331 / 450
第四王子ダーク
331
しおりを挟む
(※このページには年齢制限、R-15となる描写が含まれます。嫌な予感を感じた方はブラウザバックして読み飛ばして下さい)
「では、我々もレオン兄上の寝室に……」
レオン兄上の命があと僅かだと言うのならば、せめて最後に別れの言葉を……。そう思いながら国王の寝室に向かうべきだと言ったのだが、窓から差し込む陽光を背中に受けているライガ兄上は顔に影を落としながら首を横に振った。
「その前にやるべきことがある」
「やるべきこと?」
「まず二人には、これをよく見て欲しい」
第二王子ライガは重厚な執務机の上に光沢のある革製の小箱を置いて蓋を開けた。中にあった青と白の袱紗をめくればそこには黄金製の金印が鎮座していた。
「これはもしや……」
「ああ、国璽だ。すでにレオン兄上から預かっている。この国璽をよく見て欲しい」
そう告げながらライガ兄上は俺とブランシュ兄上の背後に回った。国璽と言えば、国の最重要文章に国王が押して最終的な許可を出す物。それをレオン兄上がすでに託していると言う事は、国王としての自らの責務を託したのと同等の意味合いがあるだろう。
しかし『国璽をよく見て欲しい』とはどういう事かと、怪訝に思いながら革製小箱に入った黄金に輝く国璽をのぞき込んでいると、不意に真横からくぐもった声と鈍い音が聞こえた。
音のした方に視線を向ければ、そこにはライガ兄上がブランシュ兄上の背後から左手で口を押さえ、右手で首に短剣の切っ先を突き立てていた。
「な!?」
突然の出来事に唖然としているとライガ兄上は深々と突き刺した短剣を真っすぐ水平にひいた。すると剣先の傷が頸動脈にまで達していたのだろう。おびただしい鮮血がブランシュ兄上の首から噴き出て、国王の執務机にボタボタと鮮血が滴り落ちる。そして、俺の顔にもブランシュ兄上の傷口から噴き出た血しぶきが数滴、附着し頬を伝ったのが感じられた。
血走った眼をこれ以上ない程、見開いたブランシュ兄上は白い宮廷服を咽喉元からの鮮血で赤く染めながら信じられないといった表情を浮かべ、ライガ兄上を見つめて口をはくはくと動かしたが、すでに深く咽喉を切られているためだろう。まともな言葉を発することは出来ずその場に崩れ落ちた。
大理石の床の上に倒れたブランシュ兄上の首元から、じわじわと血だまりが広がっていく。濃い血の匂いが室内に充満するのが感じられて俺は思わず一歩、後ずさった。
「何ということを!」
「フン。相手に隙を見せるからこうなるのだ。お前たちをここに呼んだのは、正式に新王となる前に懸念材料を取り除いておきたかったからだ」
「懸念材料……?」
「では、我々もレオン兄上の寝室に……」
レオン兄上の命があと僅かだと言うのならば、せめて最後に別れの言葉を……。そう思いながら国王の寝室に向かうべきだと言ったのだが、窓から差し込む陽光を背中に受けているライガ兄上は顔に影を落としながら首を横に振った。
「その前にやるべきことがある」
「やるべきこと?」
「まず二人には、これをよく見て欲しい」
第二王子ライガは重厚な執務机の上に光沢のある革製の小箱を置いて蓋を開けた。中にあった青と白の袱紗をめくればそこには黄金製の金印が鎮座していた。
「これはもしや……」
「ああ、国璽だ。すでにレオン兄上から預かっている。この国璽をよく見て欲しい」
そう告げながらライガ兄上は俺とブランシュ兄上の背後に回った。国璽と言えば、国の最重要文章に国王が押して最終的な許可を出す物。それをレオン兄上がすでに託していると言う事は、国王としての自らの責務を託したのと同等の意味合いがあるだろう。
しかし『国璽をよく見て欲しい』とはどういう事かと、怪訝に思いながら革製小箱に入った黄金に輝く国璽をのぞき込んでいると、不意に真横からくぐもった声と鈍い音が聞こえた。
音のした方に視線を向ければ、そこにはライガ兄上がブランシュ兄上の背後から左手で口を押さえ、右手で首に短剣の切っ先を突き立てていた。
「な!?」
突然の出来事に唖然としているとライガ兄上は深々と突き刺した短剣を真っすぐ水平にひいた。すると剣先の傷が頸動脈にまで達していたのだろう。おびただしい鮮血がブランシュ兄上の首から噴き出て、国王の執務机にボタボタと鮮血が滴り落ちる。そして、俺の顔にもブランシュ兄上の傷口から噴き出た血しぶきが数滴、附着し頬を伝ったのが感じられた。
血走った眼をこれ以上ない程、見開いたブランシュ兄上は白い宮廷服を咽喉元からの鮮血で赤く染めながら信じられないといった表情を浮かべ、ライガ兄上を見つめて口をはくはくと動かしたが、すでに深く咽喉を切られているためだろう。まともな言葉を発することは出来ずその場に崩れ落ちた。
大理石の床の上に倒れたブランシュ兄上の首元から、じわじわと血だまりが広がっていく。濃い血の匂いが室内に充満するのが感じられて俺は思わず一歩、後ずさった。
「何ということを!」
「フン。相手に隙を見せるからこうなるのだ。お前たちをここに呼んだのは、正式に新王となる前に懸念材料を取り除いておきたかったからだ」
「懸念材料……?」
1
お気に入りに追加
4,830
あなたにおすすめの小説
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる