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王太子夫妻の蜜月
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「ペドロさま、私……幸せですわ」
「ん。そうか」
窓の外を眺めながらペドロに寄り添うミラは、王宮の豪華な私室で幸せを噛みしめていた。
窓の外には夜闇が広がっていたが、そこには美しく手入れの行き届いだ庭園がある。
ポツリポツリと置かれた灯りに浮かび上がる庭園は、華やかなだけではない妖しい魅力に満ちている。
ロマンチックではあるが、子どもの時間ではないことを伝えていた。
ミラのまとっているペドロの色である赤いドレスは、男爵令嬢だった頃とは比べ物にならないくらい上質なものだ。
手入れの行き届いたピンク色の髪は、緩く整えた髪型にしても、だらしなさとは無縁とばかりに輝いている。
赤い瞳を見つめてくる金色の瞳は、結婚後も変わらずに熱を持っていて、愛されている実感があった。
金の魔法をかけられたミラは、シェリダン侯爵家の思惑通り、王太子の妻となった。
(シェリダン侯爵さまの読みは正しかった。私も苦労してペドロに取り入った甲斐があったというものだわ)
第一王子ペドロにより、王家独自の魔法、唯一の相手にかける「金の魔法」をかけられたミラへの扱いは一転した。
(半信半疑だったけれど、シェリダン公爵さまの言う通りにしてよかったわ)
男爵家に生まれたミラは、その美しさを見込まれて、早くからシェリダン侯爵により王妃教育に近いものを受けていた。
男爵令嬢であるミラにとっては、ありがた迷惑な側面のあった厳しい教育であったが、それが今の生活にはとても役立っている。
(私はペドロを愛している。愛も身分も手に入れたのよ。これ以上の幸せはないわ)
計画通りに、アリシア・ダナン侯爵令嬢を追い落とした後は、順調すぎるほど物事は進んだ。
ミラ・カリアス男爵令嬢からミラ・シェリダン侯爵令嬢となった後は、特に反対されることもなくスムーズに婚姻の儀が執り行われた。
(これでダナン侯爵家よりもシェリダン公爵家の方が力を持つことになるし。私にとっても、後ろ盾が強固になるのはメリットがあるから歓迎だわ。後は、子どもを授かるだけ)
現在、ペドロは王太子のままだ。
跡継ぎとなる子どもが生まれた後に、王位を継ぐ手筈となっている。
ミラは自分を熱く見つめている金の瞳に、華やかな笑みを向けた。
若く美しい彼女は、性的にも充分に魅力的だ。
ペドロは唾を呑み込んで、喉をゴクリと鳴らした。
「ミラ……」
かすれる声で名を呼ばれ、ミラは愛しい人の逞しい腕に囚われた。
(ペドロは私に夢中。これなら、子どもができるのも時間の問題ね。何の憂いもないわ)
ミラは喜びの絶頂にいた。
「ん。そうか」
窓の外を眺めながらペドロに寄り添うミラは、王宮の豪華な私室で幸せを噛みしめていた。
窓の外には夜闇が広がっていたが、そこには美しく手入れの行き届いだ庭園がある。
ポツリポツリと置かれた灯りに浮かび上がる庭園は、華やかなだけではない妖しい魅力に満ちている。
ロマンチックではあるが、子どもの時間ではないことを伝えていた。
ミラのまとっているペドロの色である赤いドレスは、男爵令嬢だった頃とは比べ物にならないくらい上質なものだ。
手入れの行き届いたピンク色の髪は、緩く整えた髪型にしても、だらしなさとは無縁とばかりに輝いている。
赤い瞳を見つめてくる金色の瞳は、結婚後も変わらずに熱を持っていて、愛されている実感があった。
金の魔法をかけられたミラは、シェリダン侯爵家の思惑通り、王太子の妻となった。
(シェリダン侯爵さまの読みは正しかった。私も苦労してペドロに取り入った甲斐があったというものだわ)
第一王子ペドロにより、王家独自の魔法、唯一の相手にかける「金の魔法」をかけられたミラへの扱いは一転した。
(半信半疑だったけれど、シェリダン公爵さまの言う通りにしてよかったわ)
男爵家に生まれたミラは、その美しさを見込まれて、早くからシェリダン侯爵により王妃教育に近いものを受けていた。
男爵令嬢であるミラにとっては、ありがた迷惑な側面のあった厳しい教育であったが、それが今の生活にはとても役立っている。
(私はペドロを愛している。愛も身分も手に入れたのよ。これ以上の幸せはないわ)
計画通りに、アリシア・ダナン侯爵令嬢を追い落とした後は、順調すぎるほど物事は進んだ。
ミラ・カリアス男爵令嬢からミラ・シェリダン侯爵令嬢となった後は、特に反対されることもなくスムーズに婚姻の儀が執り行われた。
(これでダナン侯爵家よりもシェリダン公爵家の方が力を持つことになるし。私にとっても、後ろ盾が強固になるのはメリットがあるから歓迎だわ。後は、子どもを授かるだけ)
現在、ペドロは王太子のままだ。
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若く美しい彼女は、性的にも充分に魅力的だ。
ペドロは唾を呑み込んで、喉をゴクリと鳴らした。
「ミラ……」
かすれる声で名を呼ばれ、ミラは愛しい人の逞しい腕に囚われた。
(ペドロは私に夢中。これなら、子どもができるのも時間の問題ね。何の憂いもないわ)
ミラは喜びの絶頂にいた。
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