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セリナの近況
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「許せない……!」
俯いたケヴィン君がそう呟いた瞬間、私はゾクリと背筋が寒くなるのを感じた。いや実際、確実に周囲の温度は寒くなっている。私の吐く息が突然、白くなったのが目視できるのだから間違いない。そう思いながら眼前の少年に視線を戻すと金髪碧眼の少年はうつむいたまま、肩を震わせていた。
「ケヴィン君!?」
「姉さんは国王の寵妃になりたいなんて、一度も言った事ないんだ……。寵妃になるのを強要されたに決まってる!」
そう言いながらケヴィン君が、噴水のフチに片手を置いた瞬間、その場所から噴水の水面がビキビキと音を立てながら凍り付き、噴き出し流れていた水の流れは噴水全体が凍てついた事によって完全に静止した。
「こ、これは!」
私が唖然としていると噴水広場を行きかう人々が突如、凍り付き氷のオブジェと化した噴水を見て騒ぎ出した。
「なんだあれは!」
「噴水が凍ってるぞ!」
「ウソでしょ!? まだそんな季節じゃない筈でしょ!」
「雪も降ってないのに、噴水が凍るなんて! いったいどうなってるの!?」
異変に気付いた人々が騒然となったが、今度は強い風が吹きつけると同時に噴水広場を黒い影が覆った。見上げると厚い灰色雲が上空を覆い始め、雲のすき間から小さな稲光が見えたと思った直後、ゴロゴロという大気が振動する音が辺りに響き渡った。
「雷だわ! ケヴィン君! 外は危ないから、とにかく屋内に入りましょう!」
金髪碧眼の少年の手をとって駆けだすと同時に、何と空からパラパラと小さな氷のかたまり……。ヒョウが降り出した。私は腕で、自分の頭とケヴィン君をかばうようにしながら走って、パティスリーの中に入った。
「ルル、ララ!」
「はい!」
「なんでしょうか?」
店頭で店番をしていた双子メイドに声をかければ、二人は猫耳をピンと立てた。
「ヒョウが降り始めたから、窓ガラスが割れないように木窓を全部、閉めてちょうだい!」
「分かりました!」
「了解です!」
ルルが一階の木窓を、ララが上階の木扉を閉めに行ってっている間、とりあえずケヴィン君をダイニングへと案内したが、その間にも降り続けるヒョウの勢いは増してるらしく、野外で打ちつけるヒョウの音は激しくなる一方だった。
そして、ふと先ほど目にした『魔力の実』の苗について思い出す。バルコニーに出しっぱなしにしていた魔力の実の苗。このままでは激しく降り続けるヒョウによって、折角ついた実も苗ごと全滅してしまうだろう。
俯いたケヴィン君がそう呟いた瞬間、私はゾクリと背筋が寒くなるのを感じた。いや実際、確実に周囲の温度は寒くなっている。私の吐く息が突然、白くなったのが目視できるのだから間違いない。そう思いながら眼前の少年に視線を戻すと金髪碧眼の少年はうつむいたまま、肩を震わせていた。
「ケヴィン君!?」
「姉さんは国王の寵妃になりたいなんて、一度も言った事ないんだ……。寵妃になるのを強要されたに決まってる!」
そう言いながらケヴィン君が、噴水のフチに片手を置いた瞬間、その場所から噴水の水面がビキビキと音を立てながら凍り付き、噴き出し流れていた水の流れは噴水全体が凍てついた事によって完全に静止した。
「こ、これは!」
私が唖然としていると噴水広場を行きかう人々が突如、凍り付き氷のオブジェと化した噴水を見て騒ぎ出した。
「なんだあれは!」
「噴水が凍ってるぞ!」
「ウソでしょ!? まだそんな季節じゃない筈でしょ!」
「雪も降ってないのに、噴水が凍るなんて! いったいどうなってるの!?」
異変に気付いた人々が騒然となったが、今度は強い風が吹きつけると同時に噴水広場を黒い影が覆った。見上げると厚い灰色雲が上空を覆い始め、雲のすき間から小さな稲光が見えたと思った直後、ゴロゴロという大気が振動する音が辺りに響き渡った。
「雷だわ! ケヴィン君! 外は危ないから、とにかく屋内に入りましょう!」
金髪碧眼の少年の手をとって駆けだすと同時に、何と空からパラパラと小さな氷のかたまり……。ヒョウが降り出した。私は腕で、自分の頭とケヴィン君をかばうようにしながら走って、パティスリーの中に入った。
「ルル、ララ!」
「はい!」
「なんでしょうか?」
店頭で店番をしていた双子メイドに声をかければ、二人は猫耳をピンと立てた。
「ヒョウが降り始めたから、窓ガラスが割れないように木窓を全部、閉めてちょうだい!」
「分かりました!」
「了解です!」
ルルが一階の木窓を、ララが上階の木扉を閉めに行ってっている間、とりあえずケヴィン君をダイニングへと案内したが、その間にも降り続けるヒョウの勢いは増してるらしく、野外で打ちつけるヒョウの音は激しくなる一方だった。
そして、ふと先ほど目にした『魔力の実』の苗について思い出す。バルコニーに出しっぱなしにしていた魔力の実の苗。このままでは激しく降り続けるヒョウによって、折角ついた実も苗ごと全滅してしまうだろう。
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