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姫君のひみつ 三
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「そんなハズはないわ。うそよ」
彩姫は言いました。
「魔法は自然のエネルギー。ただそれだけのもの。道具の力を借りて使うことはできるけれど、人間の力では操れないって、子供でも知っていることよ」
「そんなことはないよ。ほら、ごらん」
老婆は足元に転がっていた枯れた花を拾い上げると、瑞々しく咲かせて見せた。
「これが人の操る魔法だよ」
「まぁ」
彩姫は驚きました。
自然のエネルギーである魔法を様々な器に入れて使うのは見たことがあるけれど、人が直接操ったところを見たのは初めてだったからです。
「これが魔法……」
それに、枯れた花を蘇らせるところなど見たことはありません。
カラカラに乾いた国である貧租の国で枯れた花は嫌というほどみたけれど、蘇るところなど見たことはありませんでした。
「これは……魔法というよりも、マジックよ。タネも仕掛けもある、マジックだわ」
「そうだね。姫は賢いね。だが、半分合っていて、半分は間違いだ。魔法もマジックのように人の意思で操ることができるのだ」
「まぁ。でも、おばあさま。魔法の力を操れたとして、それにどんな意味があるのですか?」
「やはり姫は賢いね。自然エネルギーとして使う魔法は、無駄が多いのだよ。器に入れて道具を使って利用する方法では、持っている力の何割かを使うことしかできない。それは産出量の少ない我が国にとって、とても不利なことなのだよ。」
「無駄……不利……」
「姫には、まだ難しいかもしれないけれど。手持ちの材料が少ないのなら、それを無駄なく使い切ることが戦略として重要。少ないものを少ないまま使おうとすれば、多いものを持っている国には、とても敵わない」
「そうなのですか」
「姫。ソナタもそのうち、知ることになる。自分で選択することに、どれほどの価値があるのかを。その価値を知った時。ソナタが自分で未来を選べるようにするために。魔法の力を操る術が役立つのじゃ」
「そうなのですか……」
「ふふふ。まだピンと来ていないね。無理もない。ソナタは、ソナタが価値ある者だから自分を大切に、と、教えられているのだろう? 国の宝だからと」
「はい」
「それの本当の意味を知る時。……その時になって動こうと思っても、何もできやしない。今から準備しておくんだよ。ソナタが幸せになるためには、自分で選んで賢く動かなければダメなのじゃ」
「そう、なのですか?」
「ワタシが魔法の操り方を教えてあげよう。ひっそりと、誰にも気付かれないようにココにおいで。魔法が使えるようにしてあげよう」
チロリチロリと揺れる光に浮かび上がるシワシワの顔は、必要以上に影多く怪しげで。
警戒しなければと感じる反面、その瞳の輝きには信頼に値する何かが潜んでいるようで。
彩姫は迷いつつも、老婆を見上げてコクンと大きく頷いたのでした。
彩姫は言いました。
「魔法は自然のエネルギー。ただそれだけのもの。道具の力を借りて使うことはできるけれど、人間の力では操れないって、子供でも知っていることよ」
「そんなことはないよ。ほら、ごらん」
老婆は足元に転がっていた枯れた花を拾い上げると、瑞々しく咲かせて見せた。
「これが人の操る魔法だよ」
「まぁ」
彩姫は驚きました。
自然のエネルギーである魔法を様々な器に入れて使うのは見たことがあるけれど、人が直接操ったところを見たのは初めてだったからです。
「これが魔法……」
それに、枯れた花を蘇らせるところなど見たことはありません。
カラカラに乾いた国である貧租の国で枯れた花は嫌というほどみたけれど、蘇るところなど見たことはありませんでした。
「これは……魔法というよりも、マジックよ。タネも仕掛けもある、マジックだわ」
「そうだね。姫は賢いね。だが、半分合っていて、半分は間違いだ。魔法もマジックのように人の意思で操ることができるのだ」
「まぁ。でも、おばあさま。魔法の力を操れたとして、それにどんな意味があるのですか?」
「やはり姫は賢いね。自然エネルギーとして使う魔法は、無駄が多いのだよ。器に入れて道具を使って利用する方法では、持っている力の何割かを使うことしかできない。それは産出量の少ない我が国にとって、とても不利なことなのだよ。」
「無駄……不利……」
「姫には、まだ難しいかもしれないけれど。手持ちの材料が少ないのなら、それを無駄なく使い切ることが戦略として重要。少ないものを少ないまま使おうとすれば、多いものを持っている国には、とても敵わない」
「そうなのですか」
「姫。ソナタもそのうち、知ることになる。自分で選択することに、どれほどの価値があるのかを。その価値を知った時。ソナタが自分で未来を選べるようにするために。魔法の力を操る術が役立つのじゃ」
「そうなのですか……」
「ふふふ。まだピンと来ていないね。無理もない。ソナタは、ソナタが価値ある者だから自分を大切に、と、教えられているのだろう? 国の宝だからと」
「はい」
「それの本当の意味を知る時。……その時になって動こうと思っても、何もできやしない。今から準備しておくんだよ。ソナタが幸せになるためには、自分で選んで賢く動かなければダメなのじゃ」
「そう、なのですか?」
「ワタシが魔法の操り方を教えてあげよう。ひっそりと、誰にも気付かれないようにココにおいで。魔法が使えるようにしてあげよう」
チロリチロリと揺れる光に浮かび上がるシワシワの顔は、必要以上に影多く怪しげで。
警戒しなければと感じる反面、その瞳の輝きには信頼に値する何かが潜んでいるようで。
彩姫は迷いつつも、老婆を見上げてコクンと大きく頷いたのでした。
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