女神の歌

和希

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一曲目  出会いの歌

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 春先だと言うのに、連日続く曇り空。
 楠 和紗「クスノキ カズサ」は、愛犬の「クリス」一緒にいつもの散歩道の堤防沿いの川原を歩いていると、何処からかギターを奏でる音が聞こえた。
 いつも、なんの曲弾いているのだろうか?
 だが、今日の音は、心なしか元気がない
「また、あの子かな」

そんなことを思っていると、座ってギターを弾いてる少女が声をかけて来た。

「こんにちは」
いつも笑顔であいさつしてくるポニーテルの女の子の様子がいつもと違っていた。
とても、落ち込んでいる様に見えた。

 「こんにちは、どうしたの?元気がないみたいだけど」
 いつもは、素道りするのだが、気になって声をかけてしまった。

「はい、私才能が無いんでしょうか?どんなに練習しても上手にならなくて、譜面道理に弾けなのです。」
 しょんぼりする少女

「ふう~~~ん、どんな曲を練習しているの?」

ぱっと、表情が明るくなって 
「カノンです」と答えた。
「えっ、カノン」
「はい、カノンです。お兄ちゃんがカノンが弾けたらいろんな曲が弾けるようになるって言っていたのっです。」
 コード譜を見せてきた。

 和紗は戸惑った。
 別に、カノンが分からない訳ではないし、「カノンが弾けたら」と言うのは、「カノンコード」のことだろうとも予想できる。
 だが、この子の弾いていたのが明らかにカノンではない。

「ちょっと、ギター見せて」
と言うと、立ち上がっておずおずギターギターを貸してくれた。

 ギターの何処にも名前ない、ノーブランドかな
「げっ、弦錆び錆びだし、チューニング合ってないし、これじぁ、ちゃんとした音でないよ。」
「ええぇぇーーどぅどうしたら??」

あたふた戸惑う女の子に、簡単にチューニングをして返した。

「これで弾いてみて」
「はい」と言ってチャラチャラ弾き始めた。

 おっ、それっぽい音になってる。

「できたのです、ありがとうございます。」
 笑顔でお礼を言ってきた。
「どういたしまして、でも、一回メンテナンスしたほうがいいよ」
 また、しょんぼりすると 
「どうすればいいんでしょうか?」
「ギターを扱ってる楽器屋さんにもっていけばやってくれると思うよ」
表情が明るくなった。
「でも、この辺りに楽器屋無いんだよなーー」
「そうなんですか?できないんですか?」
瞳をウルウルさせ泣きそうな表情をしている。
 しまった、また落ち込んでしまった。
どうしょう
どうしょう
どうしましょう
そうだ
「うちに持ってきたらやってあげるから泣かないで」
「ありがとうございます。私、奏[かなで]っていいます。お願いします。」
満面の笑みで、お辞儀をしてきた。

「僕は、和紗よろしくね、奏ちゃん」
「よろしくお願いします。」


 あっ、しまったどうしようクリス。

 愛犬は、大欠伸をしていた。

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