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少し世界を知った
魔王城のパーティー ①
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12歳にもなれば、結構大きくなってきて気分は重い。
あまり大きくなりたくないと思っていても成長は止められない。
そんなある日、シャールちゃんがやってきて、俺を真っ黒な正装に着替えさせた。
パーティーとかで見るような燕尾服だ。
髪も後ろにセットされて、爪も磨かれた。
「ねぇ、今日、何かあるの?」
「え? リディオ聞かされていないのですか? 今日は、魔王城で開かれるパーティーに出席するんですよ」
「へぇ。魔王城ね──え⁉︎ 俺が⁉︎」
「はい! そうですよ。こら、動かないで下さい」
魔王城……行った事がないけれど、俺が行ってもいいんだろうか?
だって、俺は……人間だよ?
戸惑っていれば、同じような燕尾服に着替えているラヴィアスが部屋にやってきた。
ラヴィアスも髪を後ろにセットしていて、オデコ見える。すごいカッコいい。
俺がラヴィアスに何か言う前に、シャールちゃんがラヴィアスに怒ってくれた。
「ラヴィアス様、リディオにちゃんと説明していないんですか?」
「ああ……言ってなかったかもしれない」
「ダメですよ! リディオだって心の準備が必要だと思います」
その通りだ。
「そうか……すまない。リディオ、これから魔族の集まるパーティーに行く。父上がお前に会いたいんだそうだ」
父上って……魔王様⁉︎
俺に会いたいなんて……何を言われるのかな……。
その後はものすごい緊張で、何をしたのか覚えていない。
ラヴィアスとユルは、バルコニーに出て、翼を広げる。
どうやって行くのかと思ったら、ラヴィアスに抱っこされて空を飛んで行くらしい。
空を飛ぶの初めてだ。
「リディオ、来い」
恐る恐るラヴィアスの首に捕まれば、背と足に腕を回されてお姫様抱っこされた。
この体勢が運びやすいらしい。
バサリッと羽根の音がすれば、ラヴィアスがそのまま空を飛んだ!
グンッと引っ張られるような感覚がして、血の気が引く。
こ、これは……めちゃくちゃ怖い!
思わずラヴィアスに捕まる腕に力が入る。
「怖い怖い怖い!」
どこを見ていても目眩がしてクラクラする。
「大丈夫だ。目を瞑っていろ」
言われた通りにギュッと目を瞑った。
思いっきり高所恐怖症になってんじゃんかぁ!
「おや? リディオは高い所好きでしたのに、嫌いになってしまったんですね」
ユル……高所恐怖症になったのはユルのタカイタカイのせいだからね! 言わないけどさ!
「ラヴィアス! 落とさないでね!」
「私がお前を落とすわけないだろう」
必死に抱きつく。
「おやおや。そんな事されたら可愛くてしょうがないですね」
「ユル、黙っていろ」
「私も今度リディオを連れて飛んでみたいですね」
「ダメだ」
二人が何か喋っているけれど、怖くて話が入ってこない。
しばらく恐怖に耐えれば、風を感じなくなって、羽根の音もしなくなった。
「リディオ、着いたぞ」
そっと目を開ければ、ラヴィアスの城と同じようなバルコニーの上だった。
そっと降ろされたけれど、足がヘロヘロで倒れそうになってしまい、ラヴィアスが腰を支えてくれた。
「大丈夫か? 高い所は苦手か……」
「もしかして……帰りも同じ?」
「悪いが耐えてくれ」
今から恐怖だ。
これ以上怖い事なんてない。魔王様に会うのも平気になった。
「リディオ、そのまま動くなよ」
「動けないよ……」
足がヘロヘロなんだって。
ラヴィアスに抱きしめられたけれど、そのまま動かない。
やけに長い。
「何してるの?」
「香りを移している」
香り?
疑問に思っていれば、ユルがクスクスと笑う。
「ふふっ。人間の香りは薄いんですよね。だから、普段のリディオからはラヴィアス様の香りがします」
「え? 俺からラヴィアスの香りがするの?」
「そうです。寝る時も一緒ですからね。更に香りを付けて、自分のものだと主張しているんです。マーキングですね」
だからいつも抱きしめて寝るの?
「よし。これぐらいでいいか?」
ラヴィアスが離れたら、自分の腕の匂いを嗅いでみる。
何も香ったりしない。人間の俺にはわからないみたいだ。
「今のままだと、移り香みたいなものですから、すぐに上書きされちゃいます。リディオがユシリスでお昼寝すれば、ユシリスの香りになりますし、最近はフォウレの香りがしますね」
フォウレが尻尾を撫でさせてくれるから、ついもふもふを……。
「キスしちゃえば早いのですが……」
「キス⁉︎」
「ええ。体液を体に入れれば、しばらくは強く香るでしょうね」
な、なるほど……?
わかるようなわからないような?
「リディオにはまだ早い」
「ふふっ。唾液ぐらいならいいでしょうに」
「うるさい。行くぞ」
気を取り直して、バルコニーから城の中に入って行った。
あまり大きくなりたくないと思っていても成長は止められない。
そんなある日、シャールちゃんがやってきて、俺を真っ黒な正装に着替えさせた。
パーティーとかで見るような燕尾服だ。
髪も後ろにセットされて、爪も磨かれた。
「ねぇ、今日、何かあるの?」
「え? リディオ聞かされていないのですか? 今日は、魔王城で開かれるパーティーに出席するんですよ」
「へぇ。魔王城ね──え⁉︎ 俺が⁉︎」
「はい! そうですよ。こら、動かないで下さい」
魔王城……行った事がないけれど、俺が行ってもいいんだろうか?
だって、俺は……人間だよ?
戸惑っていれば、同じような燕尾服に着替えているラヴィアスが部屋にやってきた。
ラヴィアスも髪を後ろにセットしていて、オデコ見える。すごいカッコいい。
俺がラヴィアスに何か言う前に、シャールちゃんがラヴィアスに怒ってくれた。
「ラヴィアス様、リディオにちゃんと説明していないんですか?」
「ああ……言ってなかったかもしれない」
「ダメですよ! リディオだって心の準備が必要だと思います」
その通りだ。
「そうか……すまない。リディオ、これから魔族の集まるパーティーに行く。父上がお前に会いたいんだそうだ」
父上って……魔王様⁉︎
俺に会いたいなんて……何を言われるのかな……。
その後はものすごい緊張で、何をしたのか覚えていない。
ラヴィアスとユルは、バルコニーに出て、翼を広げる。
どうやって行くのかと思ったら、ラヴィアスに抱っこされて空を飛んで行くらしい。
空を飛ぶの初めてだ。
「リディオ、来い」
恐る恐るラヴィアスの首に捕まれば、背と足に腕を回されてお姫様抱っこされた。
この体勢が運びやすいらしい。
バサリッと羽根の音がすれば、ラヴィアスがそのまま空を飛んだ!
グンッと引っ張られるような感覚がして、血の気が引く。
こ、これは……めちゃくちゃ怖い!
思わずラヴィアスに捕まる腕に力が入る。
「怖い怖い怖い!」
どこを見ていても目眩がしてクラクラする。
「大丈夫だ。目を瞑っていろ」
言われた通りにギュッと目を瞑った。
思いっきり高所恐怖症になってんじゃんかぁ!
「おや? リディオは高い所好きでしたのに、嫌いになってしまったんですね」
ユル……高所恐怖症になったのはユルのタカイタカイのせいだからね! 言わないけどさ!
「ラヴィアス! 落とさないでね!」
「私がお前を落とすわけないだろう」
必死に抱きつく。
「おやおや。そんな事されたら可愛くてしょうがないですね」
「ユル、黙っていろ」
「私も今度リディオを連れて飛んでみたいですね」
「ダメだ」
二人が何か喋っているけれど、怖くて話が入ってこない。
しばらく恐怖に耐えれば、風を感じなくなって、羽根の音もしなくなった。
「リディオ、着いたぞ」
そっと目を開ければ、ラヴィアスの城と同じようなバルコニーの上だった。
そっと降ろされたけれど、足がヘロヘロで倒れそうになってしまい、ラヴィアスが腰を支えてくれた。
「大丈夫か? 高い所は苦手か……」
「もしかして……帰りも同じ?」
「悪いが耐えてくれ」
今から恐怖だ。
これ以上怖い事なんてない。魔王様に会うのも平気になった。
「リディオ、そのまま動くなよ」
「動けないよ……」
足がヘロヘロなんだって。
ラヴィアスに抱きしめられたけれど、そのまま動かない。
やけに長い。
「何してるの?」
「香りを移している」
香り?
疑問に思っていれば、ユルがクスクスと笑う。
「ふふっ。人間の香りは薄いんですよね。だから、普段のリディオからはラヴィアス様の香りがします」
「え? 俺からラヴィアスの香りがするの?」
「そうです。寝る時も一緒ですからね。更に香りを付けて、自分のものだと主張しているんです。マーキングですね」
だからいつも抱きしめて寝るの?
「よし。これぐらいでいいか?」
ラヴィアスが離れたら、自分の腕の匂いを嗅いでみる。
何も香ったりしない。人間の俺にはわからないみたいだ。
「今のままだと、移り香みたいなものですから、すぐに上書きされちゃいます。リディオがユシリスでお昼寝すれば、ユシリスの香りになりますし、最近はフォウレの香りがしますね」
フォウレが尻尾を撫でさせてくれるから、ついもふもふを……。
「キスしちゃえば早いのですが……」
「キス⁉︎」
「ええ。体液を体に入れれば、しばらくは強く香るでしょうね」
な、なるほど……?
わかるようなわからないような?
「リディオにはまだ早い」
「ふふっ。唾液ぐらいならいいでしょうに」
「うるさい。行くぞ」
気を取り直して、バルコニーから城の中に入って行った。
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