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パティスリーにて

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 猫耳の双子は私が左手しか使えないことに配慮して、キャベツやニンジン、パプリカにゆで卵を食べやすい一口サイズにカットした温野菜サラダや、鴨ロース肉とニンジン、ジャガイモ、旬のキノコをじっくり煮込んだシチューなどを温かなパンと共に用意してくれた。

「美味しそうね」

「どうぞ、温かい内に召し上がって下さい!」

「シチューは熱いですので、お気を付けください」

 これなら右手が使えなくてもスプーン一本だけで不自由なく食べられる。双子の心づかいにほっこりしながら推し強い鴨ロースのシチューを味わっているとルルがはたと私に視線を向けた。

「セリナ様……」

「ん?」

「右手にボウルがくっついてると服がぬげませんよね?」

「着替えはどうされますか?」

「あ」

 そういえば、右手に銅製ボウルがくっついてる状態だと服がぬげない。別に一日、二日、服をぬがなくても死ぬわけではないけれど、今朝から一日中この服を着て調理場でケーキを作ったり何かと動き回って汗をかいたりしているし、小麦粉なども服についている。放置していれば目に見えない雑菌の温床になるだろう。

 それに今は気にならないけど、服に染み込んだ汗という物は時間がたてばたつほど悪臭をはなつ。本人はそれほど気にならなくても周囲の人にとっては迷惑な話だろう。

 誰とも会わないなら他者に迷惑をかけないから良いだろうけど私は双子と一緒に住んでいるから、ルルとララに不快な思いをして欲しくない。もちろん、双子は事情をくんで嫌な顔なんてしないだろうけど、明日はベルントさんやヴォルフさんが行方が分からなくなっているアルジェント公爵家当主の件を情報収集して、改めてここに来ると話していた。

 熊獣人や狼獣人なら普通の人間より鼻が良いだろうし、この服を着たまま一晩過ごして翌日も同じ服で他者と会うというのはありえないと思った。

「セリナ様?」

「今着てる服は……。仕方ないからハサミで切ってぬぎましょう」

 一日中、調理場で働いている時に着用していた服を着たままベッドに入るのも嫌だし、さらにそのままの格好で翌日、人に会うのはもっとイヤとなれば選択肢は一つしかない。

 服にハサミを入れて無駄にしてしまうなんて、もったいないことこの上ないけれど背に腹は変えられない。生気の無い声で答えれば双子は頷いた。

「じゃあ、私たちがお手伝いしますね?」

「うん。お願いするわ……。それでこの右手だと着れる物がないから明日、朝からあの店に行ってもらえる?」

「あの店?」
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