上 下
181 / 450
利益率と金髪碧眼の少年

181

しおりを挟む
「利益率の高い商品と言うと?」

「ふむ。お嬢ちゃんの店で一番やりやすいのは飲み物じゃろうなぁ」

「飲み物ですか? 確かにケーキと飲み物はセットで出したら確実に需要があるとは思いますが、あの店だと飲食スペースが無いので……」

「うん。店の中では無理でも、外なら飲食スペースが設けられるんじゃないかい?」

「外って……。あっ! なるほど!」

 屋外にテーブルとイスを置いて、オープンカフェという形式にすれば飲食スペースが確保できる。幸い、ウチの店舗は噴水広場に面している。あの噴水広場のスペースを有効活用してケーキセットを出せれば店舗の利益率は大幅にアップするだろう。

「確かに、それなら飲み物が出せますね!」

「そうじゃろ? しかし、外で飲食スペースを設けるなら役所の許可がいるぞい?」

「役所の許可ですね! じゃあ、今日の仕事が一段落したら早速、行ってみます! ラッセルさん、ありがとうございました!」

 店舗に帰った私は追加のケーキを作って、早めに仕事を切り上げると店舗前の公園広場にテーブルやイスを置いて飲食営業できる許可をもらうために役所へと足を運び、窓口にいたチョビヒゲの役人に思いのたけをぶつけた。


「という訳で店舗の前に飲食スペースを設けたいんです! できれば、噴水広場にテーブルやイスを設置させて頂きたいんですが!」

「噴水広場で飲食営業の許可ねぇ……。無理だね」

「何でですか!?」

 私が食い下がれば、役人は呆れ顔で大きな溜め息をつく。

「あんたねぇ……。百歩ゆずって、店舗の真ん前だけならともかく、噴水広場にテーブルとイスを設置したいってのは図々しすぎるよ? ああいう場所は公共の場って分かるだろう?」

「それは、そうですけど。テーブルとイスを設置すれば、誰でも気軽に休めますし……」

「ダメだね。おまえさんの店が利益を得るためにテーブルとイスを設置する許可を、俺の一存で出すわけにはいかないんでね」

「あなたの一存で許可を出せないというなら、誰の許可をもらえば良いんですか?」

「フン。もらうなら、もっと上の許可に決まってるだろう?」

「上の許可っていうと?」

「国王陛下や宰相なら一発で許可が出るだろうね」

「こ、国王陛下……」

「ハッ、無理だろう? さっさと諦めて帰りな」

 チョビヒゲの役人に鼻で笑われ、アゴで出口から帰れとうながされるが、ここまで来たのだからタダで帰る訳にはいかない。

「ちょっと待ってください! じゃあ、店舗前のスペースだけでも飲食営業の許可を!」

「店舗前のスペースを利用する許可は出せない。通行のジャマになるからな」

「通行のジャマになんかならないですよ! だって、目の前は噴水広場なんですよ!?」

「うるさい! こっちは仕事が忙しいんだ! 小娘のワガママに付き合ってるヒマは無い! とっとと帰れ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央
ファンタジー
 幼い頃に住んでいたボルダスの街に戻って来たアルフリーダ。  王都の魔法学院を卒業した彼女は、二級魔導師の資格を持つ氷の魔女だった。  二級以上の魔導師は貴族の最下位である準士の資格を与えられ辺境では名士の扱いを受ける。  ボルダスを管理するラーケム伯と教会の牧師様の来訪を受けた時、アルフリーダは親友のエリダと再会した。  彼女の薦めで、隣の城塞都市カルムの領主であるセナス公爵の息子、騎士ラルクを推薦されたアルフリーダ。  半年後、二人は婚約をすることになるが恋人と親友はお酒の勢いで関係を持ったという。  自宅のベッドで過ごす二人を発見したアルフリーダは優しい微笑みと共に、二人を転送魔法で郊外の川に叩き込んだ。  数日後、謝罪もなく婚約破棄をしたいと申し出る二人に、アルフリーダはとある贈り物をすることにした。  他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

処理中です...