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潜る洞窟 Ⅳ

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 闇の世界に、光が広がっていく。

「全体魔法。広がる光。最大限の威力。力の分解で」

 フォンシルが、光魔法を繰り出しながら声を発する。
 魔法陣へ声の力も組み込ませることで安定させる方法を取っているらしい。
 すべての一連の動作が美しく、さすがだと見惚れてしまう。

 反対にガーゼルは、無言のまま影のように素早く動き、闇魔法を自らの肉体にかけて物理攻撃をしていく。
 フォンシルのかけた全体魔法で、あまりHPが減っていない魔物を追撃するためだ。
 こちらも、動きがスムーズで無駄がない。

 2人は相性が悪そうで、中々のコンビネーションをとっている。
 グランは、何もすることもないな、と観察をしている。

「さすが、地下90階層」

 地上では滅多に出てこない強い魔物しかいない。

 このくらいの上級魔物になると、最初にガッツリHPを削っておく必要があるのだが、その役目を2人がやってくれている。
 あとは、片っ端からジャスキル石を取っていくだけだ。

 しかしながら、ぼんやりしているわけにもいかず、瀕死近い魔物を鑑定をしていく事にした。

 うん。
 あと、だいたい一撃だ、

 一人だったら時間がかかったであろう魔物がどんどん倒されていく。
 二人に心の中で感謝をしていると、ガーゼルが小さい声で呟くのが聞こえた。
「あっ!!!やっちゃった。……ま、いいか」

 良くない。
 きっと、コントロールを間違えて倒してしまったのだろう。

 鑑定済みの魔物だ。
 持っていた石は、この洞窟の中では貴重でもないし、アルフにより名付けられていたものだから、まだ許せるが。
 グランの並々ならぬ石への執着は、性格さえも変えるのである。

「ガーゼル!聞こえてますよ。それとも、自己申告ですか?」
 感謝の気持ちはあるが、気をつけて欲しいと少し怒り声で伝える。

「はーい。次、気をつけまーす」
 無言で戦っていたのが、飽きてきたのか、徐々に楽しそうに鼻歌を歌いながらリズム良く倒している。
 あまり怒られても気にしていないようだ。
 これで、よく従者をしていられるな。
 あきれていると、別方向から落ち着いた声が聞こえる。

「グラン。そろそろ、終わりだ」
 フォンシルが合図をくれる。

「ありがとうございます!……よっ、と」

 僕の出番だ。
 手のひらから無属性の魔力で作った剣を出す。

 石に敬意を払うように。
 雑な取り方にならないように、心を込めて一体ずつ石を探す。

「………すごい」

 見たことも、聞いたこともない。
 いくら地上で探しても見たことのない石が、倒すたびに魔物の中から出てくる。

 きっとこの洞窟だけに現れる固有種なのだろう。

 グランは全てのことを忘れて、微笑みながらジャスキルを繰り返し、石を回収していった。



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