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オオカミ的に驚きの新事実
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俺が若干、拍子抜けしながら呟けば、セリナはハッとした様子で黒熊ベルントに視線を向けた。
「そういえば……! もしかしてその件で、ベルントさんに迷惑がかかりましたか?」
「いや、俺の方は特に迷惑は無いが」
「そうですか。良かった……。一回、聞いた方が良いかとは思っていたんですけど、こんなこと聞きづらくって言い出せなかったんですよね」
無表情で返事をした黒熊ベルントに、セリナは安堵した表情で胸をなで下ろした。そして、俺の方も自分に非があったようだと考え提案することにした。
「あー。その、誤解があったとはいえ一方的に勘違いして申し訳ないから、今日の所は俺に蜂蜜ケーキの代金を出させてくれないか?」
「何だと……?」
蜂蜜ケーキという単語を耳にした瞬間、黒熊ベルントは眉間に深くシワを寄せて即座に人を殴り殺しそうなほど眼光を鋭くしたので、俺は慌てる。
「ああ、いや! 俺が代金を出すから、蜂蜜ケーキはベルントに持って帰って欲しいんだ。無駄なケンカを売ってしまった詫びだ。そうさせてくれ」
俺が補足説明すると黒熊ベルントは目を丸くした後、琥珀色の瞳を輝かせた。そして、簡単な治療を終えた黒熊ベルントはセリナが包んだ蜂蜜ケーキをほくほく顔で持って帰った。
「あいつ……。本当に蜂蜜ケーキが目当てだったのか……」
夕焼け空の下、遠ざかっていく黒熊ベルントの後姿を呆然としながら見送っていると、横でオレンジスピネル色の夕日に照らされながらセリナが笑った。
「ベルントさんって、すごく蜂蜜が好きみたいですよ? ウチに来た時は必ず蜂蜜のケーキを買っていきますし。さっきの蜂蜜ケーキも、今日は最後の一個だったんです」
「そうなのか……」
最後の一個とはいえ、奴は蜂蜜ケーキをかけて本気で戦っていたのか。そして、俺は蜂蜜ケーキを奪われまいとした熊獣人に顔を潰されそうになったのか。
自分の誤解から始まった事とはいえ、危うく蜂蜜ケーキのせいで大ケガ、もしくは殺される所だったのかと思うとゾッとする。まぁ、俺も誤解から他人を殺さずに済んで良かったが……。
それもこれも剣を持って対峙していた、俺とベルントの間に割って入ってくれたセリナのおかげだろう。以前、命を救われた件といい、重ね重ねセリナには感謝しかない。
「セリナ……。今日はすまなかった。詫びと言っては何だが、これを受け取ってくれないか?」
「これは?」
「旅先で手に入れたんだ」
花の形をかたどった銀色に光るブローチを取り出して見せれば、セリナは困り顔で戸惑いを見せた。
「これって、銀細工ですよね? 高い物なんじゃないですか? 受け取れないですよ」
「いや。女物だし、俺が持っていても仕方ない物だ。セリナには二度も助けられたから礼がしたいんだ。……頼む、貰ってくれ」
「う……。じゃあ、遠慮なく頂きます……。でも、高価な物は申し訳ないですから、これきりにして下さいね?」
「分かった」
こうして押し問答の末、ようやくセリナは銀細工のブローチを受け取ってくれた。しかし、新鮮な生肉は遠慮なく受け取ってくれるのに、装飾品は遠慮して受け取ってくれないとは人間の女心というのは難しいものだ……。
ちなみに後日、パティスリー・セリナを訪ねると、セリナは俺の贈った銀細工のブローチを身に着けてくれていた。
「そういえば……! もしかしてその件で、ベルントさんに迷惑がかかりましたか?」
「いや、俺の方は特に迷惑は無いが」
「そうですか。良かった……。一回、聞いた方が良いかとは思っていたんですけど、こんなこと聞きづらくって言い出せなかったんですよね」
無表情で返事をした黒熊ベルントに、セリナは安堵した表情で胸をなで下ろした。そして、俺の方も自分に非があったようだと考え提案することにした。
「あー。その、誤解があったとはいえ一方的に勘違いして申し訳ないから、今日の所は俺に蜂蜜ケーキの代金を出させてくれないか?」
「何だと……?」
蜂蜜ケーキという単語を耳にした瞬間、黒熊ベルントは眉間に深くシワを寄せて即座に人を殴り殺しそうなほど眼光を鋭くしたので、俺は慌てる。
「ああ、いや! 俺が代金を出すから、蜂蜜ケーキはベルントに持って帰って欲しいんだ。無駄なケンカを売ってしまった詫びだ。そうさせてくれ」
俺が補足説明すると黒熊ベルントは目を丸くした後、琥珀色の瞳を輝かせた。そして、簡単な治療を終えた黒熊ベルントはセリナが包んだ蜂蜜ケーキをほくほく顔で持って帰った。
「あいつ……。本当に蜂蜜ケーキが目当てだったのか……」
夕焼け空の下、遠ざかっていく黒熊ベルントの後姿を呆然としながら見送っていると、横でオレンジスピネル色の夕日に照らされながらセリナが笑った。
「ベルントさんって、すごく蜂蜜が好きみたいですよ? ウチに来た時は必ず蜂蜜のケーキを買っていきますし。さっきの蜂蜜ケーキも、今日は最後の一個だったんです」
「そうなのか……」
最後の一個とはいえ、奴は蜂蜜ケーキをかけて本気で戦っていたのか。そして、俺は蜂蜜ケーキを奪われまいとした熊獣人に顔を潰されそうになったのか。
自分の誤解から始まった事とはいえ、危うく蜂蜜ケーキのせいで大ケガ、もしくは殺される所だったのかと思うとゾッとする。まぁ、俺も誤解から他人を殺さずに済んで良かったが……。
それもこれも剣を持って対峙していた、俺とベルントの間に割って入ってくれたセリナのおかげだろう。以前、命を救われた件といい、重ね重ねセリナには感謝しかない。
「セリナ……。今日はすまなかった。詫びと言っては何だが、これを受け取ってくれないか?」
「これは?」
「旅先で手に入れたんだ」
花の形をかたどった銀色に光るブローチを取り出して見せれば、セリナは困り顔で戸惑いを見せた。
「これって、銀細工ですよね? 高い物なんじゃないですか? 受け取れないですよ」
「いや。女物だし、俺が持っていても仕方ない物だ。セリナには二度も助けられたから礼がしたいんだ。……頼む、貰ってくれ」
「う……。じゃあ、遠慮なく頂きます……。でも、高価な物は申し訳ないですから、これきりにして下さいね?」
「分かった」
こうして押し問答の末、ようやくセリナは銀細工のブローチを受け取ってくれた。しかし、新鮮な生肉は遠慮なく受け取ってくれるのに、装飾品は遠慮して受け取ってくれないとは人間の女心というのは難しいものだ……。
ちなみに後日、パティスリー・セリナを訪ねると、セリナは俺の贈った銀細工のブローチを身に着けてくれていた。
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