秘密の聖女（？）異世界でパティスリーを始めます！

異変

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「現にその酷い呪いにかかっていたという方が回復したのなら、可能性はゼロでは無いように思えるし！」

「うーん。まぁ、経口補水液は材料をそろえて作ろうと思えば誰でも作れる物だけど……」

　誰でも作れると言う事は、今すぐにでも用意して陛下に飲んで頂くことが出来るということ。私はひとすじの光明が差したように思えた。

「セリナ！　その経口補水液の作り方、教えてちょうだい！　お願い！」

「作り方を教えるのは構わないわよ……」

「ありがとう！　セリナ！」

「まぁ、普通の経口補水液を作る場合は材料が水、砂糖、塩ね」

「…………それだけ？」

　思いの外、シンプル過ぎる材料に呆然とする。水分なら毎日、お茶などで摂取しているし、砂糖や塩なら普段、口にする料理にも入ってる。

　特別感が全く無い……。セリナは呪いが解けた時に特別な事はしていないと言っていたけど、確かに水、砂糖、塩で作られた経口補水液で呪いが解けたとは思えない。

「うん。あ、私が作る場合は砂糖の代わりにハチミツを使ってるわ」

「砂糖の代わりにハチミツ？」

「ええ、ハチミツの方が人体に早く栄養素が取り込めるの」

「そうなのね……」

　セリナが作った物と同じ条件にするなら砂糖でなくハチミツ。これは重要な要素に違いないと私は心のメモに書き留めた。

「あと、ハチミツを入れた場合は飲みやすくする為、味を調整するのもあってレモン果汁を入れてるわ」

「ハチミツとレモン果汁と水と塩でセリナが作ったら、セリナが作った経口補水液と同じ物が作れるのね？」

「うん。詳しいレシピは……」

　セリナに詳細な分量のレシピを教えてもらった私は早速、経口補水液を用意すべく椅子から立ち上がった。

「ありがとうセリナ！　早速、試してみるわ！」

「うん、でもあんまり期待しないで。経口補水液は……」

「脱水症状を起こしてる人に飲ませる物でしょう？　分かってるわ！　陛下や他の人にも経口補水液で麻痺症状が良くなるかも知れないなんて言わないわ。身体に良いハチミツとレモンの飲料と言って飲んで頂くつもりよ」

「それなら良いけど……。あ、これ渡すの忘れる所だった！　ケーキ！」

　木の皮を編み込んで作った箱を差し出され、私は微笑して受け取った。

「ああ、ありがとう。陛下にも食べて頂くわ」

「一応、栄養のことを言うと。一日、一個のリンゴを食べると医者いらずとか、一日一個のリンゴは医者を遠ざけると言われてる位、リンゴには栄養価があるから。少しでも病床の国王陛下に栄養を取って頂くならアップルパイが良いと思うわ」

「セリナ……！　必ず、陛下にアップルパイを食べて頂くわ！」

「うん。でも、陛下の体力が落ちていて、アップルパイを食べる気力が無いようならチーズケーキの方が食べやすいかも……」

「ありがとう。両方すすめてみるわ」