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忍び寄る影
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「う……」
ゆっくりとまぶたを開けると霧がかかったように、視界がはっきりとしない。うつぶせに倒れていた私が、フラつきながら立ち上がると遠くに光が見えた。
周囲を見渡しても、その光以外は何も見えない。私は一点の光を頼りに歩きだした。その光に近づくにつれて、そこに白い大きな門があるのが分かった。
そしてさらに近づくと門の向こうに人影が見える。逆光でよく見えないが近づいて行く内に、その人影がシルエットから成人の男女であるということが分かってきた。
「あの人たちに、ここがどこか尋ねよう。それにしても……」
近づけば近づくほど、妙な既視感を覚えて胸が騒ぐ。そう思いながら、やっと声が届くほどの距離まで近づいた時。私は何故、強い既視感を持ったのか理解した。白い門の向こうでたたずんでいる男女の姿。それは。
「お父様と、お母様?」
まさかという思いで両手で口をおさえる。驚きのあまり唇が震え、瞳に熱い物が込み上げる。海難事故で亡くなった父と、私が幼い頃に亡くなった母が微笑みながら、すぐ近くの距離にいる。私は懐かしい両親の元へ行く為、走り出した。
「行くな!」
「え?」
背後から突然、声をかけられ振り向くが誰の姿も見えない。気のせいかと思い私はまた両親の元へと歩き出した。
「行かないでくれ!」
「だれ?」
再び声をかけられ周囲を見渡すが辺り一帯、相変わらず濃い霧がかかっているし、それらしい人物の姿も見えない。
「戻って来い!」
「でも、お父様とお母様が……」
「ローザ!」
強く呼ばれた瞬間、目を覚ますと眼前には金髪の国王レオン陛下がいた。私は瞳を瞬きさせながら呆然とする。何故なら、私がいたのはレオン陛下の逞しい腕の中で上半身を抱き起こされてる。というか、抱きしめられてるような形だったからだ。
「陛下?」
「良かった……。死んでしまったのかと……!」
安堵して今にも涙がこぼれそうな程、金色の瞳を潤ませながら僅かに震える手で、私の頬に優しく触れる陛下の様子に驚く。
しかし、焦げ付く臭いと白煙。周囲で何かが小さく弾けるような音が連続して聞こえ、ただならぬ雰囲気を感じて陛下の横へ視線を彷徨わせると、寵妃の部屋としてあたえられた室内には火の手が上がり、私と陛下は今まさに炎に包まれようとしているという事実に気付いて愕然とした。
「これは!?」
「ローザ。暫し、我慢してくれ」
「え?」
金髪の国王陛下は返事を待たずに私を横抱きで持ち上げた。突如、宙に浮く形となった私は不安定さから、思わず陛下の肩から首に自分の腕を回して床に落ちない為、レオン陛下にしがみつくような状態になった。
ゆっくりとまぶたを開けると霧がかかったように、視界がはっきりとしない。うつぶせに倒れていた私が、フラつきながら立ち上がると遠くに光が見えた。
周囲を見渡しても、その光以外は何も見えない。私は一点の光を頼りに歩きだした。その光に近づくにつれて、そこに白い大きな門があるのが分かった。
そしてさらに近づくと門の向こうに人影が見える。逆光でよく見えないが近づいて行く内に、その人影がシルエットから成人の男女であるということが分かってきた。
「あの人たちに、ここがどこか尋ねよう。それにしても……」
近づけば近づくほど、妙な既視感を覚えて胸が騒ぐ。そう思いながら、やっと声が届くほどの距離まで近づいた時。私は何故、強い既視感を持ったのか理解した。白い門の向こうでたたずんでいる男女の姿。それは。
「お父様と、お母様?」
まさかという思いで両手で口をおさえる。驚きのあまり唇が震え、瞳に熱い物が込み上げる。海難事故で亡くなった父と、私が幼い頃に亡くなった母が微笑みながら、すぐ近くの距離にいる。私は懐かしい両親の元へ行く為、走り出した。
「行くな!」
「え?」
背後から突然、声をかけられ振り向くが誰の姿も見えない。気のせいかと思い私はまた両親の元へと歩き出した。
「行かないでくれ!」
「だれ?」
再び声をかけられ周囲を見渡すが辺り一帯、相変わらず濃い霧がかかっているし、それらしい人物の姿も見えない。
「戻って来い!」
「でも、お父様とお母様が……」
「ローザ!」
強く呼ばれた瞬間、目を覚ますと眼前には金髪の国王レオン陛下がいた。私は瞳を瞬きさせながら呆然とする。何故なら、私がいたのはレオン陛下の逞しい腕の中で上半身を抱き起こされてる。というか、抱きしめられてるような形だったからだ。
「陛下?」
「良かった……。死んでしまったのかと……!」
安堵して今にも涙がこぼれそうな程、金色の瞳を潤ませながら僅かに震える手で、私の頬に優しく触れる陛下の様子に驚く。
しかし、焦げ付く臭いと白煙。周囲で何かが小さく弾けるような音が連続して聞こえ、ただならぬ雰囲気を感じて陛下の横へ視線を彷徨わせると、寵妃の部屋としてあたえられた室内には火の手が上がり、私と陛下は今まさに炎に包まれようとしているという事実に気付いて愕然とした。
「これは!?」
「ローザ。暫し、我慢してくれ」
「え?」
金髪の国王陛下は返事を待たずに私を横抱きで持ち上げた。突如、宙に浮く形となった私は不安定さから、思わず陛下の肩から首に自分の腕を回して床に落ちない為、レオン陛下にしがみつくような状態になった。
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