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第三章:ウルクルクス討伐作戦~世界最強・魔神具の影~
+++第二十七・一話:男の正体
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人間は変化を嫌う生き物だという。
そう、でも考えてみればそのはずであり・・・・慣れたものからわざわざ変えようということは、なるべくしたくないものである。
既存・従属・敬愛・慣用・・・・・長く時間をともにすればするほど、それらへの執着はより強固なものとなるだろう。
ーーーーーーそしてそれは、物であれ人間であれ同じこと。
失いたくなかった。
ずっとそのままでいたかった。
でも、そうはいかないものだ。
ときに組織は変革を強いられる。
古い細胞はもはや、押し出され剥がれ落ちることに抗うことができないように・・・・。
定義された避けられない事象、それが"変わる"ということ。
(あ、ああ・・・・長くなったな)
つまり、俺が言いたいことは、な。
偶然か、必然か・・・・・きみも変革の渦に在るんだよ。
「ーーーーーーセシル・ハルガダナ」
「・・・・・?」
商店が並ぶ街の中心部には、大きな噴水が印象的な広場がある。
俺が、そこで大人しく連れの帰りを待つ間の話だ。
俺の名をつぶやき、隣に座った男ーーーーーー。
無精ひげを生やした中年の・・・全身を緑色のスーツに包む独特な格好だが・・・。
残念ながら、俺は心当たりがない。
「すみません、なにか用でしょうか?」
(この人、なんで俺の名前まで・・・・??)
「あーなに、きみに三つほど言っておきたいことがあってね」
「ーーーーーー????」
「申し遅れたが・・・・俺はカーペンター・スリーという。
解放戦線の・・・まあ、リーダーということになっている者だ」
(・・・・?)
カーペンター・・・・スリー・・・・‼
"
「―――だからこそ、私はカーペンター・スリーのやり方には納得できないんだ‼」
"
キャロットが言っていた、あの男か。
"解放戦線"が、俺に・・・・まあ、言いたいことは山ほどあるかもしれないが・・・・。
「・・・・まあ、聞くだけならいくらでも」
「ふふ、話が早いな・・・世間話は嫌いか?」
「少なくとも、あんたとは話したくないな」
(・・・・!)
俺の言葉に、彼は少し驚いたような反応を見せた。
しかし、すぐにそれを消化し・・・・冷静な顔つきに戻る。
「嫌われたもんだ・・・・・まあいい俺も、もたもたしてるとまずいんだ。
・・・・・手短に済ませようか」
そう言うと、男は俺の前で人差し指を一本立て、「ひとつ目」と言った。
「セシル君、きみ、解放戦線に入らないか?」
「・・・・・」
(またそれか)
「なんというか、きみの話は聞いている。
ただ、色々あっただろう?
・・・・だからいま、本音を聞きたいと思ってね。
もし入る気があるなら、歓迎したい」
・・・・・話は聞いている、か。
それはそうだろう・・・・俺はいままで彼らと共闘したこともあれば、決別したこともある。
だが基本的に俺は・・・・。
「何度も言うように、解放戦線の考え方には納得ができない」
「はは、そのことは・・・・・・」
(そのことなら、徐々にわかるさ)
セシル・ハルガダナはまだ未熟なだけ。
彼はまだ、世界の広さを知らない。
そのときには・・・・・いずれ我々のようになる。
カーペンター・スリーからすると、そう確信できるからこその勧誘だった。
「まあ、慣れていけばいいだろ?」
(少し強引になっても、ね)
不敵な面・・・・もちろんセシルも彼に信頼をおいているわけではない。
「入らない。
あんたがリーダーなんだったら、なおさらそう思うだろうな・・・・。
それに、俺にはーーーーーー」
「ーーーーーーはあ~、そうか・・・・」
まだ発言の途中だったが、男は心底残念そうな顔を作った。
が、しかし・・・・どこか初めからわかっていたという風な感じもしたのだ。
「きみの稀有な魔法の才能、大将位をもしのぐその実力・・・・喉から手が出るほど欲しいんだけどなぁ。
まあ仕方がないか・・・・・・考え方が違う。
うん、これは非常に重要な問題だ。
それは俺も、もちろん理解している」
(・・・・・)
「ーーーーーーそう、だからこそ。
我々も、きみに協力することはない・・・これがふたつ目だ」
ニヤッと子どものように笑い、そう言い放つ。
そして彼は右手の人差し指に、中指を足した。
「何度も言いますが、それはお互いにとって不利だと思うがね」
「関係ないよ、僕らは仲間ではないし、考え方も違う、そうだろ?」
「はあ・・・」
「それから、みっつ目、これが最も重要な話なんだけど・・・・・・」
「・・・キャロットはあげないよ?」
「・・・!
別に、欲しいとは思っていないですよ。
ていうか、数日一緒にいただけですしね」
「ああ。そのことは、非常にありがたく思っている。
彼女とは、この間いさかいがあってね。
お互い頭を冷やす必要があると思っていたんだ」
(やっぱり。
あいつ、俺の見舞いに来たっていうのは口実だったのか・・・)
「有難く思ってくれるなら、彼女の世話代を解放戦線から出してくれてもいい」
「はは、それとこれとは話が別さ」
(別ではないだろ・・・)
「それで、彼女・・キャロットにはきみと同等・・・いやそれ以上に我々にとって重要な能力がある」
「感知能力、か?」
「おお、なんだ知っていたのか。
でも、それだけじゃない。
彼女がいれば、魔道具がなくとも・・・・離れた場所への通信ができる。
これはとても便利な魔法だ」
それはつまり、"通信魔法"のことである。
たしかに、高価で持ち運びのしづらい魔道具よりも、よほど簡単に・・・・そして有効に情報のやり取りができるだろう。
「情報を制する者が戦を制す・・・ってね。
とにかく彼女は我々に必要・・・もし、キャロットがベクラマを辞め、きみたちに協力するなどと言い出した場合・・・・・・」
「・・・どうなる?」
「悪いが、きみと・・・・それからきみたち部隊の皆さんには、死んでもらわなくてはならなくなるね」
「・・・・・迷惑な話だ」
「はははは、そうかもしれない。
だけど俺たちとしても、しかたがないことなんだ。
だから、理解して欲しい」
「・・・・」
「頼んだよ」と言ってもう一度、念を押したカーペンター・スリー。
彼はそれから静かに立ち上がり、群衆の中へと消えていった。
*第二十八話へ・・・・・
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