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隠された事実 ①

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 グランとフォンシル、護衛のピーターとの三人での旅が始まる。

 予定だったが………、

「そろそろ、出てきて良いですよ?」

 フォンシルが、前を向きながら、にこやかに声を放つ。

 ピーターは、何かに気付いたようにキョロキョロとあたりを見回す。
 グランは、そのまま様子を見ようとピーターを引っ張り、物陰に隠れる。

「じゃあ、………こちらから、行きましょうか?」
 フォンシルが、そう言いながら魔力を手のひらに集中させると、一気に不穏な空気になる。

 その魔力に反発するように、背後から防御結界と、鋭い魔力の槍がこちらを狙う。
 ただ、それは攻撃というよりは相殺の為に起動させているらしく、殺意は感じられない。
 そもそもフォンシルは、敵意を持たれづらいジャスキル石の加護を持っているので、そこまで思いが強くない場合は攻撃されない。

 魔力は、体内のエネルギーで作られるため、自分の感情なども入り込み、どのような方法で戦闘をしかけてくるのか必然的に相手に伝わる。
 上級者ともなれば、感情さえもコントロール出来るようになるらしいが、きっと彼女は違う。
 本当に戦う意志はないようだ。
 だから、グランは黙ってお互いがどう出るかを待った。

「………っ!!!」
「いくよ」

 フォンシルは、背後にいる存在に対して、一気に光の粒を包むように魔力を飛ばす。

 その存在は、それを跳ね除け闇の槍で一網打尽にするが、全て避けきる事は出来ず軽くダメージを受ける。

「…きゃっ!!」
「さらに、光の剣」

 フォンシルのベージュの優しい色合いの髪が、フワッと浮き上がり、魔力で出来た剣をいくつも空中へ配置する。

 これには慌てたようで、その存在が声をついに出した。

「ま、まってよ?私なの分かってるでしょ?こっちに、戦闘の意思はないよっ!!」
「こそこそとするのは、好ましい行動じゃない」
「ごめん。フォンシル」
「分かれば、良いよ。アダマゼイン」

 フッと、険悪な雰囲気がなくなり、2人は地上で向かい合った。

「……フォンシル様、アダマゼインとお知り合いだったのですね」

 アダマゼインの気配は感じてはいたが、フォンシルが魔王の事を知っているかは不明だったので、グランは、あえて無視をしていた。

「いや。知り合いというよりかは王族と魔族という、運命共同体のようなものだ。魔王などいなくても良いが、居ないと魔物の管理ができない。だから、仕方なく昔から仲良くしている」

 おおっと。
 これは、変な事をいうと良くないな。

 確かに、人間が魔物を排除しようとしても、その反対でも、大きな犠牲者が出てしまうだろう。
 むしろ運命共同体というのは、フォンシルの魔王に対する最大の賛辞かもしれない。

 だがアダマゼインはそうは受け取らなかったようで、頬を膨らませている。

「それ、魔王ハラスメント!まおハラだよー。私だって、頑張ってるのに」
「……そうだな。居なくても良いというのは言い過ぎた。必要悪だ」
「それも、悪口!魔物からしたら、人間だって悪者だからね。……それより、フォンシル、女性になったんだぁ。あんまり外見は変わらないけど、雰囲気が柔らかくなった気がする」

 そう言いながら、女性に変化した体をペタペタと触っている。

 これこそ、ハラスメントじゃないだろうか。
 だが全くフォンシルは気にしないようで、抵抗せずにさわらせている。

「あぁ。今の所、取り立てて変化はないが、何かが違うだろうか?」
「うん。違う。でも、女の子も似合ってるよ」
「……必要だったからで、別にどっちだって私は私だ。何も変わらない」
 さわられても何も言わないのに、何故か褒められたら顔を少し赤くし、そっぽを向いた。

「……で?アダマゼインは、何で一緒に付いてきたんですか?」

 グランは、そこで話が途切れたのを見計らい、ここぞとばかりに詰め寄る。

「ふふふ。見つかっちゃったらしょうがない」
「もしかして、この旅についてくると言う事は、アルフについて知ってたりします?……僕の父かもしれないと、言うことも」
「知ってるも何も……、いや、どうかしら」

 人間不信、いや、魔王不信だ。

「最初から、あやしかったんです。王都にいるはずのアルフがどうして旅に出てダンジョンにいるのか?その近くに魔王城があって、そこの魔王がアルフの息子であろう僕の前に現れたのか。しかも、旅の直後に……そんな偶然、あります?」

 正直に答えてくれるか分からないが、聞かないと何も始まらない。

「魔王は嘘つき、よ?」
「あなたはユーディアを守ってくれました。だから、聞いてます」

「じゃ、何も解決にはならないけど、説明をするわ。……まず、これだけは、言っておく。私は味方」

 という事は、どこかに敵がいるのだろうか。

 それも、ダンジョンにいるような大きな魔力を持った何かが……。
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