367 / 450
噴水広場にて
367
しおりを挟む
「はわわ……」
「ベルントさんも! ルルを助けて下さって、ありがとうございます」
「ああ」
無口かつ、筋肉質な大男であるベルントさんに首根っこをつかまれて宙づりになっていたルルは、黒熊獣人さんから異様な圧迫感を感じて涙目になっていたがベルントさんは、こう見えてとっても良い人なのだ。可愛らしい猫耳の少女が転んでケガをしそうな場面を目にして、助けずにはいられなかったのだろう。
「このイスとテーブルを運ぶのか?」
「はい、そうなんですけど……」
「俺たちも手伝おう」
「えっ」
ヴォルフさんの申し出に一瞬、戸惑った。しかし、確かに細腕の私たちが運べば先ほどのようなトラブルもある。ヴォルフさんたちが手伝ってくれるという申し出はありがたい。
「どこに運んだら良いんだ?」
「じゃあ、あっちと……」
私や双子が両手でやっと運んでいたテーブルを片手で軽々と運ぶベルントさんや、イスをいっぺんに四脚も運んでしまうヴォルフさんによって、あっという間に店舗前と噴水広場へのテーブルとイスの設置は完了してしまった。
「ありがとうございます……。ヴォルフさんとベルントさんのおかげで、すごく助かりました」
「いや、これ位はお安い御用だが……。そういえば設置した後だが良かったのか?」
「え?」
「こういう公共の場所にテーブルやイスを置くというのは、役所の許可が必要なのではないのか?」
「ああ、そのことだったら……」
心配そうに顔を曇らせるヴォルフさんに笑顔で答えようとした時、険しい目つきでこちらを見ながら早足でやってくるチョビ髭の男が見えた。
「コラ、コラ、コラ!」
「へ?」
「貴様はアレだな! 先日、役所に噴水広場にテーブルとイスを設置して飲食物を提供する許可が欲しいと言ってきた小娘ではないか!?」
「はっ! あの時の役人さん」
ヴォルフさんと私が話している所に怒鳴り込んできたのは先日、噴水広場にテーブルとイスを置いて飲食物を提供する許可が欲しいと役所に行った時、私を窓口で対応……。というか、面倒くさそうに門前払いしたチョビ髭の役人だった。
「国や役所から許可が下りなかったからと言って、無断でテーブルとイスを置いて勝手に営業を始めるとは言語道断っ! 公共の場を私的に利用しようとするなど、けしからんヤツだ! 罰金を支払ってもらうか、それとも……」
「これをご覧ください」
憤るチョビ髭役人の眼前に、書簡に入れて丸めてあった書状を取り出し広げて見せた。
「ベルントさんも! ルルを助けて下さって、ありがとうございます」
「ああ」
無口かつ、筋肉質な大男であるベルントさんに首根っこをつかまれて宙づりになっていたルルは、黒熊獣人さんから異様な圧迫感を感じて涙目になっていたがベルントさんは、こう見えてとっても良い人なのだ。可愛らしい猫耳の少女が転んでケガをしそうな場面を目にして、助けずにはいられなかったのだろう。
「このイスとテーブルを運ぶのか?」
「はい、そうなんですけど……」
「俺たちも手伝おう」
「えっ」
ヴォルフさんの申し出に一瞬、戸惑った。しかし、確かに細腕の私たちが運べば先ほどのようなトラブルもある。ヴォルフさんたちが手伝ってくれるという申し出はありがたい。
「どこに運んだら良いんだ?」
「じゃあ、あっちと……」
私や双子が両手でやっと運んでいたテーブルを片手で軽々と運ぶベルントさんや、イスをいっぺんに四脚も運んでしまうヴォルフさんによって、あっという間に店舗前と噴水広場へのテーブルとイスの設置は完了してしまった。
「ありがとうございます……。ヴォルフさんとベルントさんのおかげで、すごく助かりました」
「いや、これ位はお安い御用だが……。そういえば設置した後だが良かったのか?」
「え?」
「こういう公共の場所にテーブルやイスを置くというのは、役所の許可が必要なのではないのか?」
「ああ、そのことだったら……」
心配そうに顔を曇らせるヴォルフさんに笑顔で答えようとした時、険しい目つきでこちらを見ながら早足でやってくるチョビ髭の男が見えた。
「コラ、コラ、コラ!」
「へ?」
「貴様はアレだな! 先日、役所に噴水広場にテーブルとイスを設置して飲食物を提供する許可が欲しいと言ってきた小娘ではないか!?」
「はっ! あの時の役人さん」
ヴォルフさんと私が話している所に怒鳴り込んできたのは先日、噴水広場にテーブルとイスを置いて飲食物を提供する許可が欲しいと役所に行った時、私を窓口で対応……。というか、面倒くさそうに門前払いしたチョビ髭の役人だった。
「国や役所から許可が下りなかったからと言って、無断でテーブルとイスを置いて勝手に営業を始めるとは言語道断っ! 公共の場を私的に利用しようとするなど、けしからんヤツだ! 罰金を支払ってもらうか、それとも……」
「これをご覧ください」
憤るチョビ髭役人の眼前に、書簡に入れて丸めてあった書状を取り出し広げて見せた。
1
お気に入りに追加
4,828
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。
和泉鷹央
ファンタジー
幼い頃に住んでいたボルダスの街に戻って来たアルフリーダ。
王都の魔法学院を卒業した彼女は、二級魔導師の資格を持つ氷の魔女だった。
二級以上の魔導師は貴族の最下位である準士の資格を与えられ辺境では名士の扱いを受ける。
ボルダスを管理するラーケム伯と教会の牧師様の来訪を受けた時、アルフリーダは親友のエリダと再会した。
彼女の薦めで、隣の城塞都市カルムの領主であるセナス公爵の息子、騎士ラルクを推薦されたアルフリーダ。
半年後、二人は婚約をすることになるが恋人と親友はお酒の勢いで関係を持ったという。
自宅のベッドで過ごす二人を発見したアルフリーダは優しい微笑みと共に、二人を転送魔法で郊外の川に叩き込んだ。
数日後、謝罪もなく婚約破棄をしたいと申し出る二人に、アルフリーダはとある贈り物をすることにした。
他の投稿サイトにも掲載しています。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
(完結)異世界再生!ポイントゲットで楽々でした
あかる
ファンタジー
事故で死んでしまったら、神様に滅びかけた世界の再生を頼まれました。精霊と、神様っぽくない神様と、頑張ります。
何年も前に書いた物の書き直し…というか、設定だけ使って書いているので、以前の物とは別物です。これでファンタジー大賞に応募しようかなと。
ほんのり恋愛風味(かなり後に)です。
チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない
カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。
一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。
そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。
ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!!
その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。
自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。
彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう?
ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。
(R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします)
どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり)
チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。
今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。
ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。
力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)>
5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります!
5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる