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忍び寄る影
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「早まってしまったかも……」
女王の居室から窓の外にある見事な庭園を眺めながら、私は深い溜息を吐いた。レオン陛下に私の命を狙った犯人が捕まるまでは警備面で万全な女王の部屋に滞在して欲しいと真剣な表情で告げられ、後宮で危うく死ぬところだったというのもあり正直、犯人が捕まるまでは後宮に戻るのは恐ろしいというのもあって思わず承諾して早数日。
国王陛下と部屋が隣になった事で朝食は必ず、レオン陛下と一緒に食べることになった。気がつけば、晩餐も陛下の公務が入らない限りは一緒にとるようになっていた。窓ガラスにコツンと頭をつけながら私は一人呟く。
「このままで良い訳が無いわ……」
「ローザったら、また悩んでるの? 女王の部屋に滞在できるなんて滅多に無いことよ。国王陛下のご厚意に甘えれば良いじゃないの。まぁ、この新しい花茶でも飲んで一服して」
茶髪の侍女ジョアンナは、そう言いながら優美な金彩と薔薇の絵付けが施された白磁器のティーポットから鮮やかな赤色の花茶を淹れてくれた。
ジョアンナは女王の部屋の隣にある、女王付き女官が使用する控えの間を利用できるようになったことで「部屋のグレードが上がった!」と喜んでいるのだけど私は、そう単純に喜べなかった。
真っ赤な花茶が注がれた白磁器のティーカップのソーサーを左手で持ち上げ、右手でティーカップの取っ手をつまみ口をつけると独特の酸味が舌の上に広がり、思わず眉をひそめる。
「酸っぱい……。ジョアンナ、これ何?」
「南方、紅鳥皇国から輸入された花茶ですって。なんでも美容と疲労回復に良いらしいわよ?」
「ああ、酸っぱい物は疲労回復に良いって言うものね。でも、これちょっと味が独特だからブレンドして配合を変えた方が飲みやすいと思うわ」
「あー! そうね! うん、なるほど!」
ジョアンナは大きく頷いているが、こんな酸っぱい花茶を陛下に出さなくて良かったと内心、冷や汗をかく。しかし不幸中の幸いか酸味の強い花茶を飲んだおかげで思考は冴えた気がする。
「そもそも、私が寵妃の部屋にいた時には後宮の一角でボヤがあって煙が出ていたことで、後宮に居る者の注意はそちらに集中していたから、寵妃の部屋内で私が襲われた犯行の瞬間を第三者が見ていた可能性は無いし、ジョアンナが見てなくて側女だちからも証言が出ていないということは、もう新しい証言が出る見込みは無いわよね……」
「そうね。後宮にいた側女や侍女、警備の者たちから怪しい者が後宮に侵入したとか、ローザの部屋に怪しい者が近づいたという目撃証言は出ていないから今後、新しい証言が出る可能性は厳しいでしょうねぇ」
女王の居室から窓の外にある見事な庭園を眺めながら、私は深い溜息を吐いた。レオン陛下に私の命を狙った犯人が捕まるまでは警備面で万全な女王の部屋に滞在して欲しいと真剣な表情で告げられ、後宮で危うく死ぬところだったというのもあり正直、犯人が捕まるまでは後宮に戻るのは恐ろしいというのもあって思わず承諾して早数日。
国王陛下と部屋が隣になった事で朝食は必ず、レオン陛下と一緒に食べることになった。気がつけば、晩餐も陛下の公務が入らない限りは一緒にとるようになっていた。窓ガラスにコツンと頭をつけながら私は一人呟く。
「このままで良い訳が無いわ……」
「ローザったら、また悩んでるの? 女王の部屋に滞在できるなんて滅多に無いことよ。国王陛下のご厚意に甘えれば良いじゃないの。まぁ、この新しい花茶でも飲んで一服して」
茶髪の侍女ジョアンナは、そう言いながら優美な金彩と薔薇の絵付けが施された白磁器のティーポットから鮮やかな赤色の花茶を淹れてくれた。
ジョアンナは女王の部屋の隣にある、女王付き女官が使用する控えの間を利用できるようになったことで「部屋のグレードが上がった!」と喜んでいるのだけど私は、そう単純に喜べなかった。
真っ赤な花茶が注がれた白磁器のティーカップのソーサーを左手で持ち上げ、右手でティーカップの取っ手をつまみ口をつけると独特の酸味が舌の上に広がり、思わず眉をひそめる。
「酸っぱい……。ジョアンナ、これ何?」
「南方、紅鳥皇国から輸入された花茶ですって。なんでも美容と疲労回復に良いらしいわよ?」
「ああ、酸っぱい物は疲労回復に良いって言うものね。でも、これちょっと味が独特だからブレンドして配合を変えた方が飲みやすいと思うわ」
「あー! そうね! うん、なるほど!」
ジョアンナは大きく頷いているが、こんな酸っぱい花茶を陛下に出さなくて良かったと内心、冷や汗をかく。しかし不幸中の幸いか酸味の強い花茶を飲んだおかげで思考は冴えた気がする。
「そもそも、私が寵妃の部屋にいた時には後宮の一角でボヤがあって煙が出ていたことで、後宮に居る者の注意はそちらに集中していたから、寵妃の部屋内で私が襲われた犯行の瞬間を第三者が見ていた可能性は無いし、ジョアンナが見てなくて側女だちからも証言が出ていないということは、もう新しい証言が出る見込みは無いわよね……」
「そうね。後宮にいた側女や侍女、警備の者たちから怪しい者が後宮に侵入したとか、ローザの部屋に怪しい者が近づいたという目撃証言は出ていないから今後、新しい証言が出る可能性は厳しいでしょうねぇ」
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