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セリナが見た終幕
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「母上が王妃にと推していたフルオライト伯爵令嬢ですが……。こうなったからには明日、これまで魔力増強剤でドーピングをしていたと確定した場合、婚約破棄とします」
「ええ……。肝心の魔力があの状態なら仕方ないわね……」
苦虫を噛みつぶしたような顔をしている王太后は渋々、同意した。そんなリオネーラ王太后の姿を横目で見ながらレオン陛下は小さく溜息を吐いた。
「これまで母上の意見を出来る限り尊重してまいりましたが、危うく取り返しのつかない事態になる所でした」
「レオン……! 私は母として、あなたの為を思ったからこそ!」
「そういう母上のお気持ちが分かっているからこそ、これまで強く言えませんでしたが今後は国王の決定に口出し無用に願います」
「くっ! 話は終わりですね? 私は後宮に戻ります!」
金髪金眼の王太后は紫色のドレスのすそをひるがえして、悔しそうに謁見の間から出て行く。そんな王太后を追うように白髪の女官らしき女性も早足で追随していった。
国王と王太后のやり取りをかたずをのんで見ていた重臣たちは、見るからに機嫌が最悪だったリオネーラ王太后が謁見の間から出て行ったことで若干、肩の力を抜いた。
「今日は以上だ。フルオライト伯爵令嬢の件は先ほど言ったように明日、ドーピングの件が確定次第、公表する」
「はっ!」
国王陛下の言葉を受けて重臣たちは頭を垂れた。そして、金髪の国王が玉座から立ち上がり青いマントをたなびかせながら謁見の間から立ち去ると、重臣たちは周囲の者たちと今後のことについて声を潜めて話しながら退出していく。その様子を呆然と見ていたローザは、プラチナブロンドの長い髪を揺らして大きく息をはいた。
「それにしても……。明日になったら、どうなるのかしら?」
「少なくとも魔力増強剤を使ったドーピングの件は黒でしょうから、国王陛下と王家を騙していた罪は確定するはず……。そうなれば宰相ハインの解任は間違いないし、レオン陛下とフローラの婚約破棄も確定するでしょう。それとフルオライト伯爵家もただじゃ済まないでしょうね」
「セリナ……。フローラが魔力増強剤を使ってドーピングしてるって、よく分かったわね?」
「うん。まぁ、それに関しては偶然の要素が大きかったんだけどね……」
私が住んでいるパティスリーの裏にあるコルニクスさんの魔道具屋。その建物の前にフルオライト伯爵家の馬車が停まっているのを発見し、慌てて店を出て近くで確認していたら、ちょうど赤髪の伯爵令嬢フローラが魔道具屋から出て行く姿を確認できた。
「ええ……。肝心の魔力があの状態なら仕方ないわね……」
苦虫を噛みつぶしたような顔をしている王太后は渋々、同意した。そんなリオネーラ王太后の姿を横目で見ながらレオン陛下は小さく溜息を吐いた。
「これまで母上の意見を出来る限り尊重してまいりましたが、危うく取り返しのつかない事態になる所でした」
「レオン……! 私は母として、あなたの為を思ったからこそ!」
「そういう母上のお気持ちが分かっているからこそ、これまで強く言えませんでしたが今後は国王の決定に口出し無用に願います」
「くっ! 話は終わりですね? 私は後宮に戻ります!」
金髪金眼の王太后は紫色のドレスのすそをひるがえして、悔しそうに謁見の間から出て行く。そんな王太后を追うように白髪の女官らしき女性も早足で追随していった。
国王と王太后のやり取りをかたずをのんで見ていた重臣たちは、見るからに機嫌が最悪だったリオネーラ王太后が謁見の間から出て行ったことで若干、肩の力を抜いた。
「今日は以上だ。フルオライト伯爵令嬢の件は先ほど言ったように明日、ドーピングの件が確定次第、公表する」
「はっ!」
国王陛下の言葉を受けて重臣たちは頭を垂れた。そして、金髪の国王が玉座から立ち上がり青いマントをたなびかせながら謁見の間から立ち去ると、重臣たちは周囲の者たちと今後のことについて声を潜めて話しながら退出していく。その様子を呆然と見ていたローザは、プラチナブロンドの長い髪を揺らして大きく息をはいた。
「それにしても……。明日になったら、どうなるのかしら?」
「少なくとも魔力増強剤を使ったドーピングの件は黒でしょうから、国王陛下と王家を騙していた罪は確定するはず……。そうなれば宰相ハインの解任は間違いないし、レオン陛下とフローラの婚約破棄も確定するでしょう。それとフルオライト伯爵家もただじゃ済まないでしょうね」
「セリナ……。フローラが魔力増強剤を使ってドーピングしてるって、よく分かったわね?」
「うん。まぁ、それに関しては偶然の要素が大きかったんだけどね……」
私が住んでいるパティスリーの裏にあるコルニクスさんの魔道具屋。その建物の前にフルオライト伯爵家の馬車が停まっているのを発見し、慌てて店を出て近くで確認していたら、ちょうど赤髪の伯爵令嬢フローラが魔道具屋から出て行く姿を確認できた。
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