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侍女見習いローザ
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まずは一番シンプルな焼き色がついたケーキを一口食べる。濃厚なチーズの風味と、ほどよい甘さが口の中に広がったと思った次の瞬間、舌の上でケーキがじゅわっと蕩けるのが感じられた。
「こ、これは……!」
「どうしたのだ!?」
「チーズのケーキなんですが、信じられない位ふんわりしてて……。口の中で溶けてしまいました!」
「そんな馬鹿な。チーズが溶ける訳が……」
言いながらチーズケーキをフォークで一口大にカットして食べると、王太子殿下も琥珀色の瞳を大きく見開いた。
「溶けましたよね?」
「ああ、確かに……。これは一体どうなっているのだ!?」
金髪の王太子は不可解だという顔をしながらも手と口を動かし続け、チーズケーキをあっという間に食べきった。
「じゃあ、次はクランベリーのタルトを」
「うむ!」
甘酸っぱいクランベリーの酸味とアーモンドの香ばしさが絶妙な、クランベリータルトは食欲をそそる味わいで、これもあっという間に王太子の胃袋に収まり、最後のフルーツケーキもぺろりと平らげた。
「まぁ……。王太子殿下に召し上がって頂けたと知ったら、セリナも喜ぶでしょうね」
「セリナとは誰だ?」
「このケーキを販売している店の者です。私の友達で……」
「ふむ」
金髪の王太子殿下は満足した様子で白磁器のティーカップを傾け、食後のお茶を飲んでいる。
「ところで先ほども伺いましたが、どうしてレオン様は伯爵令嬢フローラに追いかけられていたのですか?」
「…………私が居室に戻った時に宰相がやって来て、王太子妃候補である伯爵令嬢と話をして欲しいと言われたのだ」
「はぁ」
何故、話をすることから追いかけっこになったのか全く分からないまま、相づちを打つと王太子殿下が死んだ魚のような目で虚空を見つめた。
「居室で二人きりになった途端。赤髪の伯爵令嬢が、私を押し倒してきた」
「えっ」
「そして、私に顔を近づけながら『殿下の子供が欲しいのです』と迫ってきたのだ……」
「うわぁ……」
「私は速やかに戦略的撤退を選んだ。……後はそなたも知る通りだ」
「それは、大変でしたね」
「ああ。私とて、王太子として生まれたからには政略結婚や愛の無い結婚も覚悟しているが、初めての時くらいは好きな相手と……」
「え?」
政略結婚や愛の無い結婚も覚悟しているが……。までは聞こえたが、最後の方は小声で聞き取れなかったので思わず聞き返してしまった。しかし、金髪の王太子は何故か少し頬を赤らめて、焦った様子で首を横に振った。
「いや、何でもない」
「そうですか? あ、レオン様。ケーキの欠片とクリームが少し口元に付いてます」
「む……。そうか」
王太子殿下は右手で口元を拭うが、ケーキの欠片とクリームが付いているのは反対側なので取れていない。
「いえ、そちら側ではありません。ちょっと取りますね」
「うむ」
私は身を乗り出して王太子殿下の口元にあったケーキの欠片を取り、指でクリームを拭った。綺麗に取れたので、にっこり笑うと金髪の王太子は何故か、顔が真っ赤になった。
「こ、これは……!」
「どうしたのだ!?」
「チーズのケーキなんですが、信じられない位ふんわりしてて……。口の中で溶けてしまいました!」
「そんな馬鹿な。チーズが溶ける訳が……」
言いながらチーズケーキをフォークで一口大にカットして食べると、王太子殿下も琥珀色の瞳を大きく見開いた。
「溶けましたよね?」
「ああ、確かに……。これは一体どうなっているのだ!?」
金髪の王太子は不可解だという顔をしながらも手と口を動かし続け、チーズケーキをあっという間に食べきった。
「じゃあ、次はクランベリーのタルトを」
「うむ!」
甘酸っぱいクランベリーの酸味とアーモンドの香ばしさが絶妙な、クランベリータルトは食欲をそそる味わいで、これもあっという間に王太子の胃袋に収まり、最後のフルーツケーキもぺろりと平らげた。
「まぁ……。王太子殿下に召し上がって頂けたと知ったら、セリナも喜ぶでしょうね」
「セリナとは誰だ?」
「このケーキを販売している店の者です。私の友達で……」
「ふむ」
金髪の王太子殿下は満足した様子で白磁器のティーカップを傾け、食後のお茶を飲んでいる。
「ところで先ほども伺いましたが、どうしてレオン様は伯爵令嬢フローラに追いかけられていたのですか?」
「…………私が居室に戻った時に宰相がやって来て、王太子妃候補である伯爵令嬢と話をして欲しいと言われたのだ」
「はぁ」
何故、話をすることから追いかけっこになったのか全く分からないまま、相づちを打つと王太子殿下が死んだ魚のような目で虚空を見つめた。
「居室で二人きりになった途端。赤髪の伯爵令嬢が、私を押し倒してきた」
「えっ」
「そして、私に顔を近づけながら『殿下の子供が欲しいのです』と迫ってきたのだ……」
「うわぁ……」
「私は速やかに戦略的撤退を選んだ。……後はそなたも知る通りだ」
「それは、大変でしたね」
「ああ。私とて、王太子として生まれたからには政略結婚や愛の無い結婚も覚悟しているが、初めての時くらいは好きな相手と……」
「え?」
政略結婚や愛の無い結婚も覚悟しているが……。までは聞こえたが、最後の方は小声で聞き取れなかったので思わず聞き返してしまった。しかし、金髪の王太子は何故か少し頬を赤らめて、焦った様子で首を横に振った。
「いや、何でもない」
「そうですか? あ、レオン様。ケーキの欠片とクリームが少し口元に付いてます」
「む……。そうか」
王太子殿下は右手で口元を拭うが、ケーキの欠片とクリームが付いているのは反対側なので取れていない。
「いえ、そちら側ではありません。ちょっと取りますね」
「うむ」
私は身を乗り出して王太子殿下の口元にあったケーキの欠片を取り、指でクリームを拭った。綺麗に取れたので、にっこり笑うと金髪の王太子は何故か、顔が真っ赤になった。
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