273 / 450
寵姫ローザと国王陛下の婚約者
273
しおりを挟む
「国王陛下がお呼びなの」
「レオン陛下が?」
「ローザと晩餐を共にしたいと……。準備が出来次第、国王陛下の所に向かってちょうだい」
「晩餐会ということですか?」
きちんとした場なら、相応の身支度をしなければならない。そう思いながら尋ねれば女官長は首を横に振った。
「正式な晩餐会という訳では無いわ。二人だけで、国王陛下の居室でささやかな晩餐を楽しみたいそうよ」
「国王陛下の居室?」
今までレオン様と会った時は、陛下が私の部屋に訪ねて来るという形ばかりだった。晩餐とはいえ、国王陛下の私室を訪ねるということに躊躇を感じずにはいられなかった。しかし、女官長は私の胸中を知ってか、知らずか事も無げにうなずく。
「ええ、だから浴場に行って支度して」
「浴場ですか……」
「ローザ。寵妃が夕刻以降に国王陛下の私室を訪ねるなら、浴場で身体を清めてから行くのは当然のことよ。深く考えなくて良いわ」
「ミランダ様」
「あなたも今日は昼間、外を歩いたりして動き回ったのですから浴場でさっぱりしてから身支度を整えましょう」
「はい……」
黒髪の女官長に薦められるまま、浴場へ行き側女の手を借りながら身体を清め、長い金髪をクシで結い整え、用意された薄水色のドレスに袖を通した。
着てみると胸元から腰、ヒザにかけてピッタリと身体のラインに沿ったデザインで、ヒザ下からはフレアで魚の尾びれのように広がっている美しいマーメイドラインのドレスだった。私がドレスを身に着けたのを確認した黒髪の女官長は満足げな表情を見せた。
「用意が出来たわね。とても綺麗よローザ」
「ありがとうございます……」
女官長ミランダに先導され、茶髪の侍女ジョアンナに付き添われながら後宮から長い通路を歩いて王宮にある国王陛下の居室へ向かった。
国王陛下の居室前では、大きな扉の左右で槍を持った二人の屈強な近衛兵が警護していた。女官長ミランダは警備の近衛兵に軽く会釈した。
「寵妃ローザをお連れしました。国王陛下にお取次ぎを」
「少々、お待ちを」
近衛兵の内、一人が国王陛下の居室に入ると、ほどなく再び姿を現した。
「寵妃ローザ様。どうぞ、お入りください」
近衛兵に国王陛下の居室のドアを開けられ、中に入るよう促される。女官長ミランダと侍女ジョアンナの顔を見ると二人とも、私と共に国王陛下の居室へ入室する気は無いらしく「がんばって!」と言わんばかりの微笑をたたえていた。
国王陛下の居室に入るのを許可されたのは寵妃だけだから、女官長と侍女は廊下で待機ということか……。そう思いながら、私は国王陛下の居室に足を踏み入れた。
「レオン陛下が?」
「ローザと晩餐を共にしたいと……。準備が出来次第、国王陛下の所に向かってちょうだい」
「晩餐会ということですか?」
きちんとした場なら、相応の身支度をしなければならない。そう思いながら尋ねれば女官長は首を横に振った。
「正式な晩餐会という訳では無いわ。二人だけで、国王陛下の居室でささやかな晩餐を楽しみたいそうよ」
「国王陛下の居室?」
今までレオン様と会った時は、陛下が私の部屋に訪ねて来るという形ばかりだった。晩餐とはいえ、国王陛下の私室を訪ねるということに躊躇を感じずにはいられなかった。しかし、女官長は私の胸中を知ってか、知らずか事も無げにうなずく。
「ええ、だから浴場に行って支度して」
「浴場ですか……」
「ローザ。寵妃が夕刻以降に国王陛下の私室を訪ねるなら、浴場で身体を清めてから行くのは当然のことよ。深く考えなくて良いわ」
「ミランダ様」
「あなたも今日は昼間、外を歩いたりして動き回ったのですから浴場でさっぱりしてから身支度を整えましょう」
「はい……」
黒髪の女官長に薦められるまま、浴場へ行き側女の手を借りながら身体を清め、長い金髪をクシで結い整え、用意された薄水色のドレスに袖を通した。
着てみると胸元から腰、ヒザにかけてピッタリと身体のラインに沿ったデザインで、ヒザ下からはフレアで魚の尾びれのように広がっている美しいマーメイドラインのドレスだった。私がドレスを身に着けたのを確認した黒髪の女官長は満足げな表情を見せた。
「用意が出来たわね。とても綺麗よローザ」
「ありがとうございます……」
女官長ミランダに先導され、茶髪の侍女ジョアンナに付き添われながら後宮から長い通路を歩いて王宮にある国王陛下の居室へ向かった。
国王陛下の居室前では、大きな扉の左右で槍を持った二人の屈強な近衛兵が警護していた。女官長ミランダは警備の近衛兵に軽く会釈した。
「寵妃ローザをお連れしました。国王陛下にお取次ぎを」
「少々、お待ちを」
近衛兵の内、一人が国王陛下の居室に入ると、ほどなく再び姿を現した。
「寵妃ローザ様。どうぞ、お入りください」
近衛兵に国王陛下の居室のドアを開けられ、中に入るよう促される。女官長ミランダと侍女ジョアンナの顔を見ると二人とも、私と共に国王陛下の居室へ入室する気は無いらしく「がんばって!」と言わんばかりの微笑をたたえていた。
国王陛下の居室に入るのを許可されたのは寵妃だけだから、女官長と侍女は廊下で待機ということか……。そう思いながら、私は国王陛下の居室に足を踏み入れた。
1
お気に入りに追加
4,828
あなたにおすすめの小説
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。
和泉鷹央
ファンタジー
幼い頃に住んでいたボルダスの街に戻って来たアルフリーダ。
王都の魔法学院を卒業した彼女は、二級魔導師の資格を持つ氷の魔女だった。
二級以上の魔導師は貴族の最下位である準士の資格を与えられ辺境では名士の扱いを受ける。
ボルダスを管理するラーケム伯と教会の牧師様の来訪を受けた時、アルフリーダは親友のエリダと再会した。
彼女の薦めで、隣の城塞都市カルムの領主であるセナス公爵の息子、騎士ラルクを推薦されたアルフリーダ。
半年後、二人は婚約をすることになるが恋人と親友はお酒の勢いで関係を持ったという。
自宅のベッドで過ごす二人を発見したアルフリーダは優しい微笑みと共に、二人を転送魔法で郊外の川に叩き込んだ。
数日後、謝罪もなく婚約破棄をしたいと申し出る二人に、アルフリーダはとある贈り物をすることにした。
他の投稿サイトにも掲載しています。
【続編完結】侯爵令嬢は今日もにこやかに断罪する
ミアキス
ファンタジー
侯爵令嬢アディエル・ノクタールは二年前のとある出来事から巷では『断罪令嬢』と呼ばれている。
第一王子からアディエルへの断罪劇を、第一王子への断罪劇へと転換し、完膚なきまでに第一王子を断罪したからである。
その後、彼女の鮮やかな断罪っぷりに感銘を受けた者達に請われ、次々と不埒な者達を断罪していく姿に、『断罪令嬢』という二つ名ーー世間では好意的な意味でーーが広まった。
そして、今日も彼女は相談相手のために、にこやかな笑顔を浮かべて断罪していくーー。
※本編は完結済。
以降は番外編を登場人物一人を焦点に公開しております。
別公開の【後日談】も良ければお読みください。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん
夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。
のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。
仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪
桐生桜月姫
ファンタジー
愛良と晶は仲良しで有名な双子だった。
いつも一緒で、いつも同じ行動をしていた。
好き好みもとても似ていて、常に仲良しだった。
そして、一緒に事故で亡くなった。
そんな2人は転生して目が覚めても、またしても双子でしかも王族だった!?
アイリスとアキレスそれが転生後の双子の名前だ。
相変わらずそっくりで仲良しなハイエルフと人間族とのハーフの双子は異世界知識を使って楽しくチートする!!
「わたしたち、」「ぼくたち、」
「「転生しても〜超仲良し!!」」
最強な天然双子は今日もとっても仲良しです!!
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる