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三人の王弟

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「国外を視察した際に、幸運を願う品として玉紐の耳飾りというのを入手いたしました。兄上の治世が長く続く事を願って、私からこの玉紐の耳飾りも贈らせて頂きたく存じます」

 見事な象嵌細工の小箱に入れられた、青い玉紐の耳飾りを見た金髪の国王は苦笑しながらもそれを手に取った。

「耳飾りか。このような装飾品は普段つけないが、他ならぬ帰還した弟からの贈り物だ。折角だから少しつけてみるかな」

「ありがとうございます。兄上。このマントも少し、羽織ってみて下さいませんか?」

「うむ」

 王侯貴族が見守る中、新王レオンに第二王子ライガは襟元に白い毛皮がついた青いマントを羽織らせた。新王の立派な姿と兄弟の仲むつまじさに人々は歓声をあげた。

 一方、私と共に壁際にいる第三王子ブランシュ殿下と、第四王子ダーク殿下はそんな王侯貴族をどこか冷めた目で見ていた。ブランシュ殿下はワイングラスを傾けて、赤い葡萄酒でノドを潤わせてから皮肉気に口元を歪めた。

「レオン兄上はお優しい方だ……。一般人ならば美徳なのでしょうが、それは王として果たして良いことなのか……」

「お優しいのは良いことではないですか?」

「確かに優しいことで周囲が救われることもあります。実際、兄上が新王になると決定した時点で本来なら第二王子以下、王位に就かない王子は処刑される所を兄上はそうはしなかった。おかげで私は命拾いした訳ですが、感謝して大人しくする者ばかりかどうか」

「ブランシュ殿下……」

「私などは生まれつき身体が弱く、実は子供を作ることが出来ないのですよ」

「えっ」

 第三王子の口から、そのような話題が出るとは思ってもみなかった為、私は大いに戸惑ったがブランシュ殿下は気にした様子もなく、ひょうひょうと肩をすぼめた。

「おかげで王位簒奪しようという気力もありません」

「それは……」

 確かに、国王陛下を弑逆して王位に就いた所で子供が出来ないなら、処刑されるリスクを負ってまで王位を簒奪する意味はあまり無いだろう。しかし第三王子の言葉が真実なのか、俄かには判断がつかず私は言葉に詰まった。

「驚かれるのも無理はないですが事実ですよ。医師が診断した結果です。ですからある意味、私の側は安心と言えますね。しかし、私のような人畜無害な思考の王族ばかりでは無いはずです」

 脆弱そうな外見と裏腹に、第三王子の言葉に不穏な物を感じたのだろう。第四王子は眉根をしかめた。

「ブランシュ兄上……」

「良いではないか。寵妃ローザは理解しておくべきだ」
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