5 / 6
5
しおりを挟む
敢えて部屋の明かりはつけずに、外から差し込む自然光で彼女のために誂えたステンドグラスの美しさを楽しむ。フカフカのベッドには新品のシーツ。ベッドの隣に置いたサイドチェストの上には、花飾りのテーブルランプ。必要なものは揃えたつもりだけれど、彼女は他にも置いて欲しいものがあるだろうか。全てが落ち着いたら、今度は二人であのアンティークショップに行くのもいいかもしれない。
もう、いつでも彼女を迎えられる。彼女はきっと、この部屋を見たら目を輝かせて喜んでくれるに違いない。これから始まる彼女との生活を思うと、幸せな気分になる。でも、その一方で不安な気持ちもあった。
もしも彼女がこの家を気に入ってくれなくて、帰りたいと言ったら?あの男に脅されていて、あの男の元に帰らなければならないと言い出したら?
時間はいくらでもあるのだし、いつまでかかってでも僕はここを彼女に気に入ってもらえる家にするつもりだ。でも、彼女がそれを待ちきれずに、ここから帰らせて、と言うことは、ないだろうか?
彼女の願いなら何でも叶えたいけれど、危険を伴うことはさせられない。あの男の手の届く範囲に帰すなんてもってのほかだ。
そう。時間はいくらでもあるんだ。正面から向き合って話し合えば必ず分かり合える。僕は彼女を心から大切に思っていて、絶対に守ると決めたのだから。
僕のそばにいることが、彼女にとって、二人にとっての幸せなんだ。
すっかり気に入ってしまったステンドグラスに目をやると、天使は穏やかな表情で目を閉じている。彼女のためにできる最善を尽くしなさい、と言われた気がした。
*
こんな山奥だからか時間がかかったけど、数日前に注文した品が届いた。ダンボールを開けると、中にはジャラリと音を立てる拘束具が入っている。
僕は、考えうる全ての状況に対応できるように、例え無駄になったとしてもどんな準備も怠らない。彼女がもしも錯乱したり、あの男に脅されてここから帰らなければ、と言い出したらいけないから、一時的に彼女をここに留めておけるようにと、こんなものまで用意したんだ。
勿論、こんなもの使わずに済むならそれが一番いい。僕だって使いたいわけじゃない。例えこれを使うような事態になったとしても、いつかはきっと、僕がどれだけ本気で彼女を危険から守ろうとしているか、彼女は分かってくれるはずだ。
もう、これ以上はないというほど準備は万端だ。あとは、あの天国のような部屋の主人となる、愛しい人を迎えに行くだけ。
明日、彼女をここに連れて来よう。
一人だと広すぎて少し寂しい家だけど、彼女が入ってくれれば僕もこの家をもっと好きになれる。そんな予感でいっぱいだった。
もう、いつでも彼女を迎えられる。彼女はきっと、この部屋を見たら目を輝かせて喜んでくれるに違いない。これから始まる彼女との生活を思うと、幸せな気分になる。でも、その一方で不安な気持ちもあった。
もしも彼女がこの家を気に入ってくれなくて、帰りたいと言ったら?あの男に脅されていて、あの男の元に帰らなければならないと言い出したら?
時間はいくらでもあるのだし、いつまでかかってでも僕はここを彼女に気に入ってもらえる家にするつもりだ。でも、彼女がそれを待ちきれずに、ここから帰らせて、と言うことは、ないだろうか?
彼女の願いなら何でも叶えたいけれど、危険を伴うことはさせられない。あの男の手の届く範囲に帰すなんてもってのほかだ。
そう。時間はいくらでもあるんだ。正面から向き合って話し合えば必ず分かり合える。僕は彼女を心から大切に思っていて、絶対に守ると決めたのだから。
僕のそばにいることが、彼女にとって、二人にとっての幸せなんだ。
すっかり気に入ってしまったステンドグラスに目をやると、天使は穏やかな表情で目を閉じている。彼女のためにできる最善を尽くしなさい、と言われた気がした。
*
こんな山奥だからか時間がかかったけど、数日前に注文した品が届いた。ダンボールを開けると、中にはジャラリと音を立てる拘束具が入っている。
僕は、考えうる全ての状況に対応できるように、例え無駄になったとしてもどんな準備も怠らない。彼女がもしも錯乱したり、あの男に脅されてここから帰らなければ、と言い出したらいけないから、一時的に彼女をここに留めておけるようにと、こんなものまで用意したんだ。
勿論、こんなもの使わずに済むならそれが一番いい。僕だって使いたいわけじゃない。例えこれを使うような事態になったとしても、いつかはきっと、僕がどれだけ本気で彼女を危険から守ろうとしているか、彼女は分かってくれるはずだ。
もう、これ以上はないというほど準備は万端だ。あとは、あの天国のような部屋の主人となる、愛しい人を迎えに行くだけ。
明日、彼女をここに連れて来よう。
一人だと広すぎて少し寂しい家だけど、彼女が入ってくれれば僕もこの家をもっと好きになれる。そんな予感でいっぱいだった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる