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異変
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「ローザ。降嫁の件、そなたの意見を聞かなかったことは確かに悪かった。だが、ここまで聞いて寵妃のままでも構わないと思えるか?」
「陛下が私のことを思って降嫁の話を進めようとして下さったのは分かりました。実は先ほど廊下でライガ殿下とお話いたしました」
「ライガと?」
金色の瞳を見開いた陛下に、私は頷く。
「はい。ライガ殿下はレオン陛下が在位中は降嫁の話を進めないと約束して下さいました……。陛下が、どうしてもとおっしゃるなら私は降嫁いたします……。でもレオン様が存命の間は、どうかお側でお仕えさせて下さいませ」
「分かった……。そなたがそこまで言ってくれるなら」
「ありがとうございます。陛下!」
安堵して礼の言葉を述べれば、金髪の国王陛下は柔らかく顔をほころばせた。
「いや、礼には及ばぬ。むしろ余の方が……」
「そうだ! 実はさっき、ケーキを持ってきてもらったんです。アップルパイは材料のリンゴが栄養が豊富で身体にとっても良いそうなのです。陛下もよかったら召し上がりませんか?」
「そうだな……。頂こうか」
「早速、持ってきます! 少々、お待ちくださいませ」
私は居室へ向かい、白磁器の皿にこんがりとキツネ色に焼けているアップルパイを鎮座させた。そしてクリスタルグラスに先ほど作ったばかりのハチミツとレモン果汁入り経口補水液を入れて、カトラリーと共に銀製のトレイにそれらを乗せて国王陛下の寝室に運んだ。そして、寝台の上で上半身を起こしたレオン陛下にお見せした。
すでに両手も麻痺症状の所為で自由に動かせないレオン陛下に代わって、寝台の横で白磁器の皿に乗ったアップルパイを銀製のフォークで一口サイズにカットする。まずは私が毒見をしてから国王陛下に召し上がって頂く。
黄金色をしたリンゴの果肉とサクサクしたパイ生地を陛下の口元に運んで食べて頂くと、陛下の目元がほんの少しやわらいだように見えた。
「レオン陛下。飲み物はハチミツとレモン果汁が入った物をご用意いたしました。これも身体に良いそうなのです。是非、お飲みください」
「うむ。頂こう」
陛下の了承を得て、琥珀色の液体が入ったクリスタルグラスを陛下の口元で傾けて少し飲んで頂いたが、途端にレオン陛下は顔をしかめた。
「お口に合いませんでしたか?」
「ああ……。これはよりも、普段飲んでいる茶を用意してくれ」
「分かりました……」
無理に経口補水液を飲ませる訳にもいかず、私はジョアンナに頼んで陛下がいつも飲んでいるお茶を用意してもらった。そういえば私が以前、体調を崩した時に私が飲んでいた経口補水液に興味を持ったレオン陛下が一口、経口補水液を飲んだけど、あの時も口に合わない様子だった。
せっかく、セリナから作り方や分量を聞いて経口補水液を用意したのにレオン陛下の口に合わず、飲んで頂けないのではどうしようもない。ひとまず、アップルパイの方は食べて頂けたのが救いだろうか。
アップルパイを食べ終わったレオン陛下は心なしか、顔色が良くなり金色の瞳に生彩が戻ったように思えたので私は少しホッとした。そして、後ほどチーズケーキも食べて頂けた。
私は翌日もハチミツとレモン果汁入りの経口補水液を用意して水分補給は極力、経口補水液をすすめた。レオン陛下は琥珀色の経口補水液を見るとあまり良い顔をしなかったけれど「私が作りました」と笑顔で伝えると飲んでくれるようになった。
「陛下が私のことを思って降嫁の話を進めようとして下さったのは分かりました。実は先ほど廊下でライガ殿下とお話いたしました」
「ライガと?」
金色の瞳を見開いた陛下に、私は頷く。
「はい。ライガ殿下はレオン陛下が在位中は降嫁の話を進めないと約束して下さいました……。陛下が、どうしてもとおっしゃるなら私は降嫁いたします……。でもレオン様が存命の間は、どうかお側でお仕えさせて下さいませ」
「分かった……。そなたがそこまで言ってくれるなら」
「ありがとうございます。陛下!」
安堵して礼の言葉を述べれば、金髪の国王陛下は柔らかく顔をほころばせた。
「いや、礼には及ばぬ。むしろ余の方が……」
「そうだ! 実はさっき、ケーキを持ってきてもらったんです。アップルパイは材料のリンゴが栄養が豊富で身体にとっても良いそうなのです。陛下もよかったら召し上がりませんか?」
「そうだな……。頂こうか」
「早速、持ってきます! 少々、お待ちくださいませ」
私は居室へ向かい、白磁器の皿にこんがりとキツネ色に焼けているアップルパイを鎮座させた。そしてクリスタルグラスに先ほど作ったばかりのハチミツとレモン果汁入り経口補水液を入れて、カトラリーと共に銀製のトレイにそれらを乗せて国王陛下の寝室に運んだ。そして、寝台の上で上半身を起こしたレオン陛下にお見せした。
すでに両手も麻痺症状の所為で自由に動かせないレオン陛下に代わって、寝台の横で白磁器の皿に乗ったアップルパイを銀製のフォークで一口サイズにカットする。まずは私が毒見をしてから国王陛下に召し上がって頂く。
黄金色をしたリンゴの果肉とサクサクしたパイ生地を陛下の口元に運んで食べて頂くと、陛下の目元がほんの少しやわらいだように見えた。
「レオン陛下。飲み物はハチミツとレモン果汁が入った物をご用意いたしました。これも身体に良いそうなのです。是非、お飲みください」
「うむ。頂こう」
陛下の了承を得て、琥珀色の液体が入ったクリスタルグラスを陛下の口元で傾けて少し飲んで頂いたが、途端にレオン陛下は顔をしかめた。
「お口に合いませんでしたか?」
「ああ……。これはよりも、普段飲んでいる茶を用意してくれ」
「分かりました……」
無理に経口補水液を飲ませる訳にもいかず、私はジョアンナに頼んで陛下がいつも飲んでいるお茶を用意してもらった。そういえば私が以前、体調を崩した時に私が飲んでいた経口補水液に興味を持ったレオン陛下が一口、経口補水液を飲んだけど、あの時も口に合わない様子だった。
せっかく、セリナから作り方や分量を聞いて経口補水液を用意したのにレオン陛下の口に合わず、飲んで頂けないのではどうしようもない。ひとまず、アップルパイの方は食べて頂けたのが救いだろうか。
アップルパイを食べ終わったレオン陛下は心なしか、顔色が良くなり金色の瞳に生彩が戻ったように思えたので私は少しホッとした。そして、後ほどチーズケーキも食べて頂けた。
私は翌日もハチミツとレモン果汁入りの経口補水液を用意して水分補給は極力、経口補水液をすすめた。レオン陛下は琥珀色の経口補水液を見るとあまり良い顔をしなかったけれど「私が作りました」と笑顔で伝えると飲んでくれるようになった。
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