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二人で見れるね *

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 家に帰ったら、父も母もいなかった。

「毎年二人で祭りに行くんだよ。花火が終わるまで帰ってこない」

 どうりで浴衣が何着もあるわけだ。
 そういえば、中学になるまでは、家族四人で行っていたなとぼんやりと思う。

「涼は、いつも家にいるのか?」
「僕は、祭りには興味がないからね」
「じゃあ、なんで今日は来たんだ?」
「雅哉に嫉妬したんだ。夏祭りの日は、いつも雅哉に取られてしまうからね。見つけて家に連れて帰ろうと思ってた」

 そんな風に言われると反応に困る。
 あんなに帰る事にこだわっていたのはその為か。
 まんまと見つけられて連れて帰られたわけだ。
 どうやっても涼の思い通りになってしまう自分に笑ってしまう。

「やっぱり行かせなきゃ良かったな」

 微笑みながらそっと頬を撫でられる。
 反応に困るんだって……。

「家から花火が見れるんだ」
「え? そうなのか?」
「おいで」

 浴衣のまま手を繋がれて、二階に誘導される。
 涼の部屋に入ると、真っ暗な部屋のまま窓のカーテンを開けた。
 涼の隣に立って窓の外を見る。
 天気は良くて、月がよく見えた。

「ほら、神社の明かりが見えるよ」
「あ、本当だ。涼の部屋から見えるなんて知らなかった」

 涼が指差した方向に見える、賑わっているであろう祭りのあかり。

「ハルが一人で祭りに行ってしまうようになってから、ここで花火を見てたんだ。どこかで花火を見上げているハルと、一緒に見ている気がしてた」

 窓の外を見ながら、懐かしそうに微笑む涼は、月明かりに照らされて綺麗だった。
 一人きりの家でここから花火を見ている涼を思い浮かべたら胸がキュッと鳴った。

「ハル……今年は二人で見れるね」
「うん……」

 涼は、いつから俺を好きなんだろう。
 口ぶりからすると、俺が中学になって雅哉達と夏祭りに行くようになってから、毎年ここで花火を見ていたようだ。
 そんな前から俺を?

「ねぇ、ハル。愛してるよ」

 考え込んでいれば、突然告白されて顔が熱くなった。
 それを見てクスクスと笑われた。
 涼は、時たまストレートに気持ちをぶつけてくる。

「真っ赤だね」
「嘘だ。暗いからわからないはず」
「本当だよ。可愛い」

 涼は俺の頰に触れて、ゆっくりと近付いてくる。
 キスの気配にはもう慣れた。
 触れ合った唇の感触を確かめるように、何度も触れては離れるのを繰り返す。
 そのうちに、舌を突き入れてくる。それに舌を絡める。

「んっ……はっ……」

 自然とこぼれた声が部屋に響く。
 クチュリと音がした。
 頰を包む涼の手の甲にそっと手を乗せた。

 それからすぐに、ドォンという音が遠くで聞こえた。

「花火……始まった」
「そうだね……」

 それなのに、涼から視線を逸らせない。
 涼も俺から視線を逸らさなかった。

 何度も繰り返されるキスに応える。
 そのうちに、涼は腕を背に回してきた。
 俺もそっとその涼の腕を掴む。
 体が近付いて、涼のモノが臍の辺りに当たった。

「勃ってんじゃん」

 唇が離れた瞬間に揶揄うように笑ってやった。

「僕は、こうやってハルに触れるだけで勃つんだよ。ほら」

 恥ずかしがるどころか、手を取られて涼のモノに押し付けられた。
 涼のモノはもうギンギンで、はち切れんばかりの欲望を思わせる。
 びっくりして手を引いた。

「涼って……変態だな」

 そんな事を照れ隠しに言った。

「ふふっ。ハル限定のね。そういうハルだって勃ってるくせに」

 その通りなので反論はしない。
 涼は嬉しそうに唇を重ねてくる。
 そのうちに浴衣の合わせに手を入れてくる。
 肌着の下の素肌に触れて、撫でようとする。 

「んっ……やめろ……浴衣が皺になる……」
「そうだね……今はキスだけで我慢するよ。だから、夜しようね?」
「やだって言ってもするんだろ?」
「ふふっ。わかってきたね」

 クスクス笑う涼にため息をつけば、またキスが再開だ。
 俺達は、花火が上がっている間、花火も見ないでキスしてた。
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