由那は不敵な笑みを浮かべて千優を見つめた。
何故ここで笑顔になれるのか、理解が出来ない。千優は気味の悪さに吐き気すら感じる。
「あれ、驚いた?」
当たり前だ。だが、驚愕より何より千優混乱した頭を占めた感情は怒りだった。
例えば道を歩いていて石に躓いて転んだ時、石に怒りを覚えるだろう。それと同じだ。起こった事象の原因に対して怒りが込上げる。
入れ替わった事に対してというよりは、由那に対してだが。
「……お前なんかと入れ替わるなんて」
「あれれ、俺もしかして千優に嫌われてる?」
「もしかしてじゃねぇよ。嫌いだ」
どうして嫌われてるんだろう? と、由那なのんきに首を傾げている。
関わった事のない相手だ。嫌っている理由は特にないが、木元のファンなのに毎年由那と同じクラスになるので、八つ当たりのようなものに近い。
「……ま、知ってたけどね!」
その由那の言葉に、どうして──と聞こうとした時だった。
由那の身体はドクドクと心臓の動悸が激しくなり、熱くなった。
千優はトイレというのも忘れて地面に膝をついてしまう。
「大丈夫?」
「なんっ……なんだ、これ……」
下半身が熱くなってくる。
千優は内腿を合わせたが、高まったものは静まりそうにない。
涙が浮かんでくる。
立ち上がるのも苦しい程全身がビリビリと感じてしまっている。
「体、苦しい?」
「く、来須……」
「それ、辛そうだね」
「な、なにが?」
「隠すなよ、苦しいでしょう?」
由那が千優の手を掴んだ。
驚く間もなく、俺は来須に引っ張られトイレの個室に押し込まれた。
そして無理矢理便座に座らされる。
「はぁ……っ」
由那に触られると、気持ち良さに思わず吐息が漏れた。
「あの……適当に抜いておくから、外に出てろよ」
「いーや。俺がしてあげる」
抵抗する間もなく下半身を露わにされ、強引に男性器を掴まれる。
由那は手馴れた様子で陰茎扱くと、ゆっくりと勃つ事には勃つが、射精には至らない。
驚きと、自分の身体とはいえ由那に自慰を手伝ってもらっている事への嫌悪から、精神的に気持ち良くなれないのだ。
「ほら、恥ずかしがらずに思い切りイけよ」
そんな千優の気持ちを知る筈もなく、由那は文句を言い始めた。
クラスでは見せた事のない、男の顔だ。
普段の媚を売るような姿は演技だというのか、千優は余計に由那に対して嫌悪感が増した。
「無理……」
「目ぇ瞑って、好きな人の事でも考えてもいいよ」
千優が目を瞑ると、脳裏に浮かぶのは木元の顔だ。
ファンに囲まれてチヤホヤされるのが当たり前な由那とは真逆で、誰にも触らせずに由那と同じだけの人気を獲得している彼。
思い浮かべた瞬間射精感が高まり、他人に触られている気持ち良さからか、あっという間に射精した。
「誰思い浮かべたの? 早いな」
「うるせーよ」
千優が目を開くと、由那が白く粘つく液体で手を汚しながら楽しそうに笑っていた。
「可愛いねぇ。俺にイかされたからって顔赤くしちゃって。照れ?」
「情けなくて自分にイライラしてるだけだ。つか、お前、やっぱキャラ作ってんのかよ」
「ったりめーだろ。なんとか君ありがとね♡なんて、素でやってたらキメェわ」
「……だよなぁ」
千優にとって由那は性悪である方が都合が良いのだ。馬鹿なクラスメイト達は性悪とも知らずに女の様な男に群がっていると分かれば、胸が軽くなる気がしたからだったのだが。
「なーんてね! 俺、攻める時は男になっちゃうみたい。普段はこのままでよろしくね。素で気持ち悪くてごめんねっ」
はははと笑いながら由那は手を洗い始めた。
由那の表も裏も見えない。ニコニコと楽しそうに笑っている理由も分からない。
千優は翻弄された事に腹立たしくなるが、その前に射精をした筈の身体が、また熱を持ち始めた事に困惑する。
「はぁ。もう一つ疑問、どうなってんだこの体?」
「良い体してるでしょ?」
便座に座ったまま千優は体を脱力させた。
由那は濡れた手をプラプラと揺らして千優の目の前に立つと、まだ楽しそうに笑っている。けれど、千優はその笑顔に寂しさのようなものを感じた。
「人よりちょーっと感じやすくてね、だから辛くなったら皆と遊ばせてもらってるんだ」
「ちょっと?」
「まぁ色々あるのさ。入れ替わった身体がそんな身体でごめんね」
「説明してくれ」
千優が睨むと、由那は少し困った顔をした。
話すかどうか悩んでいるらしく、悩んでいるようだ。うーんと唸っている。
「今リハビリ中なんだけど……」
「リハビリ?」
「そう。俺、定期的にエッチしないと欲求不満で体が辛くなって歩くのも大変になるんだよ。だから今はしない日を増やすようにしてる」
「なんだって?」
「まずは二日我慢するところから始まって、今は五日我慢できるようになった。……で、ちょうど今日が六日目だから体が一番苦しい時なんだよ」
「……どうしてこんな事に?」
「それ聞いて同情でもしてくれるの?」
質問に質問で返された事に千優は苛立ちを覚えた。
「千優だけには話したくない」
「俺だけ?」
「だって俺も千優の事嫌いだもん」
「お前……」
本当に嫌いなのか。由那はそう言う割に笑顔だ。
お互い嫌いだと言い合っても仕方がない、千優は提案をした。
早く戻りたいと思ったのもある。
「分かった。お互い嫌い同士って事なら話は早い。
とりあえず、元に戻ろうぜ! ほら同じ状況になれば戻るかもしれない!」
「また階段落ちるつもり? 無駄だよ」
「無駄?」
「痛い思いしたくないなぁ」
嫌だなぁ由那は困っている顔を見せた。
そんな由那とは逆に、痛い思いしてでも戻りたいと千優は切実に思っている。
と、同時にある疑問が脳裏を過ぎった。
階段で一緒に落ちた時、そして入れ替わった時、由那は迷わずに「千優」と呼んだ。
下の名前を呼ばれている苛立ちを覚えるが、それは考えないようにする。
どうしてすぐに入れ替わったと気付いたのか。
そして、何故千優と入れ替わったと分かったのか……。
「もしかして、この入れ替わり、お前何か知ってるだろ?」
「ピンポーン正解です」
「教えてくれよ」
「べーっだ。嫌いだから教えないもんっ」
「男がべーとかもんっとか言うな! つーか俺の顔で言うんじゃねぇよ」
由那はウインクしながら舌を出して千優を茶化す。そうされてしまうと千優もどうしていいか分からない。
千優が思いついた策は、仲直りする振りをして元に戻してもらう事だった。
「来須。俺が悪かった。いつもお前の事睨んでたから、それでこんな事。
どうやったか知らないが、元に戻してくれよ。なぁ、お前のファンになるから!」
もちろん嘘だが。
「それが……出来ないんだよね。俺の力じゃないし、戻り方分からないんだ」
「誰の力だ?」
「流れ星?」
千優の頭に『流れ星』の単語で浮かんだのが、一週間前にあった流れ星だ。クラスメイト達が見たと言って騒いでいるのを聞いただけだが。
「そ。俺、あの日青姦しててさ。空見たら流れ星流れてるじゃん? 千優と入れ替わりたいよ~ってお願いしたんだよね」
由那は申し訳なさそうな顔してウインクをした。今までウインクで色々な事を許されてきたのだろうと思うと、千優は殴りたい衝動に駆られた。
「どうして俺?」
「たまにはボッチ生活も楽そうかなって」
「おいテメー喧嘩売ってんのかよ」
「あはははっ」
千優は青くなった。本気で流れ星が願いを叶えたとすると、いつ元に戻れるか分からないからだ。
無論信じている訳では無いが。
「でも、このままなんて嫌じゃん?」
「俺はそうでもないけど?」
「は?」
「だーかーらぁ。俺は入れ替わったままでいいよ」
由那はあくまでも優しい笑顔を千優に向けた。
千優は焦る。由那の身体で生きていくなんて、納得出来る筈がない。
「はぁ? どうして!? 協力しろよ!! 俺、このままなんて嫌だよ!!」
「だってぇ。俺もその身体で生きるのやだもん」
「嫌なら他人に押し付けようとするなよ!!」
「やーだよ。昔千優に意地悪されたから復讐するもんっ」
語尾に「もん」を付けた気持ち悪さより、由那の言葉が気になった。
そもそも由那と関わる事は、中学入学してから今の今までない。
会話も今が初めてと言っていいだろう。
知らないところで何か由那にしてしまったとでもいうのか。
「俺、お前に何かしたのか?」
俺は出来るだけ下手に出て、来須に何をしてしまったのかを問う。何かしたなら謝ろうと思っての事だったが、
「ま、覚えてなくても無理ないよね。絶対教えなーい」
復讐だと言っている割に、由那はにこーっと楽しそうな笑顔を向けたのだった。
何故ここで笑顔になれるのか、理解が出来ない。千優は気味の悪さに吐き気すら感じる。
「あれ、驚いた?」
当たり前だ。だが、驚愕より何より千優混乱した頭を占めた感情は怒りだった。
例えば道を歩いていて石に躓いて転んだ時、石に怒りを覚えるだろう。それと同じだ。起こった事象の原因に対して怒りが込上げる。
入れ替わった事に対してというよりは、由那に対してだが。
「……お前なんかと入れ替わるなんて」
「あれれ、俺もしかして千優に嫌われてる?」
「もしかしてじゃねぇよ。嫌いだ」
どうして嫌われてるんだろう? と、由那なのんきに首を傾げている。
関わった事のない相手だ。嫌っている理由は特にないが、木元のファンなのに毎年由那と同じクラスになるので、八つ当たりのようなものに近い。
「……ま、知ってたけどね!」
その由那の言葉に、どうして──と聞こうとした時だった。
由那の身体はドクドクと心臓の動悸が激しくなり、熱くなった。
千優はトイレというのも忘れて地面に膝をついてしまう。
「大丈夫?」
「なんっ……なんだ、これ……」
下半身が熱くなってくる。
千優は内腿を合わせたが、高まったものは静まりそうにない。
涙が浮かんでくる。
立ち上がるのも苦しい程全身がビリビリと感じてしまっている。
「体、苦しい?」
「く、来須……」
「それ、辛そうだね」
「な、なにが?」
「隠すなよ、苦しいでしょう?」
由那が千優の手を掴んだ。
驚く間もなく、俺は来須に引っ張られトイレの個室に押し込まれた。
そして無理矢理便座に座らされる。
「はぁ……っ」
由那に触られると、気持ち良さに思わず吐息が漏れた。
「あの……適当に抜いておくから、外に出てろよ」
「いーや。俺がしてあげる」
抵抗する間もなく下半身を露わにされ、強引に男性器を掴まれる。
由那は手馴れた様子で陰茎扱くと、ゆっくりと勃つ事には勃つが、射精には至らない。
驚きと、自分の身体とはいえ由那に自慰を手伝ってもらっている事への嫌悪から、精神的に気持ち良くなれないのだ。
「ほら、恥ずかしがらずに思い切りイけよ」
そんな千優の気持ちを知る筈もなく、由那は文句を言い始めた。
クラスでは見せた事のない、男の顔だ。
普段の媚を売るような姿は演技だというのか、千優は余計に由那に対して嫌悪感が増した。
「無理……」
「目ぇ瞑って、好きな人の事でも考えてもいいよ」
千優が目を瞑ると、脳裏に浮かぶのは木元の顔だ。
ファンに囲まれてチヤホヤされるのが当たり前な由那とは真逆で、誰にも触らせずに由那と同じだけの人気を獲得している彼。
思い浮かべた瞬間射精感が高まり、他人に触られている気持ち良さからか、あっという間に射精した。
「誰思い浮かべたの? 早いな」
「うるせーよ」
千優が目を開くと、由那が白く粘つく液体で手を汚しながら楽しそうに笑っていた。
「可愛いねぇ。俺にイかされたからって顔赤くしちゃって。照れ?」
「情けなくて自分にイライラしてるだけだ。つか、お前、やっぱキャラ作ってんのかよ」
「ったりめーだろ。なんとか君ありがとね♡なんて、素でやってたらキメェわ」
「……だよなぁ」
千優にとって由那は性悪である方が都合が良いのだ。馬鹿なクラスメイト達は性悪とも知らずに女の様な男に群がっていると分かれば、胸が軽くなる気がしたからだったのだが。
「なーんてね! 俺、攻める時は男になっちゃうみたい。普段はこのままでよろしくね。素で気持ち悪くてごめんねっ」
はははと笑いながら由那は手を洗い始めた。
由那の表も裏も見えない。ニコニコと楽しそうに笑っている理由も分からない。
千優は翻弄された事に腹立たしくなるが、その前に射精をした筈の身体が、また熱を持ち始めた事に困惑する。
「はぁ。もう一つ疑問、どうなってんだこの体?」
「良い体してるでしょ?」
便座に座ったまま千優は体を脱力させた。
由那は濡れた手をプラプラと揺らして千優の目の前に立つと、まだ楽しそうに笑っている。けれど、千優はその笑顔に寂しさのようなものを感じた。
「人よりちょーっと感じやすくてね、だから辛くなったら皆と遊ばせてもらってるんだ」
「ちょっと?」
「まぁ色々あるのさ。入れ替わった身体がそんな身体でごめんね」
「説明してくれ」
千優が睨むと、由那は少し困った顔をした。
話すかどうか悩んでいるらしく、悩んでいるようだ。うーんと唸っている。
「今リハビリ中なんだけど……」
「リハビリ?」
「そう。俺、定期的にエッチしないと欲求不満で体が辛くなって歩くのも大変になるんだよ。だから今はしない日を増やすようにしてる」
「なんだって?」
「まずは二日我慢するところから始まって、今は五日我慢できるようになった。……で、ちょうど今日が六日目だから体が一番苦しい時なんだよ」
「……どうしてこんな事に?」
「それ聞いて同情でもしてくれるの?」
質問に質問で返された事に千優は苛立ちを覚えた。
「千優だけには話したくない」
「俺だけ?」
「だって俺も千優の事嫌いだもん」
「お前……」
本当に嫌いなのか。由那はそう言う割に笑顔だ。
お互い嫌いだと言い合っても仕方がない、千優は提案をした。
早く戻りたいと思ったのもある。
「分かった。お互い嫌い同士って事なら話は早い。
とりあえず、元に戻ろうぜ! ほら同じ状況になれば戻るかもしれない!」
「また階段落ちるつもり? 無駄だよ」
「無駄?」
「痛い思いしたくないなぁ」
嫌だなぁ由那は困っている顔を見せた。
そんな由那とは逆に、痛い思いしてでも戻りたいと千優は切実に思っている。
と、同時にある疑問が脳裏を過ぎった。
階段で一緒に落ちた時、そして入れ替わった時、由那は迷わずに「千優」と呼んだ。
下の名前を呼ばれている苛立ちを覚えるが、それは考えないようにする。
どうしてすぐに入れ替わったと気付いたのか。
そして、何故千優と入れ替わったと分かったのか……。
「もしかして、この入れ替わり、お前何か知ってるだろ?」
「ピンポーン正解です」
「教えてくれよ」
「べーっだ。嫌いだから教えないもんっ」
「男がべーとかもんっとか言うな! つーか俺の顔で言うんじゃねぇよ」
由那はウインクしながら舌を出して千優を茶化す。そうされてしまうと千優もどうしていいか分からない。
千優が思いついた策は、仲直りする振りをして元に戻してもらう事だった。
「来須。俺が悪かった。いつもお前の事睨んでたから、それでこんな事。
どうやったか知らないが、元に戻してくれよ。なぁ、お前のファンになるから!」
もちろん嘘だが。
「それが……出来ないんだよね。俺の力じゃないし、戻り方分からないんだ」
「誰の力だ?」
「流れ星?」
千優の頭に『流れ星』の単語で浮かんだのが、一週間前にあった流れ星だ。クラスメイト達が見たと言って騒いでいるのを聞いただけだが。
「そ。俺、あの日青姦しててさ。空見たら流れ星流れてるじゃん? 千優と入れ替わりたいよ~ってお願いしたんだよね」
由那は申し訳なさそうな顔してウインクをした。今までウインクで色々な事を許されてきたのだろうと思うと、千優は殴りたい衝動に駆られた。
「どうして俺?」
「たまにはボッチ生活も楽そうかなって」
「おいテメー喧嘩売ってんのかよ」
「あはははっ」
千優は青くなった。本気で流れ星が願いを叶えたとすると、いつ元に戻れるか分からないからだ。
無論信じている訳では無いが。
「でも、このままなんて嫌じゃん?」
「俺はそうでもないけど?」
「は?」
「だーかーらぁ。俺は入れ替わったままでいいよ」
由那はあくまでも優しい笑顔を千優に向けた。
千優は焦る。由那の身体で生きていくなんて、納得出来る筈がない。
「はぁ? どうして!? 協力しろよ!! 俺、このままなんて嫌だよ!!」
「だってぇ。俺もその身体で生きるのやだもん」
「嫌なら他人に押し付けようとするなよ!!」
「やーだよ。昔千優に意地悪されたから復讐するもんっ」
語尾に「もん」を付けた気持ち悪さより、由那の言葉が気になった。
そもそも由那と関わる事は、中学入学してから今の今までない。
会話も今が初めてと言っていいだろう。
知らないところで何か由那にしてしまったとでもいうのか。
「俺、お前に何かしたのか?」
俺は出来るだけ下手に出て、来須に何をしてしまったのかを問う。何かしたなら謝ろうと思っての事だったが、
「ま、覚えてなくても無理ないよね。絶対教えなーい」
復讐だと言っている割に、由那はにこーっと楽しそうな笑顔を向けたのだった。
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