少年ペット契約

眠りん

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九話 一人ぼっち

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 オレの上を雪夜が覆う。犯されるんだって分かったけど、雪夜を拒めない。

「ゆ、雪夜……?」

「最初からフミの事をこういう目で見てた」

 雪夜の手がオレの服の裾を掴んで、胸の上までたくしあげる。
 覚悟は売られた時からしてた。相手が雪夜なら全然怖くない。

「そう」

「十二歳の子供に対して、四十越えたおじさんが性的な目で見て、しかも買ったんだ。
 それは勿論、栞もだよ。ランク落ちの奴隷として売られていて、可哀想だからって気持ちもあったけど、性的な目で見て、欲しいって思わなきゃ買ってなかった。
 フミはそれでも俺が犯罪者じゃないって言い切れるのか!?」

「もちろん言える!」

 オレは考えるまでもなく答えた。だって世間じゃ犯罪者って大きな犯罪をした悪い人ってイメージじゃん。
 例えば、脱税で逮捕される人がいてもさ、犯罪者って呼ばれないじゃん。ただ脱税した人でしょ。
 法律を違反したでも、犯罪者って呼ばれる場合と呼ばれない場合がある。第三者の目からどう見えるかは別として、俺から見たら雪夜は犯罪者じゃないよ。

 未成年オレを襲っても犯罪者認定してやらない。

「誰がなんと言おうと、雪夜は犯罪者じゃないし、オレと栞ちゃんの命の恩人なんだ。
 ねぇ、オレ、買ってもらってから、あなたの奴隷らしい事は何一つして来なかったよね」

「フミは奴隷じゃない」

「ほら、そういうところが犯罪者っぽくないって。本当はオレに何しても良かったんだよ?
 そんな雪夜だから全部あげられるの。オレの初めてをもらってくれないかな?」

「俺は四十越えたオッサンだぞ? いいのか?」

「もちろんいいよ。年齢なんて関係ない。オレは雪夜が好き! だからいいの」

 雪夜はオレをお姫様抱っこして、オレの部屋に連れていった。いつも雪夜や栞ちゃんと一緒にゴロゴロして幸せにしてくれたベッド。
 最近は寝るのもソファーで適当に寝てたな。

 二人でお互いの服を脱がせ合いっこした。雪夜の身体は皮が弛んでて、なんかオッサンくさかった。

「本当にいいのか? 本当に俺で」

「何度もしつこい! 早くしてよ。オレ、雪夜のペットみたいだったよな。面倒見てもらってさ、なんの恩も返さずに、好き勝手ゴロゴロして。
 これでようやくオレの仕事が出来るよ」

「フミに仕事をして欲しいなんて思った事は一度もない。せめて、愛する人だと思って抱かせて欲しい」

「分かった。雪夜、来てよ」

 雪夜の性器はもうおっきくなって、オレは少しビビったけど、ゆっくりと尻穴を解してもらって、オレの気持ちいいところに誘導した。

「そこ、オレのイッちゃうところだから、おチンチンで擦って?」

「ああ。フミ、愛してる」

 肉棒がオレの尻の穴の中をかき分けて入ってきた。圧迫感と、息苦しさ、だけど感じるソコを肉棒の先端で擦られると甘い快楽がオレを襲った。

「あっ……そこ、あっ、んっ」

 必死になって腰を振った。気持ち良すぎる交尾は、オレの頭を真っ白にした。
 逮捕の事も、今後の事も、全部忘れて雪夜とのセックスだけに夢中になった。

 あぁ幸せだ。でも、もうこの幸せも終わりに近付いている。

 雪夜にイッて欲しくなくて、腰の動きを止めたり、長々とキスをしたりした。
 そんな小細工で長引かせても、必ず終わりはくるものだ。

 腸内に雪夜の精液が放たれるのを感じ、泣きながら射精をした。

「雪夜……もっと早くこうしていれば良かった。雪夜が好き。オレ、雪夜が好きだよ」

「フミ。文和。俺も好きだよ。ごめんな、また一人にしてごめん」

 オレは頭を左右に振って否定した。オレは一人になんてなった事ないんだ。
 これから一人になるんだろうか? 

 それからしばらくは雪夜と二人きりで過ごした。栞ちゃんがいなくなった家の中は汚くなる一方だから、オレも雪夜も掃除したり、サクラの世話をしたり、料理しながらどうにか二人で生きた。

 それからしばらくして裁判の日を迎えてしまった。予想通り一審は有罪だった。

 オレは一人で嘆願書を求める活動をした。
 でもオレがストックホルム症候群なのだと説得する者がいたり、雪夜を非難する声が多くて、署名はなかなか集められなかった。

 マスコミにも追われた。対応してもろくな事はないって雪夜に言われたからずっと無視を続けた。
 だって無反応も一つの反応でしょ?
 学校でも後ろ指を刺されるし。すごく辛かった。学校で好きだった人達を、皆嫌いになりそうだ。

 そんな日々だけど、また再保釈でオレの元に戻ってきた雪夜と毎日セックスをした。心の隙間を埋めるように身体を重ね合う。
 離れたくない。離れたくないよ。
 無罪になってよ。雪夜は悪い事なんてしてないんだから!

 その後も控訴審でも有罪だった。
 嘆願書のお陰かは知らないけど、一審よりは罪が軽くなってた。
 
 雪夜は再保釈でまたオレの元に戻ってきてくれた。
 あとどれだけ一緒にいられるんだろうか。
 雪夜と過ごす毎日は苦しかった。辛いけど、雪夜には絶対泣き顔なんて見せたくなかったから、無理して明るく振舞ってた。

 雪夜もオレを気遣ってくれてるの、凄く感じた。
 二人で支え合ってたんだと思う。まるで夫婦みたいだね。


 そして運命の時がやってきてしまった。
 雪夜は上告審で懲役二年の判決を受けた。

 一人になると涙が止めどなく流れた。
 誰も慰めてはくれないし、励ましてもくれない。本当に一人ぼっちになっちゃったんだね。

 一人になってから、オレはコンビニのバイトに励んだ。嫌でも高校だって休まずに行った。胸に空いた穴は広がる一方だ。
 サクラの世話も散歩も、家事も、バイトも、学校も、一人じゃ辛いだけだ。
 学校の友達は、オレの扱いに困るみたいで距離を置かれてるし。


 一ヶ月もしない内に何もしたくなくなった。

 バイトはすぐに辞めてしまった。高校も休みがちになった。
 サクラを家の中に入れて、毎日サクラと遊んだり、ベッドの上でサクラとゴロゴロした。
 だって一人でゴロゴロしたってつまらなかったんだもん。

 両親と住んでいた時は、お母さんと一緒だったから幸せだったんだ。
 雪夜に買われてからは、雪夜も栞ちゃんも毎日オレと話してくれて、オレがベッドにいたら構ってくれたから幸せだった。
 またペットみたいに可愛がられたい。もう、一人は嫌だ。誰か……誰か……助けてよ!!


 ニートみたいな生活してると、頭とかボーッとしてきて生きてるってなんだろう? って思う。
 やる事がなくて家の中でボールを投げてサクラと遊んでいると、チャイムが鳴った。
 最近はもう来なくなったマスコミだろうか? それとも知らない人からの嫌がらせだろうか?

 恐る恐るインターフォンに出ると、そこには栞ちゃんが立っていた。
 一気に頭が冴えてくる。

「あの、フミ?」

「栞ちゃん!!」

 帰ってきてくれた!! 良かった!! 一人で雪夜を待つのはもう辛いよ、苦しいよ。
 栞ちゃんがいてくれれば、楽しく雪夜を待てるよね? 絶対そう!!

 玄関を開いて庭を走った。門を開く。

「栞ちゃん!!」

「フミ、ごめんね、私だけ家に帰ってしまって」

「ううん。親御さんの元に帰れたんだよね? それで? こっちにいてもいいって?」

「……フミ。本当にごめん。私、もうこっちには戻れない。お父さんとお母さんに会って、子供の頃を思い出したの。
 もう親不孝は出来ないから」

 栞ちゃんは悲しそうな顔でオレを見ていた。本当に申し訳ないって顔。
 そんな栞ちゃんを責められるわけないよ。

 近くに車が止まってる。不安そうにこちらを見る男女はきっと栞ちゃんのご両親だね。
 オレはペコって頭を下げた。するとご両親も、オレに軽く頭を下げてくれた。

「そっか。いいよ、栞ちゃんが決めた事だもん」

「そ、それでね……サクラを引き取りにきたの」

「サクラを……」

 今、オレの唯一の味方のサクラを?

「サクラは私が高校卒業のお祝いに雪夜さんが買ってくれた犬なの。
 私が選んで、私が名前を付けてね、育ててきてね。
 だから、言いにくいんだけど、返して……くれるかな?
 サクラの残りの時間、そんなに長くないから、最後まで私が面倒を見たい。
 今までずっと放置してた癖に、ごめんね」

 栞ちゃんは今にも泣きそうだ。オレがサクラを大事にしてたの知ってるから、オレから引き離す事を今までずっと悩んでたのかも。

「うん、勿論! その方がサクラも嬉しいと思う」

 オレは明るい笑顔を作った。泣いたらダメだ。栞ちゃんが辛くなる。笑顔で送り出さないと。

「フミ、ごめん、本当に」

「いいってば。あと、栞ちゃんに渡すものあるんだ! 雪夜から。待ってて!」

 オレは栞ちゃんに通帳と印鑑を渡した。雪夜が栞ちゃんを買ってから今まで十四年間、毎月貯金していた定期預金だ。

「雪夜さん……雪夜さぁぁんっ」

 栞ちゃんは大声で泣き出しちゃった。今はもうオレの方が背が高い。抱き締めて背中をポンポンと叩く。

「ごめんなさい。フミ、一人にしてごめん。ごめんね」

「大丈夫」

 心配はいらないよ。オレは一人でも大丈夫、だから罪悪感なんて感じなくていいんだ。
 そんな思いを込めて笑った。


 サクラがいなくなって一週間。
 オレは死んだみたいに何も出来なくなっていた。
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