36 / 44
三十一話 胸の痛み
しおりを挟む
潤のお義父さんは風花ちゃんの日記を見て目を少し大きくさせた。
「あの、俺、風花ちゃんと中学二年の時同級生だったんです。三年になって転校したと聞いていましたが、でも実際は自殺したと……」
「ちょっと待ってくれ。自殺した、というのは潤から聞いたのか?」
なんだかお義父さんの様子がおかしい。眉間に皺を寄せている。
「はい。実は、中学二年生の時、俺は風花ちゃんに告白したんですが、酷い暴言を吐いてしまいました。そのせいで風花ちゃんは自殺したと……。
それは……本当に反省してます」
「違う。それは違う。娘は……風花は、中学一年の時交通事故で亡くなったんだ」
お義父さんが何言ってるか頭に入ってこない。ていうか、意味が分からない。
「は? ……え? いやいや、俺、風花ちゃんが中学二年の時に転校してきて、同じクラスだったんですよ」
「すまない。驚くだろうが、聞いて欲しい。それは潤なんだ」
「はい?」
「中学二年のクラスに潤が風花として転校したんだ」
しん……と時間が止まった気がした。
思考が上手く働かない。俺の初めて本気で恋をした女の子──風花ちゃんは潤だったって?
いやいや、まさか。まさか。まさか。
そんな事信じたくない。だって、俺、俺──潤に恋をしてたって事になるじゃないか。
「なんでそんな事……」
「あの頃風花が死んで、妻がおかしくなったんだ。潤は母親の為に、風花になる事を選んだ。
妻は潤に注ぐべき愛を全て風花に与えていたから、きっと潤はそれを感じ取っていたんだろう」
「それで潤が女装して俺のいた中学に通ってたって?」
「そうだ」
沸々と怒りが込み上げてきた。だっておかしいだろ? 俺、風花ちゃんは俺の暴言のせいで自殺したって聞いたんだぞ。
だから、潤のいう事は全部聞いた。それが贖罪になると思ったから。
──その前提が違ったとしたら。
「じゃあ潤がまた転校していった理由は?」
「母親が亡くなって、もう風花のふりをする必要がなくなったんだ」
「じゃあ俺……あいつに騙されて……?」
震えが止まらない。
あんなに潤に謝って、脅迫されて性処理道具みたいな扱い受けて、でも俺は償わなきゃって思ってた。
潤の事知れば知る程、心を許してた。
優しくて、穏やかで、綺麗な人だって思ってたのに。
俺の中のアイツが腐っていく。汚くて、気持ち悪い、汚物のように思えてきてならない。
「何があったのか、話してくれないか?」
俺が嫌悪感を表面に出したからか、潤のお義父さんが優しい顔で聞いてくれた。
俺は、高校生になってから、潤にされた事を話した。
風花ちゃんは俺のせいで自殺したって。償いに身体の関係を強要されたと。
話してしまうと、潤のお義父さんは少し待っててくれと店を出た数十分後に戻ってきて俺に封筒を渡してた。
「五十万入ってる」
言葉の意味が分からない。
「それは……どういう?」
「これで忘れてくれ。あの子には俺からキツく言っておく。なんなら高校もやめさせて、君には近付かないようにさせる」
「誰にも言うなって事……」
本当、血の繋がりって関係ないんだな。
父親と子供で似てるじゃねぇか。優しい顔をしながらやってる事は、金で脅して俺を操作しようとしてる。
コイツも、潤も、内面の醜さは同じだ。
「ふざけんな。そんなんで忘れられるかよ」
「橋村君」
「言わねぇよ! つか、言えるかよ」
金は受け取らずに、潤のお義父さんを放置して店を出た。不愉快でたまらない。
あーもう許さねぇ。せめて潤には報復しなきゃ。今までされてきた事、何倍にして返してやる! そう決めた。
そろそろ学校も終わる時間になって、俺は潤の家の前で待つ事にした。
いつまで経っても帰ってこないからイライラする。
少しして、ようやく潤が帰ってきた。
いつもと同じような優しい顔で、心配してるような態度だった。
もう潤を綺麗な人とは思えなかった。
めちゃくちゃに穢してやりたい気持ちを押さえられずに、潤を犯した。犯して、ボロボロにしてやった。
不思議と罪悪感とかはなくて、内心ザマァミロって思ったのに……。
なのに、胸の奥は痛くてたまらなかった。
「あの、俺、風花ちゃんと中学二年の時同級生だったんです。三年になって転校したと聞いていましたが、でも実際は自殺したと……」
「ちょっと待ってくれ。自殺した、というのは潤から聞いたのか?」
なんだかお義父さんの様子がおかしい。眉間に皺を寄せている。
「はい。実は、中学二年生の時、俺は風花ちゃんに告白したんですが、酷い暴言を吐いてしまいました。そのせいで風花ちゃんは自殺したと……。
それは……本当に反省してます」
「違う。それは違う。娘は……風花は、中学一年の時交通事故で亡くなったんだ」
お義父さんが何言ってるか頭に入ってこない。ていうか、意味が分からない。
「は? ……え? いやいや、俺、風花ちゃんが中学二年の時に転校してきて、同じクラスだったんですよ」
「すまない。驚くだろうが、聞いて欲しい。それは潤なんだ」
「はい?」
「中学二年のクラスに潤が風花として転校したんだ」
しん……と時間が止まった気がした。
思考が上手く働かない。俺の初めて本気で恋をした女の子──風花ちゃんは潤だったって?
いやいや、まさか。まさか。まさか。
そんな事信じたくない。だって、俺、俺──潤に恋をしてたって事になるじゃないか。
「なんでそんな事……」
「あの頃風花が死んで、妻がおかしくなったんだ。潤は母親の為に、風花になる事を選んだ。
妻は潤に注ぐべき愛を全て風花に与えていたから、きっと潤はそれを感じ取っていたんだろう」
「それで潤が女装して俺のいた中学に通ってたって?」
「そうだ」
沸々と怒りが込み上げてきた。だっておかしいだろ? 俺、風花ちゃんは俺の暴言のせいで自殺したって聞いたんだぞ。
だから、潤のいう事は全部聞いた。それが贖罪になると思ったから。
──その前提が違ったとしたら。
「じゃあ潤がまた転校していった理由は?」
「母親が亡くなって、もう風花のふりをする必要がなくなったんだ」
「じゃあ俺……あいつに騙されて……?」
震えが止まらない。
あんなに潤に謝って、脅迫されて性処理道具みたいな扱い受けて、でも俺は償わなきゃって思ってた。
潤の事知れば知る程、心を許してた。
優しくて、穏やかで、綺麗な人だって思ってたのに。
俺の中のアイツが腐っていく。汚くて、気持ち悪い、汚物のように思えてきてならない。
「何があったのか、話してくれないか?」
俺が嫌悪感を表面に出したからか、潤のお義父さんが優しい顔で聞いてくれた。
俺は、高校生になってから、潤にされた事を話した。
風花ちゃんは俺のせいで自殺したって。償いに身体の関係を強要されたと。
話してしまうと、潤のお義父さんは少し待っててくれと店を出た数十分後に戻ってきて俺に封筒を渡してた。
「五十万入ってる」
言葉の意味が分からない。
「それは……どういう?」
「これで忘れてくれ。あの子には俺からキツく言っておく。なんなら高校もやめさせて、君には近付かないようにさせる」
「誰にも言うなって事……」
本当、血の繋がりって関係ないんだな。
父親と子供で似てるじゃねぇか。優しい顔をしながらやってる事は、金で脅して俺を操作しようとしてる。
コイツも、潤も、内面の醜さは同じだ。
「ふざけんな。そんなんで忘れられるかよ」
「橋村君」
「言わねぇよ! つか、言えるかよ」
金は受け取らずに、潤のお義父さんを放置して店を出た。不愉快でたまらない。
あーもう許さねぇ。せめて潤には報復しなきゃ。今までされてきた事、何倍にして返してやる! そう決めた。
そろそろ学校も終わる時間になって、俺は潤の家の前で待つ事にした。
いつまで経っても帰ってこないからイライラする。
少しして、ようやく潤が帰ってきた。
いつもと同じような優しい顔で、心配してるような態度だった。
もう潤を綺麗な人とは思えなかった。
めちゃくちゃに穢してやりたい気持ちを押さえられずに、潤を犯した。犯して、ボロボロにしてやった。
不思議と罪悪感とかはなくて、内心ザマァミロって思ったのに……。
なのに、胸の奥は痛くてたまらなかった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
僕は肉便器 ~皮をめくってなかをさわって~ 【童貞新入社員はこうして開発されました】
ヤミイ
BL
新入社員として、とある企業に就職した僕。希望に胸を膨らませる僕だったが、あろうことか、教育係として目の前に現れたのは、1年前、野外で僕を襲い、官能の淵に引きずり込んだあの男だった。そして始まる、毎日のように夜のオフィスで淫獣に弄ばれる、僕の爛れた日々…。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる