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セリナが見た終幕

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 赤髪の伯爵令嬢フローラは両手に魔力を集中して、自身の眼前に顔より一回り小さい大きさの火球を出現させた。周囲の重臣や金髪の国王、王太后らが、ここからどのように高い魔力を見せつけてくれるのかと期待しながら見守っていたが伯爵令嬢フローラが出現させた火球は不意にかき消えた。

 心なしか息が荒くなっているフローラの姿に様子を見守っていた重臣たちも怪訝そうな表情を浮かべている。

「どうしたのだ。フルオライト伯爵令嬢?」

「いえ……。私が最も得意とするのは火魔法ですが、この場で火魔法を披露するのは周囲の方々に危険が及ぶと思いまして」

「ふむ、そうか。ではここにある金獅子像を使うと良い」

「え?」

 金髪の国王は玉座の横に置いてある金獅子像をなでながら提案したが、赤髪の伯爵令嬢は真意が分からない様子で目を見開いた。

「この金獅子像には魔法をかき消す効果がある。そなたが全力で火魔法をぶつけても問題ない。衛兵、この金獅子像をフルオライト伯爵令嬢の前に運べ」

「はっ!」

 国王の指示を受けて屈強な衛兵たちが、玉座の横に設置してあった金獅子像を伯爵令嬢の前に置いた。それを見たフローラはまるで本物の獅子に睨みつけられたかのように一歩、後ずさったがギリッと唇を噛んだ後、再び両手に魔力を集中して今度は複数の火球を出現させて金獅子像にぶつけた。

「おおっ!」

「ハァハァ……」

 レオン陛下が言っていた通り、金獅子像には魔法をかき消す効果があったようで傷ひとつ付いていない。それよりも火魔法を放った赤髪の伯爵令嬢が、脂汗をかきながら苦しそうに顔を歪めている事実に重臣たちは不信そうな視線を向けていた。

「おい。フルオライト伯爵令嬢の息がやけに乱れていないか?」

「ああ。まるで、もう魔力を使い切ったかのような……」

「いや、高い魔力を持っていると評判だったのにあれだけで魔力が尽きたというのはありえないだろう?」

「しかし、フルオライト伯爵令嬢の様子を見てみろ。完全に息が上がっている」

「フルオライト伯爵令嬢がレオン様の婚約者に選ばれたのは、金獅子国の貴族令嬢の中でも屈指の高魔力を持っているからだと聞いていたが、この程度は普通の貴族なら誰でも出来るだろう。これで息が上がるようでは……」

 圧倒的な魔力を持つ伯爵令嬢フローラは国王陛下の婚約者に相応しいと聞いていたのに、そうではなかったという印象を受けた重臣らは眉をしかめ、口々に疑問の声を上げている。

「ずいぶんと疲れた様子だが、以前のように強大な魔力を見せてはくれないのか?」

「レオン陛下……! 今日はその……。体調が悪いのです! 明日になれば必ず調子を戻しますわ!」
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