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落雷と取引

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 やっぱり、絶望的に愛想が無い魔道具屋の店主に、私は自分の顔が引きつるのを感じた。一応、仕事の依頼もしてるし何とか友好的な関係を築きたいと思ったのだが、当の相手がコレでは世間話をすることすら困難を極める。

「そんな事より、てめぇが依頼してたショーケースと材料を保冷するための魔道具ができたぞ」

「えっ! 本当ですか!」

「ああ。いつでも取り付けられるが……」

「そうですか……。まぁ、急いでないし。今日は、もう雨も降ってきそうですから。コルニクスさんが大丈夫なら、明日以降に」

 厚みを増しながら黒い色を濃くしていく雲を見上げて話しながら、魔道具屋の二階に視線を戻すと、黒髪の店主は忽然と姿を消していた。

「まだ、話の途中なのに……。部屋の中に引っ込んだのかしら?」


 ひとりごちながら、首をかしげてるとパラパラと小雨が降り始めた。そして、それと同時にコルニクスさんが慌ただしく、一階の店舗ドアから外に飛び出す姿が見えた。

 小雨が降り始めたというのに、あの魔道具屋は何か急用でも出来たのかと、手に持っていた植木鉢をテーブルの上に置いた時だった。階下で戸惑う双子の声と、バタバタと騒音が聞こえてきた。

 何事かと思っている内にガスガスと大きな音を立てて、誰かが階段を上がってくる。まさか……。と思いながら振り向けば、お向かいのコルニクスさんがいた。


「な、なんですか!? 急に人の家に上がり込んで」

「てめぇ! それ所じゃねーだろうが!?」

「は?」

 私が唖然としていると、魔道具屋の店主はテーブルの上に置かれている植木鉢を一瞥した。

「そこにあるのは『魔力の実』の苗だな?」

「あ、それは……」

「フン。俺の目に狂いはないんだ。ウチから見た時は、まさかと思ったが間違いねぇ……。そいつは間違いなく魔力の実の苗だ」

「うっ……。だとしたら悪いんですか? ほ、法律に触れるとでも言うんですか!?」

 鋭い眼光でにらみつけられ、これはどうやら誤魔化せないと観念する。しかし『魔力の実』を育てること自体は、別に禁止されている行為では無いはず。

 なにしろ、王立学園で普通に先生から見本として配られるような品だ。間違っても栽培が禁止されている、非合法のヤバイ草とは違うはずだ。そう思いながらキッと黒髪の店主を睨み返せば、コルニクスさんは口角を上げた。

「いいや。法律に触れるわけでもねぇ。……むしろ良い」

「へ?」

「魔力の実は流通量が少ないからな……。ここで育ててるってなら好都合だ」

「好都合?」
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