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第一の庭にて

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「後宮でローザが後頭部を殴打されて部屋に火をつけた件はどうなったんですか!? 王宮の人たちが捜査したんですよね? 新しい証拠は? 犯人の目星はついてないんですか!?」

「あなたの言いたいことは分かるけど、ローザが襲われた件は現場の部屋が、ほぼ焼けてる上にもう一か所の火災現場に人の目が集まっていた関係で、犯人に繋がるような決定的な物証も目撃証言も無いの……。きっと迷宮入りだわ」

「そんな……。伯爵令嬢フローラは、犯人しか持つ事ができないサファイアの首飾りを所持していたというのに……」

「伯爵令嬢フローラが廊下で首飾りを拾ったと主張して、その主張をリオネーラ王太后様やレオン陛下が怪しいとは思いながらも認めてしまった今となっては、あの件で伯爵令嬢フローラがやはり犯人だったと断定するのは難しいでしょうね」

 フローラが王妃になる正当性を失わせるなら、後宮でローザを殺害しようとした上、部屋に火をつけた犯人であると糾弾するのが手っ取り早いと思ったが、やはり決定的な証拠が無いのが痛い。

 状況的にも動機の点からも伯爵令嬢フローラが限りなく黒にい近いというのに、決め手に欠けるのがもどかしい。私はくちびるを噛みながら王宮を出て城下に戻った。

 噴水広場までやって来ると複数組の女性客がオープンカフェで談笑しながらケーキセットに舌鼓を打っているのが見えた。その様子を横目に見ながら私はパティスリーに戻る。

「ただいま……」

「お帰りなさい。セリナ様!」

「お疲れさまです!」

 猫耳メイドの双子が弾けるような笑顔で迎えてくれて、私は自然とほおが緩むのを感じた。

「うん。ルルとララも店番、ありがとう……。私が居ない間、大丈夫だった?」

「はい! 問題無いです!」

「栗のケーキがそろそろ売り切れになる以外は大丈夫です!」

 ショーケースの中を見れば甘露煮ベースの黄色い栗ケーキと、渋皮煮がトッピングされた茶色い栗ケーキの両方とも残数がわずかになっていた。

「うん。じゃあ、栗ケーキは当初の予定通り無くなったら、そのまま売り切りで追加はしないから」

「了解です!」

 双子の返事を聞きながらショーケースの中を確認すれば、色とりどりのフルーツケーキやブルーベリータルト、黄金色のアップルパイやチーズケーキも数が減っているが、時間的に追加で作るほどでは無いと判断した。

「あと、今日は栗ケーキ以外も追加のケーキは作らないから」

「分かりました!」

「じゃあ、セリナ様は休憩していて下さい」

「え……。カフェを利用するお客様が来たら、お茶の用意をしようと思ってたんだけど?」

「セリナ様は王宮から戻られたばかりでお疲れですよね? 今日は混雑してませんから、ここは私たち二人で大丈夫です!」
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