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寵姫ローザ
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「私は呼ばれて、ただ切り分けられてるケーキをこの部屋に運んだだけよ。このケーキを用意されたのは女官長よ」
「では何故、ミランダ様が?」
戸惑いながら尋ねれば黒髪の女官長は、やや苦笑した。
「私は……。レオン陛下からの命で、ローザに『セリナ』のケーキを食べさせるようにと言われて、城下まで買いに行ったのよ」
「レオン陛下が、そんなことを……。私のために、ご足労をお掛けしてしまって申し訳ありません。ミランダ様……」
「こんな形で使い走りになったことなんて、今まで無かったから驚いたけど。これも仕事の内ですからね」
やや皮肉気に方眉を上げながら、黒髪の女官長が青磁器のティーポットを傾け、ティーカップにお茶を注ぐと、白い湯気が立つお茶の色は淡い黄金色だった。
「いつもの茶葉と違うようですが、これは?」
「私が『パティスリー・セリナ』で店長のセリナという娘に『ローザは食欲が無い』って言ったら、この『ホットはちみつレモン』を飲ませて欲しいと渡されたのよ」
「これ、セリナが……?」
「そうよ。あなたのことを、とても心配していたわ。体調が悪い時に飲むと、身体に良い飲み物だそうよ」
黒髪の女官長ミランダ様が青磁器のティーカップに注いだ、ホットはちみつレモンを目の前に置いてくれた。ティーカップに顔を近づけて香りをかぐと、はちみつの香りがほのかに感じられる。
カップの取っ手を摘まんでホットはちみつレモンを飲むと、優しいはちみつの甘さと程よいレモンの酸味が乾いていた咽喉を心地よく潤し、胃に入ったホットはちみつレモンがそこから身体中に浸透して、まるで中から癒されるような不思議な感覚がして、あっと言う間に一杯分を飲み干してしまった。
「これ、とても美味しい!」
「……あなたの口には合うのね」
「え?」
黒髪の女官長は、私が一気にホットはちみつレモンを飲み干した姿を目の当たりにして、ほんの少し驚いたような表情になったが、すぐに切り替えて空になった青磁器のティーカップに、再びホットはちみつレモンを注ぎ入れる。
「いえ。それより、もう一杯飲むと良いわ。……それに昨日から、ほとんど食べてないでしょう? 食欲が出たなら、このケーキもどう?」
「そうですね。今なら食べられそうです」
ついさっきまで全く食欲が無かったのに、今は眼前のケーキをぺろりと平らげてしまうことが出来そうな気分になっている。
宝石のような赤色が美しいクランベリータルトか、艶々と狐色に光るアップルパイか、はたまた柔らかな食感がたまらない濃厚チーズケーキか、それとも旬の果物がたっぷり乗ったフルーツケーキか。大皿に並べられたカットケーキはどれも艶々とした輝きを放っている。
どれを選ぶべきか悩んでいた時だった。部屋の外からノックの音が響き、来客が訪れたのだと思った瞬間、扉が開いた。現れたのは女官長に、このケーキを買ってくるようにと指示した金髪の新王、レオン陛下だった。
「では何故、ミランダ様が?」
戸惑いながら尋ねれば黒髪の女官長は、やや苦笑した。
「私は……。レオン陛下からの命で、ローザに『セリナ』のケーキを食べさせるようにと言われて、城下まで買いに行ったのよ」
「レオン陛下が、そんなことを……。私のために、ご足労をお掛けしてしまって申し訳ありません。ミランダ様……」
「こんな形で使い走りになったことなんて、今まで無かったから驚いたけど。これも仕事の内ですからね」
やや皮肉気に方眉を上げながら、黒髪の女官長が青磁器のティーポットを傾け、ティーカップにお茶を注ぐと、白い湯気が立つお茶の色は淡い黄金色だった。
「いつもの茶葉と違うようですが、これは?」
「私が『パティスリー・セリナ』で店長のセリナという娘に『ローザは食欲が無い』って言ったら、この『ホットはちみつレモン』を飲ませて欲しいと渡されたのよ」
「これ、セリナが……?」
「そうよ。あなたのことを、とても心配していたわ。体調が悪い時に飲むと、身体に良い飲み物だそうよ」
黒髪の女官長ミランダ様が青磁器のティーカップに注いだ、ホットはちみつレモンを目の前に置いてくれた。ティーカップに顔を近づけて香りをかぐと、はちみつの香りがほのかに感じられる。
カップの取っ手を摘まんでホットはちみつレモンを飲むと、優しいはちみつの甘さと程よいレモンの酸味が乾いていた咽喉を心地よく潤し、胃に入ったホットはちみつレモンがそこから身体中に浸透して、まるで中から癒されるような不思議な感覚がして、あっと言う間に一杯分を飲み干してしまった。
「これ、とても美味しい!」
「……あなたの口には合うのね」
「え?」
黒髪の女官長は、私が一気にホットはちみつレモンを飲み干した姿を目の当たりにして、ほんの少し驚いたような表情になったが、すぐに切り替えて空になった青磁器のティーカップに、再びホットはちみつレモンを注ぎ入れる。
「いえ。それより、もう一杯飲むと良いわ。……それに昨日から、ほとんど食べてないでしょう? 食欲が出たなら、このケーキもどう?」
「そうですね。今なら食べられそうです」
ついさっきまで全く食欲が無かったのに、今は眼前のケーキをぺろりと平らげてしまうことが出来そうな気分になっている。
宝石のような赤色が美しいクランベリータルトか、艶々と狐色に光るアップルパイか、はたまた柔らかな食感がたまらない濃厚チーズケーキか、それとも旬の果物がたっぷり乗ったフルーツケーキか。大皿に並べられたカットケーキはどれも艶々とした輝きを放っている。
どれを選ぶべきか悩んでいた時だった。部屋の外からノックの音が響き、来客が訪れたのだと思った瞬間、扉が開いた。現れたのは女官長に、このケーキを買ってくるようにと指示した金髪の新王、レオン陛下だった。
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