14 / 40
エセルの訪問
しおりを挟む
研究棟の一室。
その入り口に立っていたのは近衛兵である赤毛の細マッチョ美女、エセル・オズワルド伯爵令嬢だった。
「あら、エセルじゃない。珍しいわね? 何の用かしら?」
「やぁ、レイ。皆さんも、こんばんは。ちょっと相談したいことがあってね。いいかな?」
「あら? 本当に珍しいわね」
「ちょっと内密に話したい事があってね……」
「ああ、それなら。ちょっとコッチで話しましょう」
トラントは魔法で別の部屋に繋がるドアを出した。
「ちょっと行ってくるわね」
「ゴメンね。この人、ちょっと借りるわ」
ヒラヒラと手を振りながら、トラントとエセルはドアの向こうへと消えていった。
「ん……何かあったかな?」
ヒラヒラと振り返していた手を止めてアルバスは思案するように眉をひそめた。
「そうかもしれませんね、アルバス先輩。噂か何か聞いてない? セイデス」
その隣で同じようにヒラヒラと振っていたトレーシーは、セイデスを振り返って問いかけた。
「オレは何も知らないよ」
「キミは情報通のような気がしていたけど、違うの?」
「やだなぁ、アルバスさま。オレはタダの文官ですよ? 情報なんて……」
「そうそう。セイデスは計算が得意なだけで、特に情報通というわけではありませんよ」
「えっ? そうなの? なんとなく情報通な気がしていたけど……」
「いやいや。オレは別に噂話とか得意じゃないですよ」
「そうなんだ」
「それよりも、ねぇ? あの二人、気になりませんか?」
「何が?」
「あー、わかるー! トレーシー君、気になるよね?」
「ですよね、ですよね。あの二人、幼馴染なんですよね? しかも、お似合いじゃないですか?」
「は?」
「わかる、わかるっ! トレーシー君、あの二人、なんか怪しいよね?」
「きゃー。アルバス先輩も、そう思います?」
「……」
「うんうん。部長、婚約者いないし。案外、そういう事かも~」
「きゃー。やっぱり? やっぱり、そうですかー!」
「……」
「キリッとしたエセルさまと、うちの部長を。頭の中で並べてみる」
「うんうん。お似合い、お似合い」
「さっきも自然な感じで良い雰囲気だったし。お似合いなのにねぇ。案外、本人たちは気付いてなかったりして」
「うんうん。気付いてないかも」
「……」
(女子かっ!? いや、トレーシーは女子だった。アルバスさまって、こんなノリなんだ……氷の貴公子、なんて噂もあるのに。いや、氷の美貌、だっけ? ああ、どっちでもいいー。気付け。アンタ達も同じだ、気付け)
「んっ、リンゴ一個丸ごとだと少し多いなぁ……。トレーシー君、リンゴ一切れ食べるかい?」
「下さい」
皿を差し出すトレーシーを見て、セイデスは呟く。
「本人たちは意外と分かってなかったりするんだよなぁ……」
「んっ? セイデス、何か言った?」
「えっ? なに? セイデス君もリンゴ、食べるかい?」
トレーシーの皿に一切れリンゴを落としたアルバスは、セイデスの方を見て聞く。
「いえ、結構です。オレは丸かじり派なんで」
「そうなんだ。歯が丈夫なんだね」
「私と同じ顔をしてますが、セイデスは意外とワイルドなんですよ」
「えっ? トレーシー君も、まぁまぁワイルドでは?」
「えっ?」
「えっ?」
「……」
(ナニを見せられているんだろうな、オレは……)
などと思いつつセイデスはゲンナリした。
その入り口に立っていたのは近衛兵である赤毛の細マッチョ美女、エセル・オズワルド伯爵令嬢だった。
「あら、エセルじゃない。珍しいわね? 何の用かしら?」
「やぁ、レイ。皆さんも、こんばんは。ちょっと相談したいことがあってね。いいかな?」
「あら? 本当に珍しいわね」
「ちょっと内密に話したい事があってね……」
「ああ、それなら。ちょっとコッチで話しましょう」
トラントは魔法で別の部屋に繋がるドアを出した。
「ちょっと行ってくるわね」
「ゴメンね。この人、ちょっと借りるわ」
ヒラヒラと手を振りながら、トラントとエセルはドアの向こうへと消えていった。
「ん……何かあったかな?」
ヒラヒラと振り返していた手を止めてアルバスは思案するように眉をひそめた。
「そうかもしれませんね、アルバス先輩。噂か何か聞いてない? セイデス」
その隣で同じようにヒラヒラと振っていたトレーシーは、セイデスを振り返って問いかけた。
「オレは何も知らないよ」
「キミは情報通のような気がしていたけど、違うの?」
「やだなぁ、アルバスさま。オレはタダの文官ですよ? 情報なんて……」
「そうそう。セイデスは計算が得意なだけで、特に情報通というわけではありませんよ」
「えっ? そうなの? なんとなく情報通な気がしていたけど……」
「いやいや。オレは別に噂話とか得意じゃないですよ」
「そうなんだ」
「それよりも、ねぇ? あの二人、気になりませんか?」
「何が?」
「あー、わかるー! トレーシー君、気になるよね?」
「ですよね、ですよね。あの二人、幼馴染なんですよね? しかも、お似合いじゃないですか?」
「は?」
「わかる、わかるっ! トレーシー君、あの二人、なんか怪しいよね?」
「きゃー。アルバス先輩も、そう思います?」
「……」
「うんうん。部長、婚約者いないし。案外、そういう事かも~」
「きゃー。やっぱり? やっぱり、そうですかー!」
「……」
「キリッとしたエセルさまと、うちの部長を。頭の中で並べてみる」
「うんうん。お似合い、お似合い」
「さっきも自然な感じで良い雰囲気だったし。お似合いなのにねぇ。案外、本人たちは気付いてなかったりして」
「うんうん。気付いてないかも」
「……」
(女子かっ!? いや、トレーシーは女子だった。アルバスさまって、こんなノリなんだ……氷の貴公子、なんて噂もあるのに。いや、氷の美貌、だっけ? ああ、どっちでもいいー。気付け。アンタ達も同じだ、気付け)
「んっ、リンゴ一個丸ごとだと少し多いなぁ……。トレーシー君、リンゴ一切れ食べるかい?」
「下さい」
皿を差し出すトレーシーを見て、セイデスは呟く。
「本人たちは意外と分かってなかったりするんだよなぁ……」
「んっ? セイデス、何か言った?」
「えっ? なに? セイデス君もリンゴ、食べるかい?」
トレーシーの皿に一切れリンゴを落としたアルバスは、セイデスの方を見て聞く。
「いえ、結構です。オレは丸かじり派なんで」
「そうなんだ。歯が丈夫なんだね」
「私と同じ顔をしてますが、セイデスは意外とワイルドなんですよ」
「えっ? トレーシー君も、まぁまぁワイルドでは?」
「えっ?」
「えっ?」
「……」
(ナニを見せられているんだろうな、オレは……)
などと思いつつセイデスはゲンナリした。
6
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください
Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象
・我儘
・自己中心
・人のものを盗る
・楽観的
・・・・だったはず。
気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。
義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。
*大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。
この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。
4/22 完結予定
〜attention〜
*誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい
*話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる