上 下
39 / 39

エピローグ

しおりを挟む

 マリアベルが消えてから、一か月が過ぎた。
 自害未遂をしたクララベルは、今では元気になり、再び王立学院に通い出した。
 その傍らには、婚約を結んだエルネストの姿が見られる。
 王家から正式な婚約の発表があると、めでたい出来事に、国中がお祭り騒ぎとなった。
 様々な喧騒から逃れるように、シャールは学院の隅っこにある、見晴らしの良い小高い丘へやって来た。
 一人になりたかったけれども、ポーリンが遠慮がちにやって来たとき、シャールは自然と彼女を受け入れる気持ちになった。
 ポーリンにせがまれて、シャールはマリアベルとの思い出を語った。

「そんなことがあったのですね…。わたくし、友達として、何もして差し上げられませんでした」

 しょんぼりとポーリンが言った。
 シャールはそれを否定した。

「そんなことないよ。友達になってくれたじゃないか。マリアベルも君のこと、好きだったと思う。俺なんか、マリアベルが現れるたびに、なんでお前がいるんだよって迷惑そうにしたり、あいつのこと隠そうとして、クララベルになれって言ったり、ひどいこといっぱいしたんだ。でも、本当はあいつがいると楽しかった。もっと一緒にいたかった。…マリアベルが存在したこと、俺だけの記憶になってしまったんだと思ったら、ちょっと悲しかったけど、君がいてくれてよかったよ。時々は思い出話ができるからね」

 ぽつり、ぽつりとマリアベルのことを語るシャールに、ポーリンは胸が苦しくなって、鼻の奥がツンとなって泣きそうになった。

 顔を覆って嗚咽をこらえていると、シャールが優しい手つきで頭をポンとした。

「ありがとな」

 二人は、マリアベルとの別れを惜しんで、いつまでも寄り添い合うのだった。








◆◆◆ 後書き ◆◆◆

これで完結となります。
題名でネタバレしているので書くのが難しかったのですが、書きたかった事は書けたと思います。
多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。
お気に入り登録で応援していただけると嬉しいです!

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

悪役令嬢に転生して主人公のメイン攻略キャラである王太子殿下に婚約破棄されましたので、張り切って推しキャラ攻略いたしますわ

奏音 美都
恋愛
私、アンソワーヌは婚約者であったドリュー子爵の爵士であるフィオナンテ様がソフィア嬢に心奪われて婚約破棄され、傷心…… いいえ、これでようやく推しキャラのアルモンド様を攻略することができますわ!

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

【完結】悪役令嬢とは何をすればいいのでしょうか?

白キツネ
恋愛
公爵令嬢であるソフィア・ローズは不服ながら第一王子との婚約が決められており、王妃となるために努力していた。けれども、ある少女があらわれたことで日常は崩れてしまう。 悪役令嬢?そうおっしゃるのであれば、悪役令嬢らしくしてあげましょう! けれど、悪役令嬢って何をすればいいんでしょうか? 「お、お父様、私、そこまで言ってませんから!」 「お母様!笑っておられないで、お父様を止めてください!」  カクヨムにも掲載しております。

処理中です...