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三人の王弟

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 ともあれリオネーラ王太后や第二王子ライガ殿下、第三王子ブランシュ殿下、第四王子ダーク殿下と言葉を交わす事が出来たので最低限のあいさつは出来た。少し早いが私はパーティ会場から退席させて頂こう。しかし、今日はまだレオン陛下にはあいさつをしていない。

 ずっと国内外の要人と話をしていたようなので話しかけにくかったというのもあるけど、さすがに寵妃の立場にある者が、国王陛下に一言のあいさつや断りもなく後宮に戻るというのは良くないだろう。私は人の波が途切れた隙を見て金髪の国王陛下に話しかけた。

「レオン陛下」

「ローザ。その首飾り、つけてくれたのだな……。よく似合っている」

「ありがとうございます。リオネーラ様や弟君から伺いました。この首飾りが先の王太后様の品だったと……。そんな大事な物とは知らず」

「大事な物だからこそ、そなたにつけて貰いたかったのだ」

「陛下……」

「その首飾りをつけるのは、そなたが相応しい」

 陛下は私の首元に輝くブルーサファイアの首飾りを見ながら満足そうに顔をほころばせているが、周囲の貴族が何気ない顔をしながら、寵妃である私と金髪の国王陛下の会話を興味津々と言った様子で聞き耳を立てているのが分かって、どうにも居たたまれない。

「リオネーラ様や弟君へのごあいさつもさせて頂きましたので、私はそろそろ退席させて頂こうと思います」

「そうか……。今日はあまり話せなかったからパーティが終わり次第、そなたの部屋を訪ねて構わぬか? 少し、話がしたい」

「はい……。分かりました」

 陛下の言葉にうなづいた後、一礼して茶髪の侍女ジョアンナと共にパーティ会場を後にする際、広間の片隅に黒髪の女官長ミランダがいて会場を出ようとする私に少し、驚いた顔をした。

「あら、もう退席するのですか? 国王陛下とあまり話をしていなかったようですけど」

「はい。パーティが終わったら、レオン陛下が訪ねて来られるそうですし。話はその時に」

「そうですか。パーティが終わって国王陛下が後宮に足を運ぶまで時間がありますから一度、浴場へ行ってさっぱりしてから陛下をお迎えする準備をすると良いでしょう」

「そうですね……」

 長い回廊を歩いて後宮に戻った私は女官長に言われた通り浴場へと向かった。身につけていた首飾りを浴場の前で待機するジョアンナに預け、側女の手を借りながら湯を浴びて汗を流す。

 側女が新鮮なオリーブオイルと月桂樹から作られた緑色の石鹸を泡立て、私の肌を磨く。独特の香りがする石鹸の泡を丁寧に洗い流した後は、腕や脚に香油を塗り込んでいく。
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