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侍女見習いローザ

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「宰相閣下が、あの伯爵令嬢を王太子妃候補として推す理由が分かったわ……」

「え、伯爵令嬢フローラ様って宰相閣下が推薦されてるんですか!?」

 ジョアンナが茶色い瞳を見開いて疑問を口にすれば、ミランダ様は神妙な顔で頷く。

「なんでもフルオライト伯爵家と宰相閣下は縁戚関係らしいわ」

「ああ、それで伯爵令嬢が……」

「伯爵令嬢フローラ様が王太子妃ともなれば、血縁関係にある宰相閣下のお立場はより盤石となりますからね」

 ミランダ様とジョアンナの話を聞きながら、なるほどと納得する。上級貴族なら王太子妃として身分も申し分ないはずだけど伯爵令嬢となると、公爵令嬢のような上級貴族より格が落ちる。家格を気にする重鎮なら、伯爵令嬢という身分は王太子妃候補としては物足りないという意見も出るだろう。

 しかし、さきほど見せた通り、他の令嬢とは比べ物にならない魔力を持っているのが分かった以上、身分を問題にして王太子妃候補から外すという者はいないんじゃないだろうか。

 何しろ一般的に、魔力は親から子へ遺伝する場合が多い。金獅子国の王族である王太子レオン殿下の魔力は勿論、高いと聞く。さらに正妃となる女性も魔力が高いなら、非常に高い確率で優秀な高魔力の王族が誕生することになる。

 魔力が低い王侯貴族は侮られやすい。高魔力の王族を望む者にとって伯爵令嬢フローラは、魔力的に考えれば最高の王太子妃候補と言える。そんなことを考えていたら黒髪の女官ミランダ様は、私とジョアンナを見据えた。

「正式に王太子妃が決定すれば、あなた達のどちらか。もしくは二人とも王太子妃付き侍女になると思うから、そのつもりでいなさい」

「えっ」

「そうなんですかっ!?」

 驚愕する私とジョアンナに黒髪の女官は、さも当然という表情をする。

「年齢の近い娘がそばにいた方が慣れない王宮生活でも、心安らかに過ごせるでしょうからね……。特にローザ」

「は、はい」

「あなたが伯爵令嬢フローラ様と学園時代、クラスメイトだったなら……。あの方が王太子妃になった場合、ローザが王太子妃付き侍女になる可能性が高いでしょうね」

「私が王太子妃付き侍女に……?」

「正式に決定した訳では無いし、人事は女官長ゾフィー様が決定することですが。そういう可能性もあるということも心に留め置くように。仮に侍女になれば王太子妃が口にする物、すべて毒見をするなど配慮が必要です。ゆめゆめ忘れないようにね」

「はい……」

 王立学園時代にクラスメイトだった赤髪の伯爵令嬢フローラが、まさか王太子妃候補として王宮にやって来るなんて夢にも思ってなかった私は、半ば呆然とした状態で返事をした。
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