花言葉を俺は知らない

李林檎

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不思議な力

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なにが起きたのか、この場にいる誰にも分からなかった。
ただ、瞬の手のひらが熱い…それだけだった。

手のひらにはさっき見よう見まねで書いた魔法陣が描かれていた。
手をギュッと握りしめて、ハイドは剣を振り上げて怪物に向かって行った。
怪物が振り上げる腕を避けながら頭から爪先まで剣を振り下ろした。

さっきまで傷一つ付けられなかったのに、怪物を斬りつける事が出来た。
怪物は地面が揺れるほど大きな声を上げて倒れた。
息を吐いたハイドは怪物に背を向けた。

その瞬間、怪物が起き上がるのが見えてハイドに言うより先に手のひらがより熱くなった。

俺の手には光り輝く弓が現れて、その弓を構えた。

「ハイドさん!避けて!」

「っ!?」

ハイドは瞬の言葉に反応するように、避けた。

弓には弓矢がなかったのに、俺が引くと弓矢が現れた。
それが何なのか分からないが、ハイドを助けたいという気持ちだけで行動していた。

瞬の手から離れた弓矢はまっすぐ怪物向かっていた。
そして怪物は光と共に消滅した。

弓も同時に消えて、崩れ落ちた身体はハイドに支えられた。

「ハイドさん、俺…今…」

「話は後だ、まずはここから脱出しよう」

ハイドに言われて、ゆっくりと頷くと抱きかかえられた。
井戸を登るものがないからどうするのかと思ったら、ハイドに「しっかり掴まっていてくれ」と言われた。

どうするのか分からなかったが、ハイドの首元に腕を回して密着する。
ハイドは放心状態だったイブを背中に背負っていた。

そしてそのまま壁に剣を突き立てて井戸を登ろうとしていた。
さすがに成人男性二人を抱えて登るのは無理だ。

でも、その無理をハイドはやってしまった。

井戸から出ると、街の人達が井戸の周りに集まっていた。
皆驚いた顔をしていたが、井戸の事を知っている様子だった。
驚いているという事は、瞬達の様子を見ていて井戸に入った事を知っている。
そして、生きて出てくると思っていなかったという事だ。

イブと瞬を地面に下ろして、ハイドは街の人達を睨みつけていた。

「どういう事か、説明してくれますか」

「…そ、その…私達は何も」

「なら、井戸の中を一緒に調べに行きますか?」

ハイドの静かだが怒っている声に、街の人達の顔が引きつっている。
もう隠せないと思ったのか、一人の男が前に出てきた。

頭を下げて、俺達を家まで案内してくれようとした。
でも、イブはハイドの腕を掴んで首を横に振った。

もしかして、イブも同じ事をされたのかもしれない。
ハイドはイブに「大丈夫だ」と言っていて、ハイドのその一言でイブは頷いた。

その男はラウラの街の代表を務めている人だと家に行く前に話してくれた。
やっぱりこの街は街ぐるみでなにかをしていたのだろう。

家に到着して、大きめのソファーに三人並んで座る。
向かいに代表の男が座って紅茶を淹れている。

目の前に出されたが、誰一人として口にしなかった。
なにがあるか分からないから、最大限の警戒をしていた。
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