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噴水広場にて

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「はわわ……」

「ベルントさんも! ルルを助けて下さって、ありがとうございます」

「ああ」

 無口かつ、筋肉質な大男であるベルントさんに首根っこをつかまれて宙づりになっていたルルは、黒熊獣人さんから異様な圧迫感を感じて涙目になっていたがベルントさんは、こう見えてとっても良い人なのだ。可愛らしい猫耳の少女が転んでケガをしそうな場面を目にして、助けずにはいられなかったのだろう。

「このイスとテーブルを運ぶのか?」

「はい、そうなんですけど……」

「俺たちも手伝おう」

「えっ」

 ヴォルフさんの申し出に一瞬、戸惑った。しかし、確かに細腕の私たちが運べば先ほどのようなトラブルもある。ヴォルフさんたちが手伝ってくれるという申し出はありがたい。

「どこに運んだら良いんだ?」

「じゃあ、あっちと……」

 私や双子が両手でやっと運んでいたテーブルを片手で軽々と運ぶベルントさんや、イスをいっぺんに四脚も運んでしまうヴォルフさんによって、あっという間に店舗前と噴水広場へのテーブルとイスの設置は完了してしまった。

「ありがとうございます……。ヴォルフさんとベルントさんのおかげで、すごく助かりました」

「いや、これ位はお安い御用だが……。そういえば設置した後だが良かったのか?」

「え?」

「こういう公共の場所にテーブルやイスを置くというのは、役所の許可が必要なのではないのか?」

「ああ、そのことだったら……」

 心配そうに顔を曇らせるヴォルフさんに笑顔で答えようとした時、険しい目つきでこちらを見ながら早足でやってくるチョビ髭の男が見えた。

「コラ、コラ、コラ!」

「へ?」

「貴様はアレだな! 先日、役所に噴水広場にテーブルとイスを設置して飲食物を提供する許可が欲しいと言ってきた小娘ではないか!?」

「はっ! あの時の役人さん」

 ヴォルフさんと私が話している所に怒鳴り込んできたのは先日、噴水広場にテーブルとイスを置いて飲食物を提供する許可が欲しいと役所に行った時、私を窓口で対応……。というか、面倒くさそうに門前払いしたチョビ髭の役人だった。

「国や役所から許可が下りなかったからと言って、無断でテーブルとイスを置いて勝手に営業を始めるとは言語道断っ! 公共の場を私的に利用しようとするなど、けしからんヤツだ! 罰金を支払ってもらうか、それとも……」

「これをご覧ください」

 憤るチョビ髭役人の眼前に、書簡に入れて丸めてあった書状を取り出し広げて見せた。
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