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変わっていく髪の色
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私の髪の色は、日を追うごとにピンク色が薄くなっていきます。
「だいぶお腹が大きくなったな」
イジュは、自宅の椅子に座ってボコンと突き出たお腹をさする私の姿を見て、目を細めています。
「ええ。お腹の中で大騒ぎしてるわよ、この子」
「え?」
「ほら、ココよ。触ってみて」
「……ホントだぁ」
私のお腹を触って、胎児の動きを自分の手のひらで感じたイジュの表情が、キラキラと輝いています。
本当にかわいい男性です。
私はイジュの大柄で精悍な見た目とのギャップに、日々やられています。
毎日のように愛しさが募っていくので困ってしまいます。
村の人たちの様子もだいぶ変わってきました。
私が男爵になったり、領主になったり、村長になったりといった肩書のこともそうですが。
髪色の変化が何をもたらすのか、改めて感じるところがあったようです。
この村から聖女が消えます。
再び結界が緩み、魔獣が出ても対処してくれる者はいません。
その事実の重さに、ようやく気付いたみたいです。
結局、村長とその娘であるメアリーの行方は分からず、彼らの取り巻きたちは立場をなくしていきました。
メアリーの取り巻きだったアンヌとレナは、売られるようにして裕福な商家へ嫁いでいきました。
裕福な商家は嫁入り先としては良いのでしょうが、アンヌは子持ち中年の後妻ですし、レナの夫は相当年上ということで好条件とは言えないようです。
ほかの、村長やメアリーに媚を売っていた人たちも、なんとなく肩身の狭い思いをしているように見えます。
私は取り立てて思うところはないのですが、なんとなく自分達で感じるところはあるのでしょう。
自業自得なのでフォローはしません。
いまの私の髪色は、少しピンクがかった金色です。
聖力も衰えてきましたので、もう魔獣と戦うのは無理だと思います。
ですが、クヌギ村から聖女が消えるかどうかは謎です。
私のお腹にいる子は、おそらく聖力を持っています。
なんとなくそう感じるのです。
ですが、今は内緒にしておきましょう。
聖女という存在が身近でなくなる恐怖を、少しは味わえばいいんじゃない⁉
と思っているからです。
もしもお腹の子が聖女であったなら、私よりも尊重されて欲しい。
幸せであって欲しい。
そのためには村の人たちに、ちょっとしたスリルを与えることもやぶさかではありません。
「男の子かな? 女の子かな?」
「どちらかしらね?」
「アマリリスには、分かってるんじゃないの? なんといっても聖女さまなんだし」
「ふふふ。聖女の力は万能ではないわ。それに、私の力は薄れてきているもの」
「でも、オレにとってアマリリスは永遠に聖女だよ」
そう言いながら、イジュが私の手をとって、その甲にキスを落としました。
……こんなキザな真似、誰に教わったのでしょうか?
でも私が永遠に聖女なのだとしたら。
「早く出ておいで、おチビちゃん。パパといっぱい遊ぼうね」
キラキラした笑顔で私のお腹に耳をあてている、この愛しい人が幸せでありますように、と祈り続けることでしょう。
「だいぶお腹が大きくなったな」
イジュは、自宅の椅子に座ってボコンと突き出たお腹をさする私の姿を見て、目を細めています。
「ええ。お腹の中で大騒ぎしてるわよ、この子」
「え?」
「ほら、ココよ。触ってみて」
「……ホントだぁ」
私のお腹を触って、胎児の動きを自分の手のひらで感じたイジュの表情が、キラキラと輝いています。
本当にかわいい男性です。
私はイジュの大柄で精悍な見た目とのギャップに、日々やられています。
毎日のように愛しさが募っていくので困ってしまいます。
村の人たちの様子もだいぶ変わってきました。
私が男爵になったり、領主になったり、村長になったりといった肩書のこともそうですが。
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この村から聖女が消えます。
再び結界が緩み、魔獣が出ても対処してくれる者はいません。
その事実の重さに、ようやく気付いたみたいです。
結局、村長とその娘であるメアリーの行方は分からず、彼らの取り巻きたちは立場をなくしていきました。
メアリーの取り巻きだったアンヌとレナは、売られるようにして裕福な商家へ嫁いでいきました。
裕福な商家は嫁入り先としては良いのでしょうが、アンヌは子持ち中年の後妻ですし、レナの夫は相当年上ということで好条件とは言えないようです。
ほかの、村長やメアリーに媚を売っていた人たちも、なんとなく肩身の狭い思いをしているように見えます。
私は取り立てて思うところはないのですが、なんとなく自分達で感じるところはあるのでしょう。
自業自得なのでフォローはしません。
いまの私の髪色は、少しピンクがかった金色です。
聖力も衰えてきましたので、もう魔獣と戦うのは無理だと思います。
ですが、クヌギ村から聖女が消えるかどうかは謎です。
私のお腹にいる子は、おそらく聖力を持っています。
なんとなくそう感じるのです。
ですが、今は内緒にしておきましょう。
聖女という存在が身近でなくなる恐怖を、少しは味わえばいいんじゃない⁉
と思っているからです。
もしもお腹の子が聖女であったなら、私よりも尊重されて欲しい。
幸せであって欲しい。
そのためには村の人たちに、ちょっとしたスリルを与えることもやぶさかではありません。
「男の子かな? 女の子かな?」
「どちらかしらね?」
「アマリリスには、分かってるんじゃないの? なんといっても聖女さまなんだし」
「ふふふ。聖女の力は万能ではないわ。それに、私の力は薄れてきているもの」
「でも、オレにとってアマリリスは永遠に聖女だよ」
そう言いながら、イジュが私の手をとって、その甲にキスを落としました。
……こんなキザな真似、誰に教わったのでしょうか?
でも私が永遠に聖女なのだとしたら。
「早く出ておいで、おチビちゃん。パパといっぱい遊ぼうね」
キラキラした笑顔で私のお腹に耳をあてている、この愛しい人が幸せでありますように、と祈り続けることでしょう。
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