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愛情表現
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近づく部長の顔から自分の顔を思い切り逸らした。
「おい。顔を逸らすな。キスできないだろ」
「何言ってんですか! しなくていいですよ!」
「させろ」
「無理です! 無理無理無理!」
「そんなに拒否る事ないだろ!」
「やめて下さい! 部長が俺にキスする理由なんてないでしょう!」
「あるんだよ! 好きなやつにキスしたいと思うのは普通だろ!」
好きなやつ……?
思わず部長の顔を凝視する。
「誰が誰を好きなんですか……?」
「俺がマサを好きなんだ」
「わ、悪い冗談やめて下さいよ……」
「冗談じゃない。ずっと好きだった……だから……浮気する彼氏なんてやめて、俺にしとけ……」
部長の顔は真剣で、冗談を言っているようには見えなかった。
部長の好きな人って確か……鈍感で生意気で酒に弱くて彼氏持ち……って俺⁉︎
自覚したら急激に恥ずかしくなった。
「そんなに真っ赤になるな……こっちも恥ずかしい……」
「ま、待って下さい! 一回どいて下さい! お願いします!」
「ちっ……仕方ねぇな……」
どいてくれた部長にホッとして、上半身を起こした。
お互いに照れ臭くなって顔が見れなくて視線を逸らす。
部長が俺を好きだって……まじなのか?
俺にしとけって言われた……。
チラリと横目で見る部長は、髪を下ろしていて、いつものキッチリとした大人の男性という感じがしなくて少し幼く見えた。
いつもスーツに隠れていた上半身はちゃんと鍛えられていて、腹筋も綺麗だ。
部長は確かにカッコイイし、頼れるし、付き合ったら幸せになれる気がする。
でも……俺が好きなのはたっつんだ。
たっつん以外は考えられない。
例え浮気されようと……俺はたっつんが好きだ。
「部長……」
「なんだ?」
正座して両手を膝の前に着いて頭を下げた。
「大変申し訳ないんですが、丁重にお断りさせて頂きます」
「──すぐに結論を出すな。好きだと伝えたばかりだ」
頭を上げて真っ直ぐに部長を見た。
「考えての結果です。俺はたっつん……白石が好きです」
「浮気されたのにか?」
「そうなんですけど……前の彼の時はすぐに別れようと思ったんですけど、そうは思わないんですよね……それどころか、正座させて謝らせたいです」
そうなんだ。俺は、たっつんと別れようなんて思わなかった。
「ははっ。どんなだよ」
「それに……冷静になって考えたら、あの白石が浮気するなんて思えないです。それだけ愛されていました。二人でちゃんと話します」
「そうか……」
部長は、そう言って起き上がると俺に昨日着ていた服を投げつけた。
あ、俺……まだパンツ一枚だった……。
「帰るんだろ? 帰って白石に連絡でもしろ。めちゃくちゃ怒ってやれ」
ニヤリと笑う部長に微笑んだ。
「はい!」
部長はやっぱりいい人だ。
服を着て靴を履いた。
玄関で見送られる。
「道はわかったよな?」
「はい。色々ありがとうございました」
「マサ、まつ毛にゴミが付いてる。取ってやるから目を瞑れ」
「え? どこですか?」
目を瞑れば、そっと瞼に指が触れる感触がした。そして……唇にもフニッとした感触が……。
ビックリして目を開ければ、目を閉じて俺にキスしてる部長のドアップだ。
思わず突き飛ばして口元を拭った。
見た目よりも柔らかい唇の感触だった……。
「な、な、な、何してくれてんですかぁ!」
「はははっ。これで何かあったな。お前があまりにもムカつくからスッキリした」
「い、嫌がらせですか⁉︎」
「違う。愛情表現だ。俺はお前を諦めたつもりはない。これでケンカ別れでもしてくれたら俺の所にくればいい」
めちゃくちゃいい笑顔で何を言っているんだ!
「別れません!」
真っ赤になりながら睨む。油断した。
「やっぱりお前……可愛いな……」
「お邪魔しました! 失礼します!」
そう言いながら勢いよく扉を開けた。
「あ、そうだ。昨日の夜な、お前のスマホがしつこく鳴っていたから、電源切っといた」
「え⁉︎」
慌ててスマホを確認すれば電源が入っていない。
この人……勝手に人のスマホを……!
「そう可愛い顔で睨むな。出てやっても良かったが、出ないでいてやったんだぞ?」
「そうですね! ありがとうございました!」
もうヤケクソだ。
「ああ。また会社でな」
部長ってこんな人だったかな……。
うん、人を揶揄って遊ぶこんな人だった。
クスクス笑う部長の声を背中に聞きながら歩き出す。
歩きながらスマホに電源を入れた。
すると、時間も経たずに電話が鳴った。
たっつんの名前に深呼吸をしてから通話ボタンを押した。
「おい。顔を逸らすな。キスできないだろ」
「何言ってんですか! しなくていいですよ!」
「させろ」
「無理です! 無理無理無理!」
「そんなに拒否る事ないだろ!」
「やめて下さい! 部長が俺にキスする理由なんてないでしょう!」
「あるんだよ! 好きなやつにキスしたいと思うのは普通だろ!」
好きなやつ……?
思わず部長の顔を凝視する。
「誰が誰を好きなんですか……?」
「俺がマサを好きなんだ」
「わ、悪い冗談やめて下さいよ……」
「冗談じゃない。ずっと好きだった……だから……浮気する彼氏なんてやめて、俺にしとけ……」
部長の顔は真剣で、冗談を言っているようには見えなかった。
部長の好きな人って確か……鈍感で生意気で酒に弱くて彼氏持ち……って俺⁉︎
自覚したら急激に恥ずかしくなった。
「そんなに真っ赤になるな……こっちも恥ずかしい……」
「ま、待って下さい! 一回どいて下さい! お願いします!」
「ちっ……仕方ねぇな……」
どいてくれた部長にホッとして、上半身を起こした。
お互いに照れ臭くなって顔が見れなくて視線を逸らす。
部長が俺を好きだって……まじなのか?
俺にしとけって言われた……。
チラリと横目で見る部長は、髪を下ろしていて、いつものキッチリとした大人の男性という感じがしなくて少し幼く見えた。
いつもスーツに隠れていた上半身はちゃんと鍛えられていて、腹筋も綺麗だ。
部長は確かにカッコイイし、頼れるし、付き合ったら幸せになれる気がする。
でも……俺が好きなのはたっつんだ。
たっつん以外は考えられない。
例え浮気されようと……俺はたっつんが好きだ。
「部長……」
「なんだ?」
正座して両手を膝の前に着いて頭を下げた。
「大変申し訳ないんですが、丁重にお断りさせて頂きます」
「──すぐに結論を出すな。好きだと伝えたばかりだ」
頭を上げて真っ直ぐに部長を見た。
「考えての結果です。俺はたっつん……白石が好きです」
「浮気されたのにか?」
「そうなんですけど……前の彼の時はすぐに別れようと思ったんですけど、そうは思わないんですよね……それどころか、正座させて謝らせたいです」
そうなんだ。俺は、たっつんと別れようなんて思わなかった。
「ははっ。どんなだよ」
「それに……冷静になって考えたら、あの白石が浮気するなんて思えないです。それだけ愛されていました。二人でちゃんと話します」
「そうか……」
部長は、そう言って起き上がると俺に昨日着ていた服を投げつけた。
あ、俺……まだパンツ一枚だった……。
「帰るんだろ? 帰って白石に連絡でもしろ。めちゃくちゃ怒ってやれ」
ニヤリと笑う部長に微笑んだ。
「はい!」
部長はやっぱりいい人だ。
服を着て靴を履いた。
玄関で見送られる。
「道はわかったよな?」
「はい。色々ありがとうございました」
「マサ、まつ毛にゴミが付いてる。取ってやるから目を瞑れ」
「え? どこですか?」
目を瞑れば、そっと瞼に指が触れる感触がした。そして……唇にもフニッとした感触が……。
ビックリして目を開ければ、目を閉じて俺にキスしてる部長のドアップだ。
思わず突き飛ばして口元を拭った。
見た目よりも柔らかい唇の感触だった……。
「な、な、な、何してくれてんですかぁ!」
「はははっ。これで何かあったな。お前があまりにもムカつくからスッキリした」
「い、嫌がらせですか⁉︎」
「違う。愛情表現だ。俺はお前を諦めたつもりはない。これでケンカ別れでもしてくれたら俺の所にくればいい」
めちゃくちゃいい笑顔で何を言っているんだ!
「別れません!」
真っ赤になりながら睨む。油断した。
「やっぱりお前……可愛いな……」
「お邪魔しました! 失礼します!」
そう言いながら勢いよく扉を開けた。
「あ、そうだ。昨日の夜な、お前のスマホがしつこく鳴っていたから、電源切っといた」
「え⁉︎」
慌ててスマホを確認すれば電源が入っていない。
この人……勝手に人のスマホを……!
「そう可愛い顔で睨むな。出てやっても良かったが、出ないでいてやったんだぞ?」
「そうですね! ありがとうございました!」
もうヤケクソだ。
「ああ。また会社でな」
部長ってこんな人だったかな……。
うん、人を揶揄って遊ぶこんな人だった。
クスクス笑う部長の声を背中に聞きながら歩き出す。
歩きながらスマホに電源を入れた。
すると、時間も経たずに電話が鳴った。
たっつんの名前に深呼吸をしてから通話ボタンを押した。
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