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エピローグ
しおりを挟むマリアベルが消えてから、一か月が過ぎた。
自害未遂をしたクララベルは、今では元気になり、再び王立学院に通い出した。
その傍らには、婚約を結んだエルネストの姿が見られる。
王家から正式な婚約の発表があると、めでたい出来事に、国中がお祭り騒ぎとなった。
様々な喧騒から逃れるように、シャールは学院の隅っこにある、見晴らしの良い小高い丘へやって来た。
一人になりたかったけれども、ポーリンが遠慮がちにやって来たとき、シャールは自然と彼女を受け入れる気持ちになった。
ポーリンにせがまれて、シャールはマリアベルとの思い出を語った。
「そんなことがあったのですね…。わたくし、友達として、何もして差し上げられませんでした」
しょんぼりとポーリンが言った。
シャールはそれを否定した。
「そんなことないよ。友達になってくれたじゃないか。マリアベルも君のこと、好きだったと思う。俺なんか、マリアベルが現れるたびに、なんでお前がいるんだよって迷惑そうにしたり、あいつのこと隠そうとして、クララベルになれって言ったり、ひどいこといっぱいしたんだ。でも、本当はあいつがいると楽しかった。もっと一緒にいたかった。…マリアベルが存在したこと、俺だけの記憶になってしまったんだと思ったら、ちょっと悲しかったけど、君がいてくれてよかったよ。時々は思い出話ができるからね」
ぽつり、ぽつりとマリアベルのことを語るシャールに、ポーリンは胸が苦しくなって、鼻の奥がツンとなって泣きそうになった。
顔を覆って嗚咽をこらえていると、シャールが優しい手つきで頭をポンとした。
「ありがとな」
二人は、マリアベルとの別れを惜しんで、いつまでも寄り添い合うのだった。
◆◆◆ 後書き ◆◆◆
これで完結となります。
題名でネタバレしているので書くのが難しかったのですが、書きたかった事は書けたと思います。
多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。
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