280 / 450
三人の王弟
280
しおりを挟む
「知らなかったのですか。それを身に着けているということは……」
「リオネーラ様。今日も麗しゅうございますな」
王太后様の側に一際、豪奢な宮廷服を着た恰幅の良い貴族がにこやかに近づき、話しかけてくると王太后様も相好を崩した。
「おお、ハインではないですか。今までどこにいたのですか?」
「実は白虎王国の大使と話をしておりました。第二王子が白虎王国に滞在した際、世話になった礼を伝えておりました」
宰相閣下が王太后様に話しかけたことで、二人の会話が始まってしまった。リオネーラ様が何かを言いかけていたようだったが王太后様の興味は私より、重臣である宰相閣下との会話へと完全に移ってしまった。二人の会話に加わることも出来ない私は軽く一礼して、その場を離れた。
「そういえば、リオネーラ王太后様から王弟にあいさつをしておくようにと言われていたわね」
「第二王子は……。あちらにいらっしゃるわ」
茶髪の侍女ジョアンナに示された先に黄色を基調とした礼服を着た第二王子、ライガ殿下がいる。私は人々の波をすり抜け、第二王子の前に出た。
「ライガ殿下。お初にお目にかかります」
「そなたは?」
「ローザ・フォン・クオーツと申します」
「兄上がローザという寵妃を後宮に入れたと聞いたが、もしやそなたが?」
「はい。先日から後宮に住まわせて頂いております」
自ら寵妃と名乗るのがおこがましいように思えて、後宮にいるという事実のみ伝えた。間近で見る第二王子は金褐色の髪と瞳、そしてガッシリとした見事な体躯で若々しさと共に力強さを感じる。
レオン陛下と母親が違うというのもあって、顔立ちはあまり似ていないが王族に相応しい風格をそなえているように見えた。その第二王子が私が身に着けているブルーサファイアの首飾りに目をとめた。
「む、その首飾りは先代の王太后が持っていた物ではないか? 確か兄上が譲り受けた品だったような……」
「はい。レオン様のご厚意で身に着けております」
「兄上がそれを……。国王陛下の婚約者はあちらに居るフルオライト伯爵家の令嬢だと聞いていたが、本命は別にいたと言う訳か。堅物だと思っていたが、兄上も隅に置けぬな」
「そんな。そのような……」
楽し気に口角を上げながら、少し離れた場所にいる金髪の国王陛下に視線を向けた第二王子に対して、何と言うべきか悩んでいると後方から高らかなハイヒールの靴音が近づいてきた。
「ライガ殿下!」
「おお、これはフルオライト伯爵令嬢」
深紅のドレスに身を包んだフローラは、第二王子に対して艶やかに微笑んだ。
「リオネーラ様。今日も麗しゅうございますな」
王太后様の側に一際、豪奢な宮廷服を着た恰幅の良い貴族がにこやかに近づき、話しかけてくると王太后様も相好を崩した。
「おお、ハインではないですか。今までどこにいたのですか?」
「実は白虎王国の大使と話をしておりました。第二王子が白虎王国に滞在した際、世話になった礼を伝えておりました」
宰相閣下が王太后様に話しかけたことで、二人の会話が始まってしまった。リオネーラ様が何かを言いかけていたようだったが王太后様の興味は私より、重臣である宰相閣下との会話へと完全に移ってしまった。二人の会話に加わることも出来ない私は軽く一礼して、その場を離れた。
「そういえば、リオネーラ王太后様から王弟にあいさつをしておくようにと言われていたわね」
「第二王子は……。あちらにいらっしゃるわ」
茶髪の侍女ジョアンナに示された先に黄色を基調とした礼服を着た第二王子、ライガ殿下がいる。私は人々の波をすり抜け、第二王子の前に出た。
「ライガ殿下。お初にお目にかかります」
「そなたは?」
「ローザ・フォン・クオーツと申します」
「兄上がローザという寵妃を後宮に入れたと聞いたが、もしやそなたが?」
「はい。先日から後宮に住まわせて頂いております」
自ら寵妃と名乗るのがおこがましいように思えて、後宮にいるという事実のみ伝えた。間近で見る第二王子は金褐色の髪と瞳、そしてガッシリとした見事な体躯で若々しさと共に力強さを感じる。
レオン陛下と母親が違うというのもあって、顔立ちはあまり似ていないが王族に相応しい風格をそなえているように見えた。その第二王子が私が身に着けているブルーサファイアの首飾りに目をとめた。
「む、その首飾りは先代の王太后が持っていた物ではないか? 確か兄上が譲り受けた品だったような……」
「はい。レオン様のご厚意で身に着けております」
「兄上がそれを……。国王陛下の婚約者はあちらに居るフルオライト伯爵家の令嬢だと聞いていたが、本命は別にいたと言う訳か。堅物だと思っていたが、兄上も隅に置けぬな」
「そんな。そのような……」
楽し気に口角を上げながら、少し離れた場所にいる金髪の国王陛下に視線を向けた第二王子に対して、何と言うべきか悩んでいると後方から高らかなハイヒールの靴音が近づいてきた。
「ライガ殿下!」
「おお、これはフルオライト伯爵令嬢」
深紅のドレスに身を包んだフローラは、第二王子に対して艶やかに微笑んだ。
1
お気に入りに追加
4,830
あなたにおすすめの小説
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる