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二章 心を取り戻す為に
二話 闇オークションの会場
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初めて参加した人身売買の現場は、影井が想像していた通りのものだった。
開催している組織が持っている大きな洋館の地下で行われており、一流ホテルのような豪華さだ。
ここで行われる事の全てが非合法である。招待された者しか立ち入れない。
峰岸は招待状があるので難なく館内に通されるが……。
「失礼ですが、彼は?」
受付の女性が鋭い目で影井を見つめた。特に有名でもない人間だ、女性は怪しむ目を隠す事なく何者かを探っている。
「俺のツレだ」
「峰岸様のお連れ様でも、どういった者か把握出来なければお通しする事は出来ません」
招待客が連れて来た者も参加は可能だが、身分証明が出来なければ中には入れない。
もし一般人だと分かれば、招待客もろとも消される可能性もある。それだけ秘密裏に行われている事であり、そのルールも影井が助言した。
「失礼しました。わたくしは影井と申します」
影井はすぐに『株式会社KAGEI 代表取締役』と書かれた名刺を渡すと、女性は名刺を数秒眺めて「どうぞお入りください」と頭を下げた。
「あれ、意外とあっさりだったな」
影井は中へ進みながらも、不思議な顔して女性から視線を外せずにいる。
「彼女は影井の名前でお前がこのオークションの相談役だと気付いたのさ。他の奴らは知らないが気を悪くするなよ」
峰岸の言葉の意味が分かるのはすぐの事だった。
他の客達がこんなところでも営業をしようと声を掛けてくるのだが、何者かと尋ねられ、影井が自身の会社の話をすると、当たり障りのない会話を少ししていなくなるのだ。
まだ駆け出しのベンチャー企業の社長と交流しても仕方ないと判断されたようだ。
影井からは営業をしない。現行で犯罪を犯している者の会社と繋がってもメリットはないと思ったからだ。
峰岸のように友達という繋がりでなければ、なるべく関わりたくない。
参加者は仮面を被っている者もいる。自分が何者であるか知られたくない者が被っている。峰岸に、仮面を被ったらどうだ? と言われたが、それは断った。
会場は電灯が点いていないので薄暗いが、ライトが照らされていてぼんやりと明るい。柔らかい絨毯に、滑らかな触り心地の一人掛けのソファが壇上に向かって十席程用意されている。頼めばワインやつまみも用意される。
そこに影井は峰岸と並んで座った。峰岸は冊子を影井に渡してきた。
「これがパンフレットだ。この会場内でしか見れない持ち出し禁止だから持って帰るなよ」
渡された冊子を開くと、今日出品される子供一人一人のプロフィールが写真付きで書かれてあった。
ほとんどが八歳前後だ。一番年上が十歳。彼らは傷ものとして、B品扱いで売られるのだ。
「この子達は皆経験済みなのだな。こんな子供に欲情出来る人の気が知れない」
影井は顔を顰めた。この商売に対して批判があるわけではないが、良い気がしないのは確かだ。
「おいっ、誰に聞かれてるか分からないぞ」
「あぁ。悪い」
「全く。大人しく見てろよ。俺はその子が目当てなんだ」
峰岸は七歳の男児を指さした。写真は暗い顔をした栄養失調を心配したくなるような細い子供だ。
「子供なんか買ってどうするんだ?」
「俺好みに育てる! そんで、風俗じゃ出来ないプレイするんだ。お前はこの中じゃ誰が気になる?」
「強いて言うなら──」
その時。段々と照明の光が絞られていき、会場は真っ暗になった。壇上だけが薄暗くだが照明が点いてそこに子供達が五人一列に並ばされた。
全員全裸で、股間を隠す事を禁じられている。
一人ずつ買われていき、オークションは予定通り進んでいた。結局峰岸は目当ての子供を手に入れられなかった。
そして、最後に一人残った少年──影井と彼は目が合い、見つめ合った。
──────────────────────
※一章六話とリンクしてます。
開催している組織が持っている大きな洋館の地下で行われており、一流ホテルのような豪華さだ。
ここで行われる事の全てが非合法である。招待された者しか立ち入れない。
峰岸は招待状があるので難なく館内に通されるが……。
「失礼ですが、彼は?」
受付の女性が鋭い目で影井を見つめた。特に有名でもない人間だ、女性は怪しむ目を隠す事なく何者かを探っている。
「俺のツレだ」
「峰岸様のお連れ様でも、どういった者か把握出来なければお通しする事は出来ません」
招待客が連れて来た者も参加は可能だが、身分証明が出来なければ中には入れない。
もし一般人だと分かれば、招待客もろとも消される可能性もある。それだけ秘密裏に行われている事であり、そのルールも影井が助言した。
「失礼しました。わたくしは影井と申します」
影井はすぐに『株式会社KAGEI 代表取締役』と書かれた名刺を渡すと、女性は名刺を数秒眺めて「どうぞお入りください」と頭を下げた。
「あれ、意外とあっさりだったな」
影井は中へ進みながらも、不思議な顔して女性から視線を外せずにいる。
「彼女は影井の名前でお前がこのオークションの相談役だと気付いたのさ。他の奴らは知らないが気を悪くするなよ」
峰岸の言葉の意味が分かるのはすぐの事だった。
他の客達がこんなところでも営業をしようと声を掛けてくるのだが、何者かと尋ねられ、影井が自身の会社の話をすると、当たり障りのない会話を少ししていなくなるのだ。
まだ駆け出しのベンチャー企業の社長と交流しても仕方ないと判断されたようだ。
影井からは営業をしない。現行で犯罪を犯している者の会社と繋がってもメリットはないと思ったからだ。
峰岸のように友達という繋がりでなければ、なるべく関わりたくない。
参加者は仮面を被っている者もいる。自分が何者であるか知られたくない者が被っている。峰岸に、仮面を被ったらどうだ? と言われたが、それは断った。
会場は電灯が点いていないので薄暗いが、ライトが照らされていてぼんやりと明るい。柔らかい絨毯に、滑らかな触り心地の一人掛けのソファが壇上に向かって十席程用意されている。頼めばワインやつまみも用意される。
そこに影井は峰岸と並んで座った。峰岸は冊子を影井に渡してきた。
「これがパンフレットだ。この会場内でしか見れない持ち出し禁止だから持って帰るなよ」
渡された冊子を開くと、今日出品される子供一人一人のプロフィールが写真付きで書かれてあった。
ほとんどが八歳前後だ。一番年上が十歳。彼らは傷ものとして、B品扱いで売られるのだ。
「この子達は皆経験済みなのだな。こんな子供に欲情出来る人の気が知れない」
影井は顔を顰めた。この商売に対して批判があるわけではないが、良い気がしないのは確かだ。
「おいっ、誰に聞かれてるか分からないぞ」
「あぁ。悪い」
「全く。大人しく見てろよ。俺はその子が目当てなんだ」
峰岸は七歳の男児を指さした。写真は暗い顔をした栄養失調を心配したくなるような細い子供だ。
「子供なんか買ってどうするんだ?」
「俺好みに育てる! そんで、風俗じゃ出来ないプレイするんだ。お前はこの中じゃ誰が気になる?」
「強いて言うなら──」
その時。段々と照明の光が絞られていき、会場は真っ暗になった。壇上だけが薄暗くだが照明が点いてそこに子供達が五人一列に並ばされた。
全員全裸で、股間を隠す事を禁じられている。
一人ずつ買われていき、オークションは予定通り進んでいた。結局峰岸は目当ての子供を手に入れられなかった。
そして、最後に一人残った少年──影井と彼は目が合い、見つめ合った。
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※一章六話とリンクしてます。
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