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本編
不思議な出来事
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「あれ? まただ……」
最近私物が無くなる。
最初は、鉛筆だったり消しゴムだったりした。
気のせいかと思ったけれど、上履きは勘違いじゃないよな……。
新しい物を買わないといけないけれど、余計な出費は家計に響く。
がっかりしながらスリッパで学園内にある何でも揃うという売店へ向かっていれば、途中で鷲也に会った。
「兎和ですか? どうしたのですか? こちらの方角は──売店に行く所ですか?」
「そう」
「上履き、ないのですか?」
俺の足元を見て、気付いたようだ。
「なんかなくなっちゃって……」
「私のあげます」
「え?」
ニッコリと笑って履いていた上履きを脱いだ。
「これ、古いやつです。ちょうど替えようと思っていました。いっぱいあります。気にせず使って下さい」
「いいの?」
「はい。遠慮せずどうぞ」
正直ありがたい。
古いと言いつつ前の俺の上履きより綺麗で新しそうだ。
王子様スマイルが神様みたいにキラキラと眩しく見える。
「鷲也、ありがとう!」
鷲也に感謝しつつ、私物の管理を徹底することに決めた。
なるべく個人で使用できるロッカーに鍵をかけて、そこに私物を入れるようにした。
◆◇◆
またある時。
下校しようと校舎の横を歩いていた時だった。
「避けて!」
「え?」
バシャリ!
誰かの掛け声で上を向いた時はもう遅かった。
2階から降ってきた水を被った……。
これ、水だよな?
髪や制服からポタポタと雫が垂れる。
この学園は業者が入るので、掃除とかないはずだよな……。
なのになんで?
「こらぁ! 誰⁉︎ ちゃんと謝りなよ!」
呆然としていれば、羊助が見ていたようで、こちらに来てくれた。
「ごめんなさーい」
そんな声を遠くに聞きながら、動けなかった。
一応謝ってもらったからいいか……。
「逃げたよ! 信じらんない! 兎和大丈夫⁉︎ 服乾かしに行こ!」
羊助に連れられて、遊戯室へ行った。
ベッドでゴロゴロしている紫狼が俺を見て不思議そうにした。
「あれぇ? 兎和ぁ? 今日雨だったのぉ?」
「いや……」
「水かけられたの! そいつら逃げたんだよ!」
羊助は、俺よりも怒ってくれているみたいだ。
タオルを出してくれて、拭いてくれる。
「本当信じらんない」
「ただの水で良かった。乾かせばいいだけだ。それに、謝ってもらった。わざとじゃないと思う」
「そうかなぁ……」
納得いかないような顔の羊助に微笑む。
こんなに心配してくれるのは嬉しい。
「羊助、ありがとう」
「えへへっ」
羊助は、少し照れたようだ。
ニコッとする笑顔が可愛らしい。
紫狼がニコニコと手招いた。
「兎和ぁ。せっかく来たんだしぃ、制服乾かす間ぁ、オレと寝よぉ」
「なんでだよ……」
◆◇◆
そして……特別室に行く前に、階段を降りていたら、下から走ってきた誰かにドンッとぶつかった。
「あ! ごめんなさぁーい」
そんな声を背中越しに聞きながら、落ちていくのをスローモンションのように感じた。
嘘だろ⁉︎ シャレにならない!
訪れるであろう痛みの予感にギュッと目を閉じた。
次にドンッと体に当たった感触は、あまり痛くなかった。
ふわりと香った覚えのある香りに、恐る恐る目を開けた。
目に飛び込んできたのは、俺を抱きとめてくれた紫狼だった。
俺が落ちたのは、紫狼の胸の中だった。
「あはっ。びっくりしたぁ。兎和が上から降ってきた」
「紫狼……あ、ありがと」
「大丈夫ぅ? 怪我なぁい?」
「ああ……」
階段の上を確認すれば、もう誰もいなかった。
まさかぶつかるなんて思っていなかったから、顔も覚えていない。
謝ってたし、偶然だよな……?
さすがに階段から落ちそうになったのは恐怖で震えてくる。
「震えてる……」
「ごめん……ちょっと怖かったから……」
「オレと行こぉ」
そのまま遊戯室に連れてかれて、ベッドに寝かされた。
胸をトントンと叩いてくる。
子供を寝かしつけるみたいだ。
「なんで……?」
「寝て忘れるぅ」
のほほんとした紫狼らしくて笑えた。
「ははっ。そう簡単に寝れない」
「じゃあ、添い寝してあげるぅ」
断る暇もなく紫狼は布団に入ってくる。
ギュッとされるとトクンットクンッと鳴る紫狼の心臓の音が心地良い。
震えも治まって、紫狼の良い香りになんだか安心した。
「紫狼……本当にありがと……」
「ううん。オレのがありがとう、だよぉ」
「どうして?」
「ふふっ。一緒に寝よぉ」
まぁいっか……。
紫狼と一緒に目を閉じた。
10分ぐらいで、羊助達が来て目が覚めた。
すっかり寝入っている紫狼の腕から抜け出すのは大変だ。
二人に手伝ってもらって、紫狼の腕からやっと抜け出して特別室へ顔を出した。
紫狼の匂いがすると獅貴にめちゃくちゃ匂いを嗅がれた……。
最近私物が無くなる。
最初は、鉛筆だったり消しゴムだったりした。
気のせいかと思ったけれど、上履きは勘違いじゃないよな……。
新しい物を買わないといけないけれど、余計な出費は家計に響く。
がっかりしながらスリッパで学園内にある何でも揃うという売店へ向かっていれば、途中で鷲也に会った。
「兎和ですか? どうしたのですか? こちらの方角は──売店に行く所ですか?」
「そう」
「上履き、ないのですか?」
俺の足元を見て、気付いたようだ。
「なんかなくなっちゃって……」
「私のあげます」
「え?」
ニッコリと笑って履いていた上履きを脱いだ。
「これ、古いやつです。ちょうど替えようと思っていました。いっぱいあります。気にせず使って下さい」
「いいの?」
「はい。遠慮せずどうぞ」
正直ありがたい。
古いと言いつつ前の俺の上履きより綺麗で新しそうだ。
王子様スマイルが神様みたいにキラキラと眩しく見える。
「鷲也、ありがとう!」
鷲也に感謝しつつ、私物の管理を徹底することに決めた。
なるべく個人で使用できるロッカーに鍵をかけて、そこに私物を入れるようにした。
◆◇◆
またある時。
下校しようと校舎の横を歩いていた時だった。
「避けて!」
「え?」
バシャリ!
誰かの掛け声で上を向いた時はもう遅かった。
2階から降ってきた水を被った……。
これ、水だよな?
髪や制服からポタポタと雫が垂れる。
この学園は業者が入るので、掃除とかないはずだよな……。
なのになんで?
「こらぁ! 誰⁉︎ ちゃんと謝りなよ!」
呆然としていれば、羊助が見ていたようで、こちらに来てくれた。
「ごめんなさーい」
そんな声を遠くに聞きながら、動けなかった。
一応謝ってもらったからいいか……。
「逃げたよ! 信じらんない! 兎和大丈夫⁉︎ 服乾かしに行こ!」
羊助に連れられて、遊戯室へ行った。
ベッドでゴロゴロしている紫狼が俺を見て不思議そうにした。
「あれぇ? 兎和ぁ? 今日雨だったのぉ?」
「いや……」
「水かけられたの! そいつら逃げたんだよ!」
羊助は、俺よりも怒ってくれているみたいだ。
タオルを出してくれて、拭いてくれる。
「本当信じらんない」
「ただの水で良かった。乾かせばいいだけだ。それに、謝ってもらった。わざとじゃないと思う」
「そうかなぁ……」
納得いかないような顔の羊助に微笑む。
こんなに心配してくれるのは嬉しい。
「羊助、ありがとう」
「えへへっ」
羊助は、少し照れたようだ。
ニコッとする笑顔が可愛らしい。
紫狼がニコニコと手招いた。
「兎和ぁ。せっかく来たんだしぃ、制服乾かす間ぁ、オレと寝よぉ」
「なんでだよ……」
◆◇◆
そして……特別室に行く前に、階段を降りていたら、下から走ってきた誰かにドンッとぶつかった。
「あ! ごめんなさぁーい」
そんな声を背中越しに聞きながら、落ちていくのをスローモンションのように感じた。
嘘だろ⁉︎ シャレにならない!
訪れるであろう痛みの予感にギュッと目を閉じた。
次にドンッと体に当たった感触は、あまり痛くなかった。
ふわりと香った覚えのある香りに、恐る恐る目を開けた。
目に飛び込んできたのは、俺を抱きとめてくれた紫狼だった。
俺が落ちたのは、紫狼の胸の中だった。
「あはっ。びっくりしたぁ。兎和が上から降ってきた」
「紫狼……あ、ありがと」
「大丈夫ぅ? 怪我なぁい?」
「ああ……」
階段の上を確認すれば、もう誰もいなかった。
まさかぶつかるなんて思っていなかったから、顔も覚えていない。
謝ってたし、偶然だよな……?
さすがに階段から落ちそうになったのは恐怖で震えてくる。
「震えてる……」
「ごめん……ちょっと怖かったから……」
「オレと行こぉ」
そのまま遊戯室に連れてかれて、ベッドに寝かされた。
胸をトントンと叩いてくる。
子供を寝かしつけるみたいだ。
「なんで……?」
「寝て忘れるぅ」
のほほんとした紫狼らしくて笑えた。
「ははっ。そう簡単に寝れない」
「じゃあ、添い寝してあげるぅ」
断る暇もなく紫狼は布団に入ってくる。
ギュッとされるとトクンットクンッと鳴る紫狼の心臓の音が心地良い。
震えも治まって、紫狼の良い香りになんだか安心した。
「紫狼……本当にありがと……」
「ううん。オレのがありがとう、だよぉ」
「どうして?」
「ふふっ。一緒に寝よぉ」
まぁいっか……。
紫狼と一緒に目を閉じた。
10分ぐらいで、羊助達が来て目が覚めた。
すっかり寝入っている紫狼の腕から抜け出すのは大変だ。
二人に手伝ってもらって、紫狼の腕からやっと抜け出して特別室へ顔を出した。
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