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番外編

兎和と圭虎 side圭虎

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「あ! このぬいぐるみ、第二弾が出たんだ。そこの棚にある、兎和が好きなやつだよね」

 羊助が特別室で見ていたパソコンの画面に映し出されていたのは、ベッドの脇の棚の上に置いてある動物シリーズの第二弾。
 可愛いぬいぐるみだ。

「え! 見せて!」

 兎和が目を輝かせてパソコンの画面を覗き込む。
 そこに映っているキュルンッとした瞳の可愛いヒツジとナルシストっぽいワシ。
 威嚇するヒョウと懐の広そうなウマ。

 前回の4匹と同じ大きさでクレーンゲームで取れるらしい。

「欲しいなぁ……」

 兎和がボソリと呟いた。

 そうなると俺の出番だ。

 ゲーセンへ行けば、目当ての物がクレーンゲームの景品として並んでいる。
 ワシとヒョウとウマは、そんなに苦労しないで取れた。

「なんだこのヒツジ……コロコロしやがって」

 無駄にふわふわとしたヒツジはクレーンのアームからコロリと落ちる。
 誰かに似ている気がしてイライラとしてきた。

「こいつ、取ったらぜってぇ殴る」

 声が聞こえているのか知らないけれど、ヒツジは取られまいとして逃げてしまう。
 途方に暮れた頃に、誰かに声をかけられた。

「あれれ? 圭虎じゃん」

 見れば、ヒツジのぬいぐるみを抱えた羊助だった。

「お前、それ……」
「あははっ。可愛いでしょう」

 これ……羊助に似てるんだ。
 羊助二号……殴りてぇ。

「兎和が喜ぶからあげようと思って」
「なんでそれだけなんだよ」
「だって、これが一番可愛いもん」

 何度やっても取れなかったのに!
 羊助は、俺が取ろうとしていたクレーンゲームに残っているヒツジを見てニヤリと笑った。

「もしかしてぇ、ヒツジ取れなかったの?」
「うるせぇ」
「あははっ! だっさぁい」

 こいつ、まじ許せねぇ……。

「じゃあ、これ、圭虎が取ったことにして兎和にあげてもいいよ」
「なんだって? 何か企んでるのか?」
「そんなわけないじゃん。僕も兎和が喜ぶの好きなんだ」
「はぁ? お前も好きだって事かぁ?」
「好きだよ。大好きな友達」

 羊助は優しく微笑む。
 そんな顔もするのかと思う。

「だから、兎和を泣かせないでね」
「泣かせるわけねぇじゃん。ベッドの中じゃわからないけどな」

 ニヤリと笑えば、羊助はクスクスと笑った。

     ◆◇◆

 次の日に、4匹揃ったぬいぐるみを特別室に持っていった。
 俺達のダブルベッドに4匹転がして、兎和が来るのを待った。

「圭虎、早速取ってきたな」

 ぬいぐるみを獅貴がコロコロと転がす。

「兎和のものなんだから触るなよ」
「やっぱりタカが一番可愛いですね」

 そんな事を言う穂鷹を睨む。
 一番可愛いのはトラだ。

 お昼は人数が増えたから、学食で食べる事が多くなった。
 そうなると、兎和が特別室に来たのは放課後だった。
 目を輝かせてダブルベッドに寝転んだ。
 ヒツジのぬいぐるみをギューッと抱きしめた。可愛い。
 すかさずその横に寝転ぶ。

「兎和。どうだ?」
「嬉しい。圭虎、ありがとう」

 顔を綻ばせる兎和に嬉しくなる。
 この顔が見たかった。

「じゃあ、キスでもしろ」

 いつもの冗談だ。
 それなのに、兎和は少し照れながら、俺のほっぺにチュッとしてくれた。
 やばい……嬉し過ぎる。

「圭虎はすごいな」

 ニコニコとする兎和を見ていたら、ふとヒツジは羊助が取った事を思い出す。
 このまま俺が取ったことにすればいいんだろうけれど……。

「そのヒツジな……実は羊助が取ったんだ」
「羊助が?」
「俺が取ろうとしたけど取れなくて……羊助が取ったやつくれたんだ」

 俺が取ったと思っていたんだろうな。がっかりしたかな……。
 そう思って兎和をうかがえば、ニッコリ笑う。

「ははっ。圭虎が取った事にしとけば良かったのに」
「兎和にそんな嘘つくの、なんかなぁ……」
「俺、圭虎のそういう真っ直ぐな所、好きかも……」

 思わず兎和をガン見した。
 そんな風に言われるとは思わなかった。
 嬉しくて仕方ない。
 照れたような顔でとても機嫌がいい。

 ど、どういう意味だ?
 これ、やっちゃっていい感じ?
 他の奴らはまだ来ていない。

 転がしていた動物達をこっそり棚の上に置いていく。
 残ったのは兎和が抱えるヒツジだけだ。
 そのまま兎和に布団を掛けて一緒に横になる。

「圭虎?」
「布団の中ならいいだろ?」

 抱きこんでいたヒツジをどかす。
 その代わりに自分がそこに移動して兎和を抱きしめる。

「頑張ったからさ。俺の事も抱きしめてよ……」

 そっと背中に腕を回してくれる。
 やっぱり機嫌がいいみたいだ。
 横になりながら抱き合うのっていいかも……。

 そのまま兎和の制服に手を突っ込んで背中を撫でた。

「ひゃっ……! んっ……圭虎……」

 布団の中は二人だけの世界みたいで心地いい。
 ブレザーとシャツのボタンも外してそのまま乳首に吸い付いた。

「あっ……ん……ぁ……」

 兎和が嫌がってない……!
 相手に受け入れてもらうのって嬉しいんだな……俺はそんな事も知らなかった。

 背中を撫でながら、乳首を舐め回して、スラックスをずらして尻の蕾に指を入れた。

「んっ、あっ、ふぁっ……!」

 三箇所同時に攻められて悶える姿がたまらない。
 兎和も気持ち良さそうだ。

「けいと……」

 真っ赤になりながら名前を呼ばれて見つめられた。
 強請られているようで我慢できなかった。

 誰かが来る前に挿れてしまおう。
 兎和のスラックスを脱がして、兎和の片足を手で押さえて上げる。
 自分のモノを横向きで抱き合ったまま突っ込んだ。

「んぁ──っ!」

 いつも本能のまま突くだけだった自分では考えられないぐらい優しく兎和と繋がる。
 相手を気遣うなんて事が俺にもできたんだな……。
 ゆっくりとした動きでもこんなにも気持ちいい。

 すると、少ししてガラリとドアを開けた音が室内に響く。獅貴達が来たようだ。

「っ!」

 兎和がビクリと震えて、緩く抱きしめていた腕の力が強くなった。
 俺にすがっているようで興奮する。
 腰を止める事ができない。

 獅貴達はまだ俺達に気付いている様子はない。
 何か話しながらソファに座ったようだ。

「ん……んんっ……んぁっ……! けぃとっ……!」
「ほら……声出すと聞こえるぞ……」

 布団の中で囁いた。

「んっ……んっ……ふっ……はっ……」

 獅貴達に聞こえない様にと必死で声を我慢する兎和が可愛い。
 真っ赤になりながら、恥ずかしいのに気持ちいいという顔がたまらない。

「兎和……大好きだ……俺……お前がいい」

 ふと胸のキスマークが目に入って、そこにある自分のキスマークを付け直す。
 奴隷の時と変わらない三角形のマークに優越感と嫉妬が混じる。

「俺はっ……圭虎だけを……選べない……」
「いいんだ。俺がお前じゃなきゃダメなんだから。他でなんかできるかよ……」
「わかった……それなら……好きにしていい……」

 俺を抱きしめていた兎和の腕がギュッと強くなった。

「兎和……!」

 こうやって段々と受け入れてくれるようになった兎和に、こんなにも翻弄されてしまった。
 我慢できなくなって上に覆い被さって激しく突いた。
 激しく攻めれば、ベッドも軋む。
 兎和も喘ぐ声が我慢できなくて、布団の中に響いてよく聞こえた。

 独り占めできないなら諦める? そんな簡単な気持ちの訳がない。
 独り占めできない事よりも、兎和と一緒にいれなくなる方がもっと嫌だ。
 あいつらもみんな同じ気持ちなんだろう。

 あいつらよりも気持ち良くして、大事にしてやりたい。

 すると、バサリと布団を剥がされた。
 いい所なのに!

 獅貴と穂鷹に邪魔された。
 じっとりと睨まれる。
 まぁ……激しく動けばそうなるな。

「ぬいぐるみで釣るなんて……」
「兎和、圭虎としたら私ともするんですよ」
「兎和がもうすぐイキそうなんだから邪魔すんなよ!」
「あんっ! あっ……見ないで……!」

 二人に自慢するように兎和の乱れる姿を見せびらかしてやった。

     ◆◇◆

「あ……圭虎さん……」

 廊下で偶然千鹿に会った。
 少し怯えたような千鹿を見つめる。

 紫狼から兎和にした事を聞いた時はやっぱりムカついた。
 けれど……今は必死で俺を好きだったんだとわかる……。
 俺は千鹿の事をほんの少しも気にしていなかった。
 体だけの関係でいいと、やれればいいからと言われて、ただ利用していた。
 千鹿に酷い事をさせたのは、俺の責任でもあるのかもしれない……。

「千鹿……」
「は、はい……」
「ごめんな……」
「え……」

 俺が謝るなんて千鹿には余程衝撃だったようだ。
 呆然とする顔がなんか笑える。

「なんて顔してんだよ」

 そっと頬を抓れば、くしゃりと泣きそうな顔をする。
 
「圭虎さんを変えたのは……あの人ですか?」
「そうだな……兎和がいなきゃ人の気持ちもわからないままだったかもな……」
「本当に……ごめんなさい……」

 泣き出した千鹿を見て、もう二度と間違えないで欲しいと思う。

「もっと自分を大事にしろよ。なんて、俺が言える事じゃないな」
「そんな事ないです……」
「もう俺みたいなやつを好きになるなよ」

 千鹿の頭をポンポンと叩いてから、特別室へと足を向けた。

 特別室に入れば、動物シリーズの前でニコニコする兎和を見つける。
 兎和の近くに行って、8匹と大所帯になった動物達を眺めた。
 棚の上が狭そうだ。

「なぁ、兎和はどれが一番気に入ってるんだ?」

 ふと気になって問いかけた。
 すると、迷う事なくスッとトラのぬいぐるみを抱きしめた。

「やっぱり圭虎二号だな。初めてもらったプレゼントだったし、圭虎と遊んだの……楽しかった……」

 照れたように笑った兎和に欲情して、抱きついてその勢いのままベッドに押し倒した。
 こんなにも大好きな人と一緒にいられるのは奇跡だ。

「また遊びに行こうな……」
「うん……」

 我慢なんて性に合わない。
 俺はいつだって兎和と繋がりたい。
 大好きだと伝えるキスをしていれば、すかさず獅貴達に引き離された……。
 次の休みには兎和の行きたい所に連れてってやろう。
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