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 私や沖原沙織さんは絶句した。飼われていた北海道犬が三匹死亡しただけでも痛々しいことだと思っていたのに、何の罪もない鳥獣たちが私たちの知らない所で苦しみながら死んでいたなんて。しかし、私は実際に鹿の死骸近くで死んでいるカラスやオオワシを見ている。これは事実なのだ。

 兄はテーブルの上に複数置かれている写真や書類の中から、オオワシと犬のレントゲン写真に浮かび上がっている金属片を流し目で見た後、白いハンカチの上にある黒灰色の金属片に視線を向けた。

「銃弾と一口に言っても、ライフル用の銃弾、散弾銃用の弾、そして銅弾や鉄弾もある。さらにロシア製等、どの国で生産されたかは調べれば分かるし、所持している猟銃の旋条痕を見れば使用した銃弾の特定もかなり絞られるだろう。この辺りで新鮮なエゾ鹿肉料理を出すのはここだけだ」

「それって……」

 当初から兄はこのペンションで鹿肉料理を出すことからハンターでもある金森さんを疑っていた。兄に指摘された金森さんは、せわしなく視線をさ迷わせて動揺を隠せない様子だ。

「なぁ金森、おまえはよく知っていただろう? おまえが狩猟で使用していたのが鉛弾なんだから」

「実紀夫さん。本当に? まさか、こうなるのが分かって……?」

「そ、そんなわけないだろう! 誤解だ! 沙織、これは不幸な事故だ! 君の実家で産まれた犬がこんなことになるなんて思ってもみなかったんだ。僕がそんなことをしようとする訳がないだろう!?」

「しかし、北海道で鉛弾は禁止されている。金森、おまえもハンターの端くれなら知らない訳じゃないだろう?」

「それは……」

 兄に問われた金森さんは言葉に詰まった。二人のやり取りをみた沖原沙織さんは呆然とした表情だ。

「真宮くん、そうなの? 鉛弾は禁止されてるって?」

「ああ。以前から、北海道では天然記念物であると共に国内希少野生動物として有名なオオワシやオジロワシが、ハンターによって射殺されたエゾ鹿の死肉を食べることにより、一緒に鉛弾を飲み込んでしまい死亡するという事象が後を絶たなかった。平成26年からは鉛弾の使用だけでなく所持すら禁止されている。金森の所持している猟銃と弾丸を調べれば、禁止事項に抵触していたのか、すぐに分かるはずだ」

「実紀夫さん、やっぱりあなた……」

「ち、違う! 僕は悪くない! 鉛弾は今も、日本国内で普通に販売されている物なんだ! 鉛弾の使用もハンターなら、多くの者がやってることだ! 違法に入手してる訳じゃないんだから使っても問題ない!」

「大ありだ! 北海道では鉛弾の使用は禁止されていると言っただろう! 実際、この鉛弾が出てきたエゾ鹿の死骸のすぐ傍で衰弱していたオオワシが死んだのを俺はこの目で見ている。あのオオワシの胃袋にはエゾ鹿の死肉と一緒に鉛弾も入っていたんだからな!」

「くっ……」
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