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七話
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フレッサには長年使われていなかった離宮が与えられた。
数名の侍従がつき、身の回りの世話をしてもらえる。専用のコックも雇われて豪勢な食事が振る舞われた。
本来ならば感謝をしながら、今後ここでどう生きていくか模索しただろう。
だが、フレッサの頭にあるのは雇い主の事だった。
いずれ起きる戦争でヘイリア帝国を討ち滅ぼす為に、フレッサを送り込んだクレイル公国の大公。
フレッサの仕事が順調に進めば、クレイル公国はヘイリア帝国に奇襲を仕掛ける計画だった。
(計画は頓挫したのか? 失敗したのか?
それとも今は別の計画を立てているのか?)
一刻も早くここから抜け出し、仕事に戻らなければならない。離宮で甘やかされ、牙を削られている場合ではないのだ。
抜け出すには体力を戻さなければならない。一年に渡る拷問、七日もの間餓死寸前まで消耗している今、すぐ動くのは難しい。
傷を癒しながら過ごし、毎夜夜這いに来るウェルディスの相手をしながら、逃げ出す機会を窺っていた。
その日の夜もウェルディスはフレッサの元に現れた。
皇帝が来たのに出迎えないわけにもいかず、玄関まで顔を出す。
「また来たのか。毎日ご苦労な事だな」
相手が皇帝と分かってからもフレッサの態度は変わらない。
ウェルディスは敵でしかない。好かれているからと謙るのは雇い主を裏切るようで嫌だった。
そんな態度を見る度、離宮で働く者達がヒヤヒヤした目でフレッサを見つめている。
「ふふ。フレッサ、ここでの生活には慣れたか?」
「慣れない。特にアンタに慣れない」
「またまた。そんな憎まれ口も可愛いものだ。さぁ行こう」
ウェルディスはフレッサの肩を抱き、フレッサの寝室へと向かった。
部屋に入るとまるで自分の部屋であるかのように、ベッドに座り気を抜いたように身体を伸ばした。
「んー。今日も疲れたなぁ。フレッサ、僕を癒してくれる?」
「ああ」
フレッサはウェルディスを押し倒し、服を脱がせた。露わになる肌を見ると我慢が出来なくなる。
(どうして。敵なのに。何故か二人きりになると抗えられなくなる)
毎日肌を重ねる毎にウェルディスの感じるところが分かっていく。
胸の突起をしゃぶるように舐める。それで悦ぶのはウェルディスだけではない。
フレッサもまるで母親のミルクを求めるかのように、しゃぶる行為をやめられない。
舐めているとウェルディスが頭を撫でてくる。この優しい手つきから離れたくなくなるのだ。
「アンタ、自分を癒せって言ったな?」
「うん。僕は君とこうして抱き合うと一日の疲れが消えるからね」
「ふん。俺を都合のいい道具だと思ってるんだろ? 本音を言われたところでやる事は変わらないんだ。
俺の前で良い人ぶるなよ」
そこまで言ってハッと口を閉じた。そしてウェルディスから目を逸らして下着を脱がす。
行為に入ってしまえば無言でウェルディスの性欲を発散させるだけだ。それが終わるのを耐えればいいのだと自分に言い聞かせる。
決して自分から求めてなどいないと。
「素直になったらどうだ? 僕にもっと触って欲しいんだよな?」
「そんな事。俺は俺の役割を果たすだけ……」
そこまで言うと、ウェルディスが身体を起こしてフレッサを抱き締めた。
この手は魔法にでもかかっているのかと思える程、フレッサの思考力は消えた。
「こうして抱き締められるの、好きだろう?
君が僕の良いところを知っているように、僕も君が喜ぶ事を知ってる」
逆に押し倒された。抵抗は出来ない。顎を掴まれてキスをされると、フレッサの顔がほんのりと桃色に染まる。
「僕が君で癒されるように、君も僕で癒されて欲しいと思う」
フレッサは黙って頷いた。
「君の為ならなんでもしてあげる。してもらいたい事全部言ってみろ」
「……アンタの乳首、しゃぶりたい」
「うん」
「あと俺の尻を犯して。俺のチンコ触って欲しい」
「うん。他には?」
「俺の尻の奥に白いの出して。あったかくなるの、悪くない」
ウェルディスはフレッサの全てを叶えた。優しく抱かれて、フレッサの敵対心などすぐに消えてしまう。
ここに来てから毎日その繰り返しだ。
皇帝の肉便器になったのだと思えば悔しくも楽だった。しかしウェルディスがそれを許さない。
こんなに愛されて、道具扱いされているなど思える筈がない。
身体を貫かれるとフレッサは背を弓なりにさせて喘いだ。
「あぁっ……」
ウェルディスの肉棒は気持ちが良いのだ。拷問を受けても耐えられるフレッサが、こんな事で感じてしまう事に悔しくなる。
それなのにウェルディスの前では、訓練も虚しくあられもない姿を見せてしまう。
フレッサの尻に精液を注いだ後も、ウェルディスはしばらくフレッサの隣に横になった。
その間、フレッサを抱き締めながら頭を撫でている。
「いっそ、肉便器扱いしてくれた方が楽だ。アンタはどういうつもりで俺をここに置く?」
「前みたいに壁穴にしろって?
それは嫌だよ。君の綺麗な顔が見れないのは辛い」
「顔……?」
フレッサは自分の顔が綺麗系のイケメンの部類であると気付いていない。
「無理に皇帝権限を使って死刑囚の処罰を撤回させたお陰で、僕が男に狂ったとか言われている。
それが気にならないくらい君は魅力的だ。肉便器になどするわけがない」
「それはマズイんじゃないか?」
「まぁ、僕の問題だから自分でどうにかするさ。
僕にも分からないんだ。どうしてこんなに君を求めてしまうのか。
触れると癒されるのは本当。君の身体はまるで僕に与えられた祝福のようだな」
「……アンタの手みたいに?」
「僕の手?」
「なんでもない」
そう言ったがウェルディスには意味が通じたようだ。フレッサを撫でる手に少し力が入った。
それだけでフレッサの顔が緩んだ。
「あと、君に謝りたい事がある」
「なんだ?」
「僕、来月結婚するんだ。もちろん政略結婚だ。
相手には僕を絶対に愛さない人を条件に選んだ」
「アンタは皇帝だから当然。謝る必要はないだろ」
「いや、君への気持ちを裏切るようで僕が嫌なんだ」
「意味が分からない」
「はは。とにかく、君はこれからもここでやりたい事をしてくれたらいいから」
皇帝に即位してから一年しか経っていないが、独身のままではいられないだろう。
だがフレッサの胸の奥にチクリと痛むものを感じた。
(なんだ? まさか攻撃されて……ないよな?)
周囲に意識を向けるが殺気は感じられない。
あらゆる痛みに耐えてきたフレッサでも、その胸の小さな痛みは何故か忘れる事が出来なかった。
それから数日──。大分体力が戻ってきたフレッサは、最後にウェルディスとの行為をし、彼が本城に戻ってから脱出の準備を始めた。
上下を黒い服に身を包む。私物はないに等しいので身一つで窓から外へと飛び出した。
小さな離宮だ。与えられた二階の部屋から飛び降りるのは容易だ。
本城はもちろんだが離宮の外にも警備兵はいる。
フレッサは暗殺術に長けたスパイである。気配を消し、誰にも気付かれる事なく離宮から脱出したのだった。
数名の侍従がつき、身の回りの世話をしてもらえる。専用のコックも雇われて豪勢な食事が振る舞われた。
本来ならば感謝をしながら、今後ここでどう生きていくか模索しただろう。
だが、フレッサの頭にあるのは雇い主の事だった。
いずれ起きる戦争でヘイリア帝国を討ち滅ぼす為に、フレッサを送り込んだクレイル公国の大公。
フレッサの仕事が順調に進めば、クレイル公国はヘイリア帝国に奇襲を仕掛ける計画だった。
(計画は頓挫したのか? 失敗したのか?
それとも今は別の計画を立てているのか?)
一刻も早くここから抜け出し、仕事に戻らなければならない。離宮で甘やかされ、牙を削られている場合ではないのだ。
抜け出すには体力を戻さなければならない。一年に渡る拷問、七日もの間餓死寸前まで消耗している今、すぐ動くのは難しい。
傷を癒しながら過ごし、毎夜夜這いに来るウェルディスの相手をしながら、逃げ出す機会を窺っていた。
その日の夜もウェルディスはフレッサの元に現れた。
皇帝が来たのに出迎えないわけにもいかず、玄関まで顔を出す。
「また来たのか。毎日ご苦労な事だな」
相手が皇帝と分かってからもフレッサの態度は変わらない。
ウェルディスは敵でしかない。好かれているからと謙るのは雇い主を裏切るようで嫌だった。
そんな態度を見る度、離宮で働く者達がヒヤヒヤした目でフレッサを見つめている。
「ふふ。フレッサ、ここでの生活には慣れたか?」
「慣れない。特にアンタに慣れない」
「またまた。そんな憎まれ口も可愛いものだ。さぁ行こう」
ウェルディスはフレッサの肩を抱き、フレッサの寝室へと向かった。
部屋に入るとまるで自分の部屋であるかのように、ベッドに座り気を抜いたように身体を伸ばした。
「んー。今日も疲れたなぁ。フレッサ、僕を癒してくれる?」
「ああ」
フレッサはウェルディスを押し倒し、服を脱がせた。露わになる肌を見ると我慢が出来なくなる。
(どうして。敵なのに。何故か二人きりになると抗えられなくなる)
毎日肌を重ねる毎にウェルディスの感じるところが分かっていく。
胸の突起をしゃぶるように舐める。それで悦ぶのはウェルディスだけではない。
フレッサもまるで母親のミルクを求めるかのように、しゃぶる行為をやめられない。
舐めているとウェルディスが頭を撫でてくる。この優しい手つきから離れたくなくなるのだ。
「アンタ、自分を癒せって言ったな?」
「うん。僕は君とこうして抱き合うと一日の疲れが消えるからね」
「ふん。俺を都合のいい道具だと思ってるんだろ? 本音を言われたところでやる事は変わらないんだ。
俺の前で良い人ぶるなよ」
そこまで言ってハッと口を閉じた。そしてウェルディスから目を逸らして下着を脱がす。
行為に入ってしまえば無言でウェルディスの性欲を発散させるだけだ。それが終わるのを耐えればいいのだと自分に言い聞かせる。
決して自分から求めてなどいないと。
「素直になったらどうだ? 僕にもっと触って欲しいんだよな?」
「そんな事。俺は俺の役割を果たすだけ……」
そこまで言うと、ウェルディスが身体を起こしてフレッサを抱き締めた。
この手は魔法にでもかかっているのかと思える程、フレッサの思考力は消えた。
「こうして抱き締められるの、好きだろう?
君が僕の良いところを知っているように、僕も君が喜ぶ事を知ってる」
逆に押し倒された。抵抗は出来ない。顎を掴まれてキスをされると、フレッサの顔がほんのりと桃色に染まる。
「僕が君で癒されるように、君も僕で癒されて欲しいと思う」
フレッサは黙って頷いた。
「君の為ならなんでもしてあげる。してもらいたい事全部言ってみろ」
「……アンタの乳首、しゃぶりたい」
「うん」
「あと俺の尻を犯して。俺のチンコ触って欲しい」
「うん。他には?」
「俺の尻の奥に白いの出して。あったかくなるの、悪くない」
ウェルディスはフレッサの全てを叶えた。優しく抱かれて、フレッサの敵対心などすぐに消えてしまう。
ここに来てから毎日その繰り返しだ。
皇帝の肉便器になったのだと思えば悔しくも楽だった。しかしウェルディスがそれを許さない。
こんなに愛されて、道具扱いされているなど思える筈がない。
身体を貫かれるとフレッサは背を弓なりにさせて喘いだ。
「あぁっ……」
ウェルディスの肉棒は気持ちが良いのだ。拷問を受けても耐えられるフレッサが、こんな事で感じてしまう事に悔しくなる。
それなのにウェルディスの前では、訓練も虚しくあられもない姿を見せてしまう。
フレッサの尻に精液を注いだ後も、ウェルディスはしばらくフレッサの隣に横になった。
その間、フレッサを抱き締めながら頭を撫でている。
「いっそ、肉便器扱いしてくれた方が楽だ。アンタはどういうつもりで俺をここに置く?」
「前みたいに壁穴にしろって?
それは嫌だよ。君の綺麗な顔が見れないのは辛い」
「顔……?」
フレッサは自分の顔が綺麗系のイケメンの部類であると気付いていない。
「無理に皇帝権限を使って死刑囚の処罰を撤回させたお陰で、僕が男に狂ったとか言われている。
それが気にならないくらい君は魅力的だ。肉便器になどするわけがない」
「それはマズイんじゃないか?」
「まぁ、僕の問題だから自分でどうにかするさ。
僕にも分からないんだ。どうしてこんなに君を求めてしまうのか。
触れると癒されるのは本当。君の身体はまるで僕に与えられた祝福のようだな」
「……アンタの手みたいに?」
「僕の手?」
「なんでもない」
そう言ったがウェルディスには意味が通じたようだ。フレッサを撫でる手に少し力が入った。
それだけでフレッサの顔が緩んだ。
「あと、君に謝りたい事がある」
「なんだ?」
「僕、来月結婚するんだ。もちろん政略結婚だ。
相手には僕を絶対に愛さない人を条件に選んだ」
「アンタは皇帝だから当然。謝る必要はないだろ」
「いや、君への気持ちを裏切るようで僕が嫌なんだ」
「意味が分からない」
「はは。とにかく、君はこれからもここでやりたい事をしてくれたらいいから」
皇帝に即位してから一年しか経っていないが、独身のままではいられないだろう。
だがフレッサの胸の奥にチクリと痛むものを感じた。
(なんだ? まさか攻撃されて……ないよな?)
周囲に意識を向けるが殺気は感じられない。
あらゆる痛みに耐えてきたフレッサでも、その胸の小さな痛みは何故か忘れる事が出来なかった。
それから数日──。大分体力が戻ってきたフレッサは、最後にウェルディスとの行為をし、彼が本城に戻ってから脱出の準備を始めた。
上下を黒い服に身を包む。私物はないに等しいので身一つで窓から外へと飛び出した。
小さな離宮だ。与えられた二階の部屋から飛び降りるのは容易だ。
本城はもちろんだが離宮の外にも警備兵はいる。
フレッサは暗殺術に長けたスパイである。気配を消し、誰にも気付かれる事なく離宮から脱出したのだった。
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