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第十八話 美波、バズる。

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「海斗くんはムラムラしないの?」
 その質問に海斗くんは曖昧な返事しか返してこなかった、腑に落ちない、若い男女が、いや海斗くんはそこまで若くもないか。とにかく男女が一つ屋根の下で暮らしているというのに何も起きないのは異常ではないか。女として魅力がない――。シャツの胸元からペタンコの胸を確認する、生きていればあるいはもう少し成長したのかも知れないが。
 全身鏡の前でポーズをとる、寝癖がついてボサボサの髪、よれたTシャツにスウェットは海斗くんから借りた部屋着だった。
「はぁ……」
 これじゃあ色気もクソもない、私服はオーバーオールしか持ってないし、よし、服を買おう。海斗くんがムラムラするようなセクシーな服だ。
「海斗くーん、ちょっと出かけてくるねー」
 書斎の扉越しに声をかけると「はーいよ」と返事が返ってきた、次に会う時が楽しみね、心の中で一人ゴチるとまずは美容室に向かった。
「今日はどうされますか?」
 少しチャラいけど年齢は三十前後、丁度いい。
「お兄さんは、どんな髪型がセクシー、いや、ムラムラしますか」
 単刀直入に尋ねると、茶色い毛先を遊ばせた美容師のお兄さんは顎に手を当てて鏡越しに悩んでいる。
「人それぞれかと思いますけど」
 何の解決にもならない答えが返ってきた事に落胆した。
「私って子供っぽくないですか」
「そんな事ないと思いますけど、おいくつですか?」
 いくつか分からないのに、そんな事ないってどうして言えるのだろうか、この美容師は失敗だったか。
「二十四歳です」
「え、二十四歳、失礼しました十代かと、確かにお若いですね」
 まあ、本当は十七歳なんだから彼は何も悪くない。
「もう少し大人っぽく見えるようにしたいんですよ」
 せめて二十代に見えるように、と付け加えた。
「なるほど、お姉さんこの黒髪ロングでどうしてもアニメ美少女感がでちゃうんですよね、少し明るくしたり、黒髪だったら顎のラインでボブにしてシャープな感じにすると大人の女って感じになるかと思いますよ」
 なるほど、やっと実践的なアドバイスが出てきた事に満足した、協議の結果、思い切ってバッサリと切ることにした、どうせ来年になればまた元通りに戻っているのだから。
「こんな感じでどうでしょうか?」
 美容師のお兄さんは二面鏡を広げて後ろの出来上がりを見せてくれる、白いうなじが出ていて中々セクシーだった、思ったよりも良い出来に満足してお店を出るとその足で百貨店に向かった、ちょうど良く場所は銀座なので大人の服装にあり付けそうだ。
 
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