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第二章:セントレーネ攻防戦

+++第二十五話:信念深く・・・・・

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 戦況が佳境を迎え―――――王国軍、解放戦線がそれぞれ大きな動きを見せたとき。
 セシル・ハルガダナもまた、再び強敵と相まみえていた。
 
 
 
 (―――敵、になるのか⁇)
 目の前にいるのは、獣人族。
 間違いなく強いが・・・・しかし当然ながら王国軍ではない。

 「俺は住民の避難を手伝っているだけだ!」
 「信用できねェなァ・・・少々変わってるが、これは王国軍兵士のワッペンだろォ⁇」
 
 バッド=ガット・シュルクは、右腕を前に突き出す。
 彼の手には43部隊の証が握られている。
 
 
 
 「・・・・ああ、たしかにその通りだが・・・・・・」
 俺がそう答えると・・・いや、最後まで答えきる前に――――彼の魔力はいっそうにとげとげしさを増し、いまにも爆発しそうな雰囲気さえを感じさせる。
 
 「おいおい!!王国軍がこの町になにをしに来たのか・・・・知らねェわけじゃねえよなァ⁇
 ・・・・・だったら、大人しく死んどけやァ‼‼‼」
 
 (―――――――ッ‼‼)
 
 男は地を蹴り加速すると、俺の顔面をめがけて腕を振った。
 
 (当たるだけで致命傷になりうるとさえ感じる――――)
 この、”爪”・・・・‼‼‼
 
 
 
 「・・・・だけ、じゃねえぜェ」
 (・・・‼‼‼)
 
 「―――爆発魔法」
 俺の肩に手を付くと、彼はそう呟いた。
 
 
 」            「
 @@@@@@@@@@@@@@
 「オ=ドリジンッ―――‼‼‼」
 @@@@@@@@@@@@@@
 」            「
 
 
 セシルの体を中心に、エネルギーの巨大放散が起こる。
 衝撃波が屋根を揺らし、砂埃が舞った。
 
 ・・・・と、ほぼ同時に。
 セシルの拳が、シュルクの顎骨を叩く。 
 
 (―――――――なんだ、どこから現れた⁉)
 すぐに立ち上がると、彼は口にたまった血液を吐き出した。
 
 さっきのをかわした・・・となると魔法の類であることは間違いねェ。
 対して俺の魔法もまた、初見じゃ対応しずれェだろ?
 
 (なるほど・・・・こりゃお互いに、面倒な相手と当たった)
 
 ―――――――だがお前も、そう思ってるはずだァ。
 
 (さて、この探り合い・・・どこで仕掛けるか・・・・・・・・・‼‼⁉)
 
 
 
 シュルクは異様な光景に、思わず目を疑った。
 仮にも、強力な魔力のぶつかりが怒っている現場。
 
 ――――そこをまるで、休日午後、町中を歩いているように・・・・平然と歩み進める一人の若者。
 
 「僕も混ざります・・・・どうせ、二人とも殺すのが仕事ですので」
 
 無表情・・・・漆黒の瞳をのぞかせると、男はそのまま剣を抜いた。
 はっきり言って―――。
 
 「―――――異常だなァ。
 おもしれェ」
 「待て、俺は本当に―――――――」
 
 シュルクの言う通り、異常な状態。
 セシルはいったん落ち着かせることを試みるが、それはかなわない。
 二者は強力に魔力を洗練させ、遅れるように彼も魔力を練った。
 
 
 
 
 ――――――ほぼ同等の魔力がぶつかり合い、周囲はとてつもない圧力にさらされた。
 
 
 
 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 
 
 「爆発魔法:ヴァヌード‼‼‼」
 「風雷魔法:イシレンガ‼‼‼」
 「氷魔法:ト=レント‼‼‼」
 
 
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 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 
 
 
 変わって、【セントレーネ東部地区】―――――。
 
 
 
 「――――おい、おいおいおい・・・なんだよあれ・・・」

 王国軍が撤退し、解放戦線もホワイト・ピアの合流を待っているときのことである。
 おもむろに空を見上げたカーペンター・スリーは、空中に炎をあげながら落下する巨大な岩を見つけた。
 
 
 
 「・・・・・か、みさま」
 「嘘やろ⁉
 どうするんやッ⁉
 これって、状況的に・・・どう考えてもここに落ちるやんけッ⁇」
 
 同じように空を見上げたエステベス・ポーカー、ブラッディ・シャーク両名もまた、驚愕する。
 逆に言ってしまえば、解放戦線の幹部クラスがそれくらいしかできない。
 
 それほどまでに想定をを超えた攻撃―――――――――。
 
 「つまり、王国軍はまだ切り札を持ってたんだろう。
 くそッ――――――‼
 シンバーさんならなんとかできたかもしれないが・・・!!」
 
 なにより頭脳派のリーダー、カーペンター・スリーが舌を巻く。
 なにを考えても、不可能――――。
 
 ついには彼の頭に退がよぎる。
 
 (あれが落ちれば、この町のほとんどががれきと化すだろう)
 少しでも被害を減らすには、逃げれるものだけ逃げるしかない――――か?
 
 ――――――しかし、住民を見捨てることはそれすなわち、解放戦線側の完全敗北を意味する。
 ”王国軍の撤退”から、”セントレーネ壊滅”と、”解放戦線の敗走”に代わるのだ。
 
 (――――――クソ、大逆転の一手だ)
 
 誰が考えた?
 王国軍には前線に姿を現さなかった、”クイーン”の駒がまだ居やがったのかッ‼
 
 考えている暇はない・・・このままでは自分たちの身まで危なくなる。
 カーペンター・スリーがまさに口を開こうとしたとき・・・・・エステベス・ポーカーは両手で大きく音を立てた。
 
 (――――ッ⁉)
 
 「――――行くしかねえだろ⁉
 もう、こうなればこの魔法を使ったやつを殺して、あとはあれが消えることを神様に祈るしかねえ‼」
 
 「・・・‼」
 
 その言葉に、はっと目を見開く。
 そうだ・・・・俺たちの命がなんだっていうんだよ。
 シンバーさんが、命がけでつないだものだろ‼⁉
 
 「ああ、その通りだ、ポーカー・・・‼」
 
 そう、カーペンター・スリーの目に光が戻った。
 
 「マルコ、ジョーを起こせ‼
 まずは俺とジョー、ポーカー、シャークで、あの外道たちのところに突っ込むぞ‼
 キャロット、マルコ、ラリーはひとまず待機だ‼」
 
 指示を出すと、彼は先頭に立って建物の屋根から飛び降りた。
 
 「行くぞォ!!!!!!」
 
 
 
 *
 
 
 
 
 
 「・・・。
 早いですね、もう来ましたか」

 騎馬突撃を仕掛けてくる四名の影が確認されたとの報告を受け、グラディアーニェ太極は前線へと向かった。

 「――――――うおおおお‼
 術者はどいつだァァァァァァァァ⁉⁇
 こんな罰当たりなことしやがって、必ず裁きが下るからなァァァァァァ‼」
 
 戦略などはない・・・・・エステベス・ポーカーは誰彼構わず殴って進む。
 彼の奇怪な能力に、兵たちは困惑しつつ戦うのだった。
 
 「うああああ‼なんだこいつ⁉」
 「落ち着け、たった三名だ‼
 冷静に対処しろ‼」
 
 上官はそう指示を出すが、現場の混乱は収まらない。
 
 
 
 「こいつら・・・・・・乗ってきた動物も、馬ではなく凶暴な魔獣です‼
 ご注意をッ・・・・・・・・・・・あああああああああ‼‼」
 
 これではまるで狩場・・・・。
 粉塵舞う中、解放戦線の四人が王国兵を追いかけまわす。
 
 もともとの混沌とした撤退状況も相まって、もはや指示系統は完全に機能していない。
 
 「――――まったく、王国軍の質はこんなに低かったでしょうか?」
 
 グラディアーニェ太極位は錯乱を極める戦場に悠然と歩みを進めると、自軍の兵士が次々となぎ倒される光景に嫌気がさしたようにため息をつく。
 
 
 
 「・・・・・」
 
 スッと・・・・驚くほど自然に現れた女性と目が合う。
 
 「先ほど、あなたは魔法の術者は誰だと聞かれました。
 ・・・それは私です」
 「あ、゛あ?」

 太極位の自白に反応したポーカーであったが、口からあふれ出る血液のせいでうまくしゃべれない。
 
 
 
 「あで?なんで⁉」
 
 
 |||||||||||||||
 
 「―――――――――「ポーカーッ‼‼」ゲホッ・・・!!」
 
 |||||||||||||||


 腹部に刺さっている短剣は、的確に急所を射抜いている。
 音もなく、気配もなく・・・どうやって?
 
 
 
 「―――さようなら」
 
 
 
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 
 
 
 
 
 
 「ゲホッ・・・・・ハアハア」
 とてつもない衝撃波にさらされ、シュルクの体は民家に突っ込んでいた。
 
 ほぼ互角の威力。
 しかし三つはそれらを相殺し合わずに、巨大なエネルギーを放出した。
 俺だけじゃねェ、全員、これじゃあしばらく動けねェだろ。
 
 隣には、少ししたところにセシル・ハルガダナも転がっているように見えるが・・・・魔力どころかうまく体が動かない。
 
 
 
 (・・・・・????
 あァ、なんだァ⁉)
 
 少しし薄暗くなったと思えば、彼は上空になにやら異物を視認する。
 
 「隕石だとォ!?」
 おいおい、ありゃ・・・・魔法なのか??
 
 驚いているのもつかの間、彼は脳内に聞き覚えのある声を感じた。
 昔の仲間・・・・・あんまり話は合わなかったが、こうして、嫌でもそうしなきゃいけないことはあったよなァ・・・・。
 
 「キャロットかァ??」
 「よかった、まだ通じるか!」
 
 彼女はそう肯定する。
 (やはり通信魔法――――)
 
 
 
 「俺は、二年も前に・・・・お前らとは縁を切ったはずだがなァ?」
 「どっちでもいいだろ、この際。
 まだチャンネルはつなげておいたんだよ」
 「・・・・・切れねェもんだ」
  
 短い再開の挨拶はここまで――――彼女はさっそく本題に入った。
 
 「きみ、あれをなんとかできないか⁇」
 「・・・・・」
 
 抽象的な問いだが、状況を考えれば・・・・彼には容易にその真意が推察できた。
 
 「無理だなァ。
 あれだけ規模がでけェと、軌道もそらせるかどうか・・・・」
 「・・・・・そうか」
 
 キャロットはシュルクの返答に勢いを落とした。
 
 
 
 「・・・・・・」
 (あいつらが、規模の大きい魔法を扱う俺を頼るのはわかるが―――――――)
 
 普通なら、それは憎むべき相手を頼るべきじゃねえだろ。
 そもそもこうなったのは、俺たち”パータイス”が原因だ。
 
 
 
 
 怒ってんだろ―――――――――⁇
 
 なあ―――――――――ジジイはどうした⁇
 ここで動かないのかよ、守るために来たんだろ?
 

 ・・・・・・・・・もしかして、死んだのか⁇
 
 
 ああ、そうか。
 
 ついに、くたばったのかよ・・・・・老いた、歳をとった。
 そればかりでうんざりしてたんだ、いつ死ぬのかって。
 
 
 
 せいせい、するなァ・・・・・・・・。
 
 
 
 「・・・・・・・」
 「シュルク――――――ッ‼」
 
 彼女の怒ったような声で現実に帰される。
 
 「聞いてんのか⁉
 一刻を争うんだよッ」
 「あァ、わかってる・・・・で?なんなんだよ」
 
 「ったく、だからさ。
 もしかして、近くにセシル・ハルガダナ・・・・いや、いまは【ソシワターヌ・オヴレ】か・・・・。
 とにかく、仮面をかぶった変なやつはいないか⁇」
 (――――――‼)
 
 彼女から飛び出したのは、意外な問いであった。
 
 知り合いかァ?
 王国軍と・・・・いいご身分だなァ。
 
 シュルクはそう感じつつも、セシルの方へ視線を向ける。
 彼はなにかに気が付いたのか、振り絞るように起き上がり・・・こちらに視線を返した。
 
 
 「いることには、いるがァ・・・・」
 「―――――‼
 だったら協力できるかそいつにも聞いてみてくれ!
 結構強いんだよ」
 
 (んなこと、もうわかってるよ・・・・)
 
 
 「―――――って、言ってるがァ⁇」
 
 シュルクは、そうセシルの方に語り掛けた。
 意識を戻したってことは、あいつも状況には気づいてる。
 
 住民を避難させてた・・・かァ。
 さあ、どっちだ・・・・⁇
 本性を現すかァ⁇
 
 
 
 「言われなくても、止めるつもりだ・・・・俺が行くまでに用意しておいてほしいものがある。
 ―――――そう伝えてくれ」
 
 (・・・・‼)
 嘘じゃねえなァ、あァ・・・・。
 少なくとも、あれを止めてェ・・・・その信念に疑義は付けれない。
 
 俺の魂がそう言ってやがるぜェ⁉
 
 (・・・・・・)
 
 
 
 「―――――だそうだ、あとは勝手にやれ。
 俺は、通訳じゃねェぞ‼」
 
 我慢していたのかそう言うと、乱暴に通信を遮断し・・・シュルクはおもむろに立ち上がる。
 
 
 
 (馬鹿みてえだなァ)
 
 俺も、あいつが人間族ってだけで―――――――どこか、心の声を無視してたのかもしれねェ・・・・・・・。
 
 「おい、ハルガダナァ‼
 ここは俺が受け持つぞォ、お前はあれを止めろ」
 そう言ってシュルクは上空を指さした。
 
 「二言はねェよなァ⁇ 
 できなけりゃ、今度こそ、殺すからなァ‼」
 「ああ、もちろんだ」
 
 セシル・ハルガダナはそう残すと、地面を駆けた。
 
 
 
 「―――――――――それを、僕が許すとでも⁇」
 
 併走するように新たな影が現れる。 
 ノバシャード大将位である――――――。
 
 彼は速度を落とさないまま、スマートに剣を振りかぶった。
 それを考えれば、スピードという面では彼の方が一つ抜けているのだろう。
 
 (だが―――)
 
 「言ったよなァ、ここは俺が受け持つって・・・・・俺もそれは突き通させてもらうぜェ⁇」
 
 彼はそう言うと、魔力を込めたこぶしで強く地面をたたいた。
 地面は大きくひび割れ・・・・速度をつけた両者をとらえるのに時間はかからなかった。
 
 (―――――‼)
 上方向への強い爆風・・・‼
 大将位は思わず顔面を腕で覆った。
 合わせて飛び出した煙が、セシルと彼の間を分かつ。
 
 
 
 「逃がさない――――ッ‼」
 
 (風魔法:ピー=クラッシュ!)
 反対の手で剣を水平に振ると、煙は真っ二つに割れ・・・気流によってだんだんと晴れていく。
 
 「・・・・逃げられたか」
 「あァ、まあこれで一対一・・・二人で仲良くやろうやァ」
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
  
 
 「あ!
 セシル・ハルガダナ、やっときたな‼」
 「はあ・・・はあ・・・全力で走ってきたんだぞ」

 約束の場所は、結界を張り住民を集めていた聖堂・・・・。
 この場所で生意気な少女に会うのは、今日すでに二度目だ。
 もっとも彼女のほかにも数名が、そわそわと隕石を眺めているようだが。
 
 
 
 「キャロット・・・伝えたものは用意してくれたか」
 「ああ、もちろん・・・・解放戦線で魔法が得意な人を集められるだけ集めたぞ!
 あっちに待機してもらってる・・・でもどうするんだ⁇
 本当に止まるって、信じて良いんだよな⁇」
 

 「それを説明している時間はない・・・・。
 お前らでなんとかあの隕石を十・・・いや五秒でいい、止めてほしいんだ」
 
 
 
 (・・・・・⁉) 
 「はあ、なに言って―――」
 彼女は俺の提案に表情をゆがめた。
 おそらく、信じていないのか・・・そもそもちょっと前に会ったばかりの関係。
 
 だが、やってもらわなければ困る。
 信用し合わなければ、そもそも俺がここに来た意味もないはずだ。
 
 「できるのか、できないのかで答えてくれ!」
 「―――ッ‼できる‼
 解放戦線にできないことはない‼」

 彼女は近くにいた魔獣の腕をがっしりと掴んで、自分の方に引き寄せるとそう言い放った。
 
 (あいつは・・・・・マルコ=マルコ)
 
 「だってさ、なめられてるぞ!
 証明してやろうぜ、ラリーも手伝えよ‼」
 
 別になめてはいないが・・・・。
 しかしながら彼女の視線の先にいるサイの獣人は、心細そうだ。
 
 「えー。
 僕にあんなの、止められっこないよぉ・・・それに、先生が・・・いないんじゃもう僕は・・・」
 「弱音を吐くなよ‼
 シンバーさんはいまも、私たちのことを見てるぞ‼絶対‼
 だから、いいところを見せろよ‼」
 「―――う、わかった、やってみるよ」
 
 なんだ――――どこかさみしそうな――――。
 なにかあったのか、解放戦線のメンバーは少し雰囲気が変わっているように見える。
 
 (それは、いまはいいか・・・)
 いま、やるべきことは別にある――――――――――。
 
 「・・・よし、じゃあもう一度言う。
 俺が合図したら五秒間だけでいい、なにがなんでもあの隕石を止めてくれ」
 
 
 そう言い残すと、俺はその場を後にした。
 もはや隕石の衝突まで一分と時間はないだろう。
 
 ここまで来たら、やるしかない・・・・やるしかないんだ!
 
 
 
 
 
 (頼むぞ・・・‼)
 
 
 


 ―――――俺の移動魔法には、大きな弱点が二つある。
 
 あの魔法を発動するためには、移動させたいものと、移動先のスペースの座標を互いに置換する必要がある。
 それには頭の中で膨大な計算が必要であり、また目視する範囲じゃないと座標を把握できないため魔法は発動できない。
 ―――――――それが、ひとつ目。

 ふたつ目は、計算が必要であるが故に・・・・・大きくて複雑なものであるほど、魔力や身体的負担が大きいこと。
 たとえば、王都を三メートル右に移動すること。
 これは理論上は可能であるが、実際はとてもじゃないが不可能だ。
 
 それを踏まえて、今回のような隕石は巨大だが・・・・・形が単調であるため、おそらく移動可能だろう。
 
 
 
 「森林魔法:トラヴェラーズ・エックス!」
 
 俺は森林魔法を発動し、大木に乗って空中に移動する。

 移動先の座標は・・・そこにある湖はどうだろう。
 といっても吟味している時間はない。
 即断即決で、まずは湖の座標を割りだす。



 「・・・・・・よし、頼む‼」

 合図とともに、解放戦線の【マルコ・マルコ】と【ラリー・ファージ】は一斉に巨大化し、自らの体を隕石にぶつける。
 
 
 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
 
 「―――――――うおおおおおおおお‼‼」

 「―――――――はああああああああ‼‼」

 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
 
 
 
 カウント開始――――――。
 全力で、頭を回せッ‼‼‼
 
 
 (5・・・)

 さあ、計算しろ・・・。
 隕石の座標、この巨大な異物は、ここにあってはいけないものだ。

 

 (4・・・)

 焦るな・・・大丈夫、うまくいく。
 いつだってこういう修羅場は潜り抜けてきた・・・だからこうして生きているんだ、そうだろ?
 
 
 
 (3・・・)
 
 
 
 「「―――――ああああああああァァァァァ‼‼」」

 常人に、このときの二人にかかっている不可など、想像もつかない。
 
 
 
 ―――なぜ、よく知りもしない人物を信じて、命をとしているのだろう?
 なぜ、解放戦線に入って、この恐ろしい戦場で見ず知らずの人達のために戦おうと思ったんだろう?
 
 
 
 (2・・・)
 
 
 
 「ぐ・・・うあぁぁ」

 マルコ・マルコの右太もも辺りから、大量の流血が起こった。



 「まさか!
 傷があったのか⁉
 マルコ、ばか、なんで私に言わなかったんだ‼」

 マルコ・マルコの体勢が崩れるが、隕石はいまだ動いていない。

 

 (1・・・)



 あと一秒・・・。
 マルコの分まで、今度は僕が‼

 僕は・・・いままでみんなに迷惑ばかりだった。
 食いしん坊の僕が食料を食べ尽くして・・・・・ひもじい思いをさせちゃったこともあった。
 作戦でミスをすれば、いつもみんながかばってくれた。
 
 
 つらいこともあったけど、間違いなく、幸せなことの方が多かったんだッ・・・‼

 ベクラマは、僕の居場所だった。
 
 シンバー先生・・・あなたが・・・・・いじめられてた僕を助けてくれた、あの日から。
 
 僕は、僕に、【ラリー・ファージ】になったんだ‼‼‼



 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオォォォッ‼‼‼‼‼」

 「―――――――――」

 「――――」



 (・・・0)



 「転移魔法:エラザイスト・ダイブ‼‼」







 ―――――不気味な現象だった。
 町を覆っていた巨大な影は一瞬にして消え去り、再び曇り空が顔をのぞかせた。
 
 と思えば、遠くから地鳴りのような轟音が響き、続いてきた衝撃で周辺の誰もが、障害物まで吹き飛ばされた。
 
 追って水滴が町に降り注ぎ、大木に何とかしがみついていたセシルは、そこでようやく自分の役目を果たしたことを悟った。

 
 
 
 *
 
 
 
 
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