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三十六話 素直な気持ち
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「嫌いにならない? って……」
そんな事聞かれても──と、言葉に詰まった。嫌いにならないって言うのは簡単だけどさ、そんなもん約束なんか出来ない。
「そういう潤はどうなんだよ? お義父さんの事好きって言ってたけどさ、今はどうなの?」
「今は別に好きでもなんでもない。あの人を好きになった事は俺の黒歴史」
「ほら! そういう嫌いにならないとかって感情はさ、約束出来ないんだよ。
俺が今嫌いにならないって言ってもさ、実際嫌いになったら、嘘つきになるだろ」
「……嘘つきじゃん」
潤はぶーっと不貞腐れた顔で俺を睨んだ。嘘つきってなんだよ。なんなんだよ。
「怜治は凄い嘘つきだよ。中学の時も好きって言いながらブスって言ったし。俺ブスじゃないのに。
好きな人には酷い事言っちゃうって言ってたのにさ、付き合ってた時俺に優しく好きだって言ってきたじゃん。
お前は好きな人に暴言吐く人間じゃないのかよ!? 俺に好きって言ったの嘘じゃん!」
ええ!? そんな事思われてたの?
や、確かに周りが見えなくなる程好きで仕方ないって程じゃなかったけど、好きなのは本当だったのに……。
「そんなんで俺の愛を測るんじゃねぇよ! じゃあ俺が暴言言わないから好きじゃないって思われてたのか?」
「そうだよ!」
「ざけんなよ!!」
「でも実際そうだったじゃん」
「けど、今は違うんだって!」
「信用出来ない。あんなに練習したのに結羽さんに本音言えなかったじゃん。やっと言えたと思ったら変な事言うし。
怜治は、思った事言おうとしても出来ない奴だろ?」
「俺だってなぁ!! 成長するんだよ!!」
ドンッとテーブルを叩いて、激しく怒鳴ってしまった。そんなに白熱したつもりはなかったんだけど、いつの間にか真剣になってた。
潤が怯えているような顔してる。もしかして君は怖がりなのかもしれないね。
「ごめん……」
潤が謝ってきた。謝罪というより、俺に怒りを収めて欲しいという様子だ。
「いや、俺の方が悪かった」
「どうせ、怜治だって俺が悪いと思ってるんだろ?」
「そんなつもりねぇよ」
潤がシュンとしてしまった。どうしよう。小さい事で俺がキレてしまったから……。
分からない。潤が分からないんだ。
そんなに怖がりな人だったっけ? そんなにひねくれた人だったっけ?
君がずっと嘘の顔しか見せてこなかったから、俺には潤が何一つ分からない。
「なぁ、潤は中学の時、俺の事どう思ってた?」
「……なんとも思ってなかったよ。中学で同じクラスだった時は好きだったけど、あの告白の一件以降は憎くて仕方なかったし」
「高校で会った時、最初俺の事避けなかったよな? あの告白で怒ってたのに、どうしてだ?」
「復讐のチャンスだと思ったんだもん。お前をケツでしかイけないようにして、人生狂わせてやりたかった」
「そんなにキレてたの? 憎まれる程? 復讐を決意される程!?」
「………つん!!」
潤はあからさまに不機嫌な顔のまま顔だけそっぽ向いて、機嫌悪いですアピールをしてきた。
「分かった、もう嫌な事言わないよう努力するから」
「でもさ、一瞬でもそう思ったからあんな言葉が出てきたんじゃないの?」
あんな言葉? どれだろう。
『罰ゲームだよ、お前みたいなブスに誰が告るかよ!』
って言ったんだよな?
確かにキレる。俺も言われたらキレるかも。でも、復讐したいと思って実行する程か!?
いや──どう感じるかは人それぞれか。何気ない一言が大事になる事もあるのが、人間関係なんだから。俺には誠心誠意謝る事しか出来ない、よな。
「本当にごめんなさい。言ってしまった事は思ってない事だったんだよ。むしろ思ってた事と真逆っていうか」
「……」
潤が不信の目を俺に向けてきた。本当に? とでも言いたげだ。
「潤は綺麗だし、美人だと思うよ。肌とか毎日ケアしてるんだろ? 分かってるんだよ、本当に」
上手く言えない。たどたどしくなって、これじゃ体裁整えてるみたい。でも本音なんだ、信じてくれ。
「今はなんで言えるの?」
「今までの俺じゃダメだって気付いたから。姉貴に毒吐いてた時も分かってはいたけど、心の底から本気で自分を変えようって思ってなかったんだよ。
でも、潤がいなくなってから、潤が俺に必要な人だって分かってから、自分を変えたいって本気で思った。
今本音を言えるのは、自分を変える第一歩でしかない」
「ふぅん、そうなんだ」
潤の頬が少し赤くなった。照れているのか、俺から目を逸らしている。
「潤は、今の俺をどう思う? 潤の本音が聞きたい。どんな答えでも、もう逃げないから」
「俺……怜治に褒められるの好きなんだ。チンコ勃つくらい好き」
潤はにこーっと照れたような笑顔を向けてきた。
言ってる事おかしいけど、潤は綺麗な人だ。初めて好きになった時と変わらない。
「ははっ、なんだよそれ」
「俺が怜治を好きになった理由だよ。褒められて勃起してから好きになった。
でも本当の怜治はまだ分からない事だらけでさ。姉貴ラブで、好きな人には天の邪鬼で、アニオタで、学校じゃ人気者で、エッチの時は誰よりも可愛いって事しか知らないの。
怜治の事、もっと知りたいよ」
「俺も。潤の事知りたいからデートしたいと思うんだ。でさ、次の日曜付き合って欲しい場所があるんだけど、一緒に来てくれる?」
俺は潤にデートを申し込んだ。もう潤は演技の顔は一切せずににこにこと頷いてくれた。
「いいよ。どこ?」
「行ってからのお楽しみ。午後が良いかな、駅前で待ち合わせとか出来る?」
「いいよ、全部怜治に合わせるよ」
「ありがとう」
よし、ここまでよく頑張ったよ俺。あともう一歩。潤がどこまで俺に心を許してくれているかは分からない。でももう少し頑張れ俺。
そんな事聞かれても──と、言葉に詰まった。嫌いにならないって言うのは簡単だけどさ、そんなもん約束なんか出来ない。
「そういう潤はどうなんだよ? お義父さんの事好きって言ってたけどさ、今はどうなの?」
「今は別に好きでもなんでもない。あの人を好きになった事は俺の黒歴史」
「ほら! そういう嫌いにならないとかって感情はさ、約束出来ないんだよ。
俺が今嫌いにならないって言ってもさ、実際嫌いになったら、嘘つきになるだろ」
「……嘘つきじゃん」
潤はぶーっと不貞腐れた顔で俺を睨んだ。嘘つきってなんだよ。なんなんだよ。
「怜治は凄い嘘つきだよ。中学の時も好きって言いながらブスって言ったし。俺ブスじゃないのに。
好きな人には酷い事言っちゃうって言ってたのにさ、付き合ってた時俺に優しく好きだって言ってきたじゃん。
お前は好きな人に暴言吐く人間じゃないのかよ!? 俺に好きって言ったの嘘じゃん!」
ええ!? そんな事思われてたの?
や、確かに周りが見えなくなる程好きで仕方ないって程じゃなかったけど、好きなのは本当だったのに……。
「そんなんで俺の愛を測るんじゃねぇよ! じゃあ俺が暴言言わないから好きじゃないって思われてたのか?」
「そうだよ!」
「ざけんなよ!!」
「でも実際そうだったじゃん」
「けど、今は違うんだって!」
「信用出来ない。あんなに練習したのに結羽さんに本音言えなかったじゃん。やっと言えたと思ったら変な事言うし。
怜治は、思った事言おうとしても出来ない奴だろ?」
「俺だってなぁ!! 成長するんだよ!!」
ドンッとテーブルを叩いて、激しく怒鳴ってしまった。そんなに白熱したつもりはなかったんだけど、いつの間にか真剣になってた。
潤が怯えているような顔してる。もしかして君は怖がりなのかもしれないね。
「ごめん……」
潤が謝ってきた。謝罪というより、俺に怒りを収めて欲しいという様子だ。
「いや、俺の方が悪かった」
「どうせ、怜治だって俺が悪いと思ってるんだろ?」
「そんなつもりねぇよ」
潤がシュンとしてしまった。どうしよう。小さい事で俺がキレてしまったから……。
分からない。潤が分からないんだ。
そんなに怖がりな人だったっけ? そんなにひねくれた人だったっけ?
君がずっと嘘の顔しか見せてこなかったから、俺には潤が何一つ分からない。
「なぁ、潤は中学の時、俺の事どう思ってた?」
「……なんとも思ってなかったよ。中学で同じクラスだった時は好きだったけど、あの告白の一件以降は憎くて仕方なかったし」
「高校で会った時、最初俺の事避けなかったよな? あの告白で怒ってたのに、どうしてだ?」
「復讐のチャンスだと思ったんだもん。お前をケツでしかイけないようにして、人生狂わせてやりたかった」
「そんなにキレてたの? 憎まれる程? 復讐を決意される程!?」
「………つん!!」
潤はあからさまに不機嫌な顔のまま顔だけそっぽ向いて、機嫌悪いですアピールをしてきた。
「分かった、もう嫌な事言わないよう努力するから」
「でもさ、一瞬でもそう思ったからあんな言葉が出てきたんじゃないの?」
あんな言葉? どれだろう。
『罰ゲームだよ、お前みたいなブスに誰が告るかよ!』
って言ったんだよな?
確かにキレる。俺も言われたらキレるかも。でも、復讐したいと思って実行する程か!?
いや──どう感じるかは人それぞれか。何気ない一言が大事になる事もあるのが、人間関係なんだから。俺には誠心誠意謝る事しか出来ない、よな。
「本当にごめんなさい。言ってしまった事は思ってない事だったんだよ。むしろ思ってた事と真逆っていうか」
「……」
潤が不信の目を俺に向けてきた。本当に? とでも言いたげだ。
「潤は綺麗だし、美人だと思うよ。肌とか毎日ケアしてるんだろ? 分かってるんだよ、本当に」
上手く言えない。たどたどしくなって、これじゃ体裁整えてるみたい。でも本音なんだ、信じてくれ。
「今はなんで言えるの?」
「今までの俺じゃダメだって気付いたから。姉貴に毒吐いてた時も分かってはいたけど、心の底から本気で自分を変えようって思ってなかったんだよ。
でも、潤がいなくなってから、潤が俺に必要な人だって分かってから、自分を変えたいって本気で思った。
今本音を言えるのは、自分を変える第一歩でしかない」
「ふぅん、そうなんだ」
潤の頬が少し赤くなった。照れているのか、俺から目を逸らしている。
「潤は、今の俺をどう思う? 潤の本音が聞きたい。どんな答えでも、もう逃げないから」
「俺……怜治に褒められるの好きなんだ。チンコ勃つくらい好き」
潤はにこーっと照れたような笑顔を向けてきた。
言ってる事おかしいけど、潤は綺麗な人だ。初めて好きになった時と変わらない。
「ははっ、なんだよそれ」
「俺が怜治を好きになった理由だよ。褒められて勃起してから好きになった。
でも本当の怜治はまだ分からない事だらけでさ。姉貴ラブで、好きな人には天の邪鬼で、アニオタで、学校じゃ人気者で、エッチの時は誰よりも可愛いって事しか知らないの。
怜治の事、もっと知りたいよ」
「俺も。潤の事知りたいからデートしたいと思うんだ。でさ、次の日曜付き合って欲しい場所があるんだけど、一緒に来てくれる?」
俺は潤にデートを申し込んだ。もう潤は演技の顔は一切せずににこにこと頷いてくれた。
「いいよ。どこ?」
「行ってからのお楽しみ。午後が良いかな、駅前で待ち合わせとか出来る?」
「いいよ、全部怜治に合わせるよ」
「ありがとう」
よし、ここまでよく頑張ったよ俺。あともう一歩。潤がどこまで俺に心を許してくれているかは分からない。でももう少し頑張れ俺。
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