復讐の螺旋 

桐谷 碧

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第二章

第二十四話 蒲田 総一朗

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「正当防衛だって、人聞き悪いなぁ」

 池袋駅北口にあるスナック『アミン』で蒲田総一朗はこの日だけで三回目になる話を繰り返し披露していた。

「でも実刑食らったんでしょ?」
 スマートフォンを操作しながら興味津々で聞いてくる五十絡みのママは今どき珍しいソバージュヘアをしている、総一朗の行動範囲である池袋のスナック内では突如現れなくなった彼の話題で一時は盛り上がったらしい。

「結局十三年も塀の中だよ」

 一之瀬咲と出会ったのは珍しく赤羽まで遠征した時に入ったスナック『納言』だった、友達の手伝いでたまたまその日入っていた咲を見て総一朗は一目惚れした。

 スラリと細身の体には似つかわしくない豊満なバストがワンピース越しにもわかる、パッチリと二重の瞳は少しだけ釣っていて猫科の動物を連想させた、白い肌は陶器のように美しく二十七歳という年齢よりも更に若く見えた。

「運命の人に出会えたかも知れない」
 総一朗はいつもの様に軽口を叩くと咲は嫌な顔もせずに微笑んだ、近くで聞いていたママは「この男には気を付けなさいよ」と警告していたがいつもの事だ。

 インフルエンザで休んでいる女のピンチヒッターで一週間だけ、以前お世話になったママのお願いを聞いて出勤しているのだという咲は、今日を入れてあと三日しか出勤しないらしい。
 総一朗はこの日から三日間スナック『納言』に入り浸った、オープンからラストまで咲をマークして自分をアピールしつつ咲の生活状況を探った。

 二十歳で結婚したという咲はすでに小学生になる娘がいた、多少がっかりしたが自分にも小学生の息子がいるという事で話は盛り上がった、その女癖の悪さ故にすでにバツイチだった総一朗はなんとかしてこの女を物にしようと、これまで培ってきた能力を総動員して口説きに掛かったが、咲は一向に落ちる様子がなかった。

 最終日に土下座寸前までお願いしてやっとアフターに少しだけ付き合ってくれるという話まで漕ぎ着けた、天然ジゴロの総一朗にとってはこれ程までに女性を口説くのに手こずったのは始めての経験だった。 

 午前三時にお店を上がるとそのまま近くのバーに入る、誰も客がいない店内のカウンターに腰掛けるとカクテルを二つ適当に作るようバーテンにお願いした。
 この店には昨日下見で訪れている、もしアフターに誘えた場合に朝まで飲める場所を探していたのだ。こういった細かい努力も総一朗が女を口説ける所以だった。

 さらにバーテンにはもし次に女連れで来店した際には飲みやすく、かつ大量のアルコールが入ったカクテルを作るように指示してあった、もちろん自分の分はアルコール抜きだ。

 二人の前にブルーに輝く液体が置かれると乾杯をして一口飲んだ、ただ甘いだけの液体が喉を通過する。

「あっすごく美味しいです」
 咲はそう言うとほんの二口でそのカクテルを飲み干した。

「同じものを」
 バーテンに注文すると「ちょっと失礼します」と行ってトイレに向かった。

「おい、ちゃんとアルコール入ってんだろうな?」
 カウンターに身を乗り出して確認する。
「ラムが結構やばいくらい入ってますよ」

 咲はかなり酒豪なのかもしれない、中々手こずりそうだと考えているとトイレから咲が戻ってくる。
 目の前に置かれたカクテルを再び口にする。

「もしかしてお酒は強いタイプ?」
 総一朗は遠慮気味に質問した。

「いえ、人並みですけど、久しぶりに飲んだから美味しくて」 
 娘が生まれたばかりの頃は家事と育児で忙しくてしばらく酒を飲んでいなかったらしい、小学生になって手も掛からなくなったが飲む機会も友人もこの頃には疎遠になっていたそうだ。

 一時間後、咲はこのカクテルを六杯も飲んで潰れてしまった、カウンターに突っ伏した彼女をバーテンは満足そうに眺めている。

「ありがとう、じゃあ会計頼むよ」
「いえいえ、またの機会をお待ちしております」
 バーテンに一万円札を渡すと釣りはいらないと言って店を後にした、背中には寝息を立てて眠る咲がいる。

 本来なら正攻法で口説いて堂々とホテルに連れ込みたい所だったが今回は失敗は許されない、これ程の女にはこれから先も一生出会えないかもしれない。

 咲をおぶったままバーからほど近いラブホテルのチェックインを済ませると部屋の鍵を受け取ってエレベーターに乗り込んだ、三〇三号室の鉄の扉を開くと安物のソファにデカいベットが中央に鎮座している、咲を優しくベットの上に寝かせるとそのままキスをした。

「んっ」
 無理やり舌を入れると少しだけ反応したが起きる様子はない、ワンピースを脱がせると予想以上に大きな胸が顕になった、仰向けになっているにも関わらず大きな胸は崩れること無く天空に向かってそびえ立っている、総一朗は夢中になって口に含むとがむしゃらに愛撫した、そのセックステクニックでも天性の技術を持つ総一朗は寝ているにも関わらず咲の陰部を濡らすことに成功した。

 濡れた陰部を確認して満足した総一朗は咲に侵入していった、ゆっくりと、しかし確実に。途中「んっ」と色っぽい声が漏れたが目が開くことはなかった。 

 咲の中は総一朗が想像した以上に素晴らしい場所だった、今まで挿ってきた女達が夢幻であったかのように。

 あまりの気持ちよさに我慢できなくなった総一朗は腰を激しく振り始めた、すると流石に咲も目を覚ます。

「ん――――――――――――――!」

 総一朗と目が合うと驚きの表情で目をカッと見開いた、それでも構わずに腰を振るスピードを上げると次第に喘ぎ声に変わっていく。

 総一朗は夢中になって腰を振り続けた、中で射精しながら一度も離れる事無く四度も果てた、行為が終わるとやっと咲から離れて隣にぐったりと横になる。

「ごめんなさい、あたし……」
 そう言って下着と洋服をかき集めると急いで服を着始めた、あっという間に着替え終わると「帰ります」と言ってラブホテルを後にしたがすでに賢者タイムに入っている総一朗は黙って咲の帰りを見送った――。
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