496 / 509
アフターストーリー
第四百九十五話 最強は初志貫徹す?
しおりを挟む
時間は僅かに遡り、フォルティシモと最果ての黄金竜サイが都内上空の夜空で対峙する少し前。
フォルティシモはVRMMOファーアースオンラインの『サンタ・エズレル神殿』で、マリアステラへ魔王剣を向けたまま、ゼノフォーブから最果ての黄金竜が現代リアルワールドに出現したと聞かされた。
魔法や魔物を世界から排除しているゼノフォーブフィリアにとって、これほどの異常事態はないだろう。
「………まー」
フォルティシモとマリアステラの間へ、黒髪紅目の少女ゼノフォーブが割り込んでくる。フォルティシモへ背を向けて、マリアステラと対峙する形のため、フォルティシモを制止してマリアステラと話したいのだと窺えた。
それからゼノフォーブは悔しそうに言葉を絞り出す。
「神戯は、引き分けとしたい。代わりに、吾らがこの神戯開催のために用意したエネルギーで、浄化を頼む」
「もちろん良いよ、ぜー。私は親友の頼みを無碍にするような“人でなし”じゃないからね」
「引き分けにするだと?」
フォルティシモは前回の拠点攻防戦も引き分けにしたものの、あれは引き分けこそが目標だった。対して今回は明確に勝利を目指していたので、意味がまるで違う。
「其方も不本意なのは分かる。吾は負けていた。其方の力で勝利できた。しかし、あの竜神は其方の落ち度だ。引き分けならば其方には何の不利益もないのだから、それで納得して引き下がれ」
「納得させたいなら、もっと詳しく話せ」
「つまりね、魔王様。最果ての黄金竜を見た者たちの認識、そしてバラまいている魔の力。それによる世界の歪み。私なら、それを修復できる」
フォルティシモの疑問にはマリアステラが代わりに答える。
最果ての黄金竜が出現した現代リアルワールドで、今から世界中にそれが嘘幻の出来事だったと認識させるなど不可能に思えた。
だがそれこそ無敵の女神マリアステラの真骨頂である。どれだけ可能性が低かろうとも、ゼロでなければ実現することが可能だ。
「それならお前が負けた後にやれば良いだろ?」
「私が負けて意気消沈した後にやれって、酷すぎじゃない?」
「神戯で勝利者が決まれば、注ぎ込んだエネルギーが使われてしまう。加えて其方が言い出したことも問題になる」
フォルティシモはこの神戯が始まる前、自分がマリアステラへ言った言葉を思い出す。
―――俺が勝ったら、最強のフォルティシモが居る限り、他の神や人へちょっかいを掛けるな
「ここで魔王様が勝ったら、私はぜーの世界を救えない」
言葉の意味として『ちょっかい』とは余計な干渉であり、フォルティシモは『誰かに迷惑を掛けるな』という意味で使った。しかし余計な干渉や迷惑とは、どこまでがそうなるのだろうか。
「世界に黄金のドラゴンが実在したことを“無かった”ことにするのは、あらゆる人類にとって幸福な話? 魔法や魔力を習得する機会を奪われて嬉しい? 世界が変わった瞬間に居合わせた今は、無いほうが良い?」
フォルティシモは応えられなかった。
マリアステラが両手をポンと叩く。
「残念だけど魔王様、今回の神戯はここまでだね。本当に魔王様から“まー”って呼んで欲しかったのに。上手く行かなくて、もう、最高に最高で最高だよ。ああ、魔王様と戦うのは楽しいなぁ」
フォルティシモは、この場でマリアステラを倒せば、現代リアルワールドは二度と元へ戻らないかも知れない状況を理解した。
理解した上で、マリアステラの顔面へ向かって、思いっきり右ストレートを繰り出した。
「げふっ!?」
フォルティシモの右ストレートが顔面に直撃したマリアステラは、『サンタ・エズレル神殿』の床に転がる。そしてマリアステラは地面に転がったまま、フォルティシモを見上げてきた。
「ちょ、ちょ、ええ!? 魔王様? 何してるの!? 神戯は引き分けでしょ?」
「だからどうした?」
「どうしたって、ここで私を倒しても、何も得るものはないんだけど?」
「お前は俺のファンを自称している癖に知らなかったか? 最強のフォルティシモは、気に入らない奴を何処までも追い掛けて、何の得もなくてもPKし続ける」
初めてマリアステラの額から冷や汗が流れた気がする。
最果ての黄金竜サイのことは、フォルティシモの責任になるのが納得はできないが理解はできる。だから神戯が引き分けとして中止されることも受け入れた。
それはそれとして、マリアステラをぶん殴るという目標は達成する。
「わ、吾と共に世界を守るのだと言っていただろう!?」
ここでマリアステラを倒されたら困るゼノフォーブがマリアステラを庇い始めた。マリアステラは床をカサカサと歩いて、ゼノフォーブの背中に隠れる。
「サイが大量虐殺してるなら別だが、今はまだ、ただ飛んでるだけだろ?」
「その時点で大問題だ。其方はまーと同じ、神は人を支配するべきという思想か?」
「そこまで先鋭化はしていない。ただ俺は、マリアステラの思うように事態が動いているのが気に入らない。サイよりも先に、こいつをぶちのめすべきだ」
ゼノフォーブの背中に隠れたマリアステラが、ゼノフォーブを強く抱き締めた。
「ということで、ぜー、私を守って? 魔王様と戦うための戦力は準備してあるでしょ?」
「この事態を見越して、吾に最強の神と戦うことになったら救援してくれるように求め、準備をさせていたのか」
「なんだゼノフォーブフィリア、俺と戦う気だったか。神戯が終わったら俺を背中から撃つ気だったなら、なかなかしたたかだな」
フォルティシモは思わずゼノフォーブフィリアを見直した。
歴史上の同盟なんて後ろから刺すためにあるとまでは言わないが、新実装ダンジョンを協力して攻略して、最後の最後で他のプレイヤーを皆殺しにするのがフォルティシモのプレイスタイルである。
「違う! 其方の性格が、まーには完全に見抜かれているという話だ!」
「さあ、ぜー! 私のための軍勢を召喚して!」
「とっくに解散している。神戯ファーアースは終わっただろう」
「もう、こういう時のぜーは頼りにならないなぁ」
「吾もまーを殴りたくなって来たぞ」
フォルティシモの目の前で、マリアステラとゼノフォーブフィリアが絡み合いつつ仲良さそうにしている。どこからどう見ても親友同士にしか見えない光景だ。
「仕方ない。対魔王様にしか使えない伝家の宝刀を抜く」
「まだあるのか」
フォルティシモはマリアステラの伝家の宝刀と聞いて、警戒を強めた。
マリアステラの人差し指がフォルティシモの眼前へ掲げられる。
「魔王様、本当に良いの?」
「何がだ?」
「もしリアルワールドがめちゃくちゃになったら、キュウがデートを楽しめなくなるよ?」
そのマリアステラの指が、ゆっくりとキュウの方向を指し示した。
「………………………………………………」
「魔王様には知覚できないけど、私やキュウには分かる。ぜーのリアルワールドが、どれほど美しいか。魔王様は、キュウに楽しんで欲しくないの?」
フォルティシモは沈黙のままキュウを見た。キュウは突然話題を向けられて、困ったように耳と尻尾を動かす。
「あ、あの、私はご主人様が望むことが私の望むことです」
キュウの言葉を聞いて心が決まった。
「俺は最初から、キュウにこの世界を見せてやると約束していたぞ。サイにキュウとデートする予定の場所をこれ以上壊されてたまるか。マリアステラ、俺に協力しろ」
「一緒に頑張ろうね、魔王様!」
フォルティシモたちがVRMMOファーアースオンラインからログアウトを行うと、現実の五感が戻って来て、周囲の光景が荘厳な神殿からコンピュータの腹の中のような部屋へと変化した。
フォルティシモとキュウはヘルメス・トリスメギストス社の社長室で、フォルティシモが持ち込んだソファに寄り添うように座っている。
目の前ではシステムチェアに膝を立てた黒髪紅眼の少女ゼノフォーブフィリアが、フォルティシモをじっと睨み付けていた。
「其方は」
「とにかく、サイの奴だ。グズグズするな、ゼノフォーブフィリアも情報を集めろ」
それからキュウを伴って部屋を出ると、すぐにキュウが状況を教えてくれる。
「ご主人様、サイ様を中心にして、急速に魔力が浸透していくのを聞き取れます」
「俺には感じ取れないが、愉快な状況ではないらしいな」
話している間にポケットに入ってるスマホからアラート音が鳴ったので、起動してメッセージを確認する。ゼノフォーブフィリアがネットワーク封鎖を解いたのか、フォルティシモの従者や知り合いから様々なメッセージが送られて来ていた。
「エン、チェックして、必要なのだけまとめて教えてくれ」
『了解だ』
エンシェントは拠点攻防戦で防衛に回っていたため、ほとんど姿を見せなかった。ただし、実を言うと防衛に回っていたものの、専念していた訳ではない。フォルティシモはエンシェントにある行動を取らせていた。
「ダア、アル、こっちにマリアステラを連れて来い。マリアステラはキュウとゼノフォーブフィリアと協力しろ」
『私を前線じゃなくて支援で使おうとするのは、魔王様くらいだね』
「まずいな。マスコミが早々に近付いている」
ゼノフォーブフィリアも社長室から出て来たようで、立ち姿の周囲にいくつもの3Dホログラムディスプレイを掲げている。
「ここはお前の領域で、お前はこの世界の神なんだろ。人の行動くらい操れないのか」
「私はそれがない世界を創造していると言っているだろう。ここ最近の例外は、すべてまーのせいだ」
「ご、ご主人様、サイ様に近付いている乗り物が、落ちます!」
『そしてその後、ヘリコプター乗員含め十名の死者と三十余名重軽傷者。群衆はパニックになるよ』
フォルティシモがすぐに出陣しなかったのは、未来聴と未来視が味方だからだ。何かあっても事前に対応ができるというのは、これほど心強い。
「もう少し情報が欲しかったが、あとは頼む。自在・瞬間・移動」
フォルティシモの身体はヘルメス・トリスメギストス社の本社ビルから消え、世界有数の大都会の夜空へと移動した。
そして夜空を黄金色に染め上げる巨大なドラゴンの姿を見る。VRMMOファーアースオンラインでは幾度となく、異世界ファーアースでは二度戦った最果ての黄金竜サイ。
その羽ばたきに煽られてヘリコプターが墜落しようとしている。
「光速・飛翔」
フォルティシモはそのヘリコプターを片手で受け止めた。
「おい、サイ、てめぇ、何やってんだ?」
フォルティシモはVRMMOファーアースオンラインの『サンタ・エズレル神殿』で、マリアステラへ魔王剣を向けたまま、ゼノフォーブから最果ての黄金竜が現代リアルワールドに出現したと聞かされた。
魔法や魔物を世界から排除しているゼノフォーブフィリアにとって、これほどの異常事態はないだろう。
「………まー」
フォルティシモとマリアステラの間へ、黒髪紅目の少女ゼノフォーブが割り込んでくる。フォルティシモへ背を向けて、マリアステラと対峙する形のため、フォルティシモを制止してマリアステラと話したいのだと窺えた。
それからゼノフォーブは悔しそうに言葉を絞り出す。
「神戯は、引き分けとしたい。代わりに、吾らがこの神戯開催のために用意したエネルギーで、浄化を頼む」
「もちろん良いよ、ぜー。私は親友の頼みを無碍にするような“人でなし”じゃないからね」
「引き分けにするだと?」
フォルティシモは前回の拠点攻防戦も引き分けにしたものの、あれは引き分けこそが目標だった。対して今回は明確に勝利を目指していたので、意味がまるで違う。
「其方も不本意なのは分かる。吾は負けていた。其方の力で勝利できた。しかし、あの竜神は其方の落ち度だ。引き分けならば其方には何の不利益もないのだから、それで納得して引き下がれ」
「納得させたいなら、もっと詳しく話せ」
「つまりね、魔王様。最果ての黄金竜を見た者たちの認識、そしてバラまいている魔の力。それによる世界の歪み。私なら、それを修復できる」
フォルティシモの疑問にはマリアステラが代わりに答える。
最果ての黄金竜が出現した現代リアルワールドで、今から世界中にそれが嘘幻の出来事だったと認識させるなど不可能に思えた。
だがそれこそ無敵の女神マリアステラの真骨頂である。どれだけ可能性が低かろうとも、ゼロでなければ実現することが可能だ。
「それならお前が負けた後にやれば良いだろ?」
「私が負けて意気消沈した後にやれって、酷すぎじゃない?」
「神戯で勝利者が決まれば、注ぎ込んだエネルギーが使われてしまう。加えて其方が言い出したことも問題になる」
フォルティシモはこの神戯が始まる前、自分がマリアステラへ言った言葉を思い出す。
―――俺が勝ったら、最強のフォルティシモが居る限り、他の神や人へちょっかいを掛けるな
「ここで魔王様が勝ったら、私はぜーの世界を救えない」
言葉の意味として『ちょっかい』とは余計な干渉であり、フォルティシモは『誰かに迷惑を掛けるな』という意味で使った。しかし余計な干渉や迷惑とは、どこまでがそうなるのだろうか。
「世界に黄金のドラゴンが実在したことを“無かった”ことにするのは、あらゆる人類にとって幸福な話? 魔法や魔力を習得する機会を奪われて嬉しい? 世界が変わった瞬間に居合わせた今は、無いほうが良い?」
フォルティシモは応えられなかった。
マリアステラが両手をポンと叩く。
「残念だけど魔王様、今回の神戯はここまでだね。本当に魔王様から“まー”って呼んで欲しかったのに。上手く行かなくて、もう、最高に最高で最高だよ。ああ、魔王様と戦うのは楽しいなぁ」
フォルティシモは、この場でマリアステラを倒せば、現代リアルワールドは二度と元へ戻らないかも知れない状況を理解した。
理解した上で、マリアステラの顔面へ向かって、思いっきり右ストレートを繰り出した。
「げふっ!?」
フォルティシモの右ストレートが顔面に直撃したマリアステラは、『サンタ・エズレル神殿』の床に転がる。そしてマリアステラは地面に転がったまま、フォルティシモを見上げてきた。
「ちょ、ちょ、ええ!? 魔王様? 何してるの!? 神戯は引き分けでしょ?」
「だからどうした?」
「どうしたって、ここで私を倒しても、何も得るものはないんだけど?」
「お前は俺のファンを自称している癖に知らなかったか? 最強のフォルティシモは、気に入らない奴を何処までも追い掛けて、何の得もなくてもPKし続ける」
初めてマリアステラの額から冷や汗が流れた気がする。
最果ての黄金竜サイのことは、フォルティシモの責任になるのが納得はできないが理解はできる。だから神戯が引き分けとして中止されることも受け入れた。
それはそれとして、マリアステラをぶん殴るという目標は達成する。
「わ、吾と共に世界を守るのだと言っていただろう!?」
ここでマリアステラを倒されたら困るゼノフォーブがマリアステラを庇い始めた。マリアステラは床をカサカサと歩いて、ゼノフォーブの背中に隠れる。
「サイが大量虐殺してるなら別だが、今はまだ、ただ飛んでるだけだろ?」
「その時点で大問題だ。其方はまーと同じ、神は人を支配するべきという思想か?」
「そこまで先鋭化はしていない。ただ俺は、マリアステラの思うように事態が動いているのが気に入らない。サイよりも先に、こいつをぶちのめすべきだ」
ゼノフォーブの背中に隠れたマリアステラが、ゼノフォーブを強く抱き締めた。
「ということで、ぜー、私を守って? 魔王様と戦うための戦力は準備してあるでしょ?」
「この事態を見越して、吾に最強の神と戦うことになったら救援してくれるように求め、準備をさせていたのか」
「なんだゼノフォーブフィリア、俺と戦う気だったか。神戯が終わったら俺を背中から撃つ気だったなら、なかなかしたたかだな」
フォルティシモは思わずゼノフォーブフィリアを見直した。
歴史上の同盟なんて後ろから刺すためにあるとまでは言わないが、新実装ダンジョンを協力して攻略して、最後の最後で他のプレイヤーを皆殺しにするのがフォルティシモのプレイスタイルである。
「違う! 其方の性格が、まーには完全に見抜かれているという話だ!」
「さあ、ぜー! 私のための軍勢を召喚して!」
「とっくに解散している。神戯ファーアースは終わっただろう」
「もう、こういう時のぜーは頼りにならないなぁ」
「吾もまーを殴りたくなって来たぞ」
フォルティシモの目の前で、マリアステラとゼノフォーブフィリアが絡み合いつつ仲良さそうにしている。どこからどう見ても親友同士にしか見えない光景だ。
「仕方ない。対魔王様にしか使えない伝家の宝刀を抜く」
「まだあるのか」
フォルティシモはマリアステラの伝家の宝刀と聞いて、警戒を強めた。
マリアステラの人差し指がフォルティシモの眼前へ掲げられる。
「魔王様、本当に良いの?」
「何がだ?」
「もしリアルワールドがめちゃくちゃになったら、キュウがデートを楽しめなくなるよ?」
そのマリアステラの指が、ゆっくりとキュウの方向を指し示した。
「………………………………………………」
「魔王様には知覚できないけど、私やキュウには分かる。ぜーのリアルワールドが、どれほど美しいか。魔王様は、キュウに楽しんで欲しくないの?」
フォルティシモは沈黙のままキュウを見た。キュウは突然話題を向けられて、困ったように耳と尻尾を動かす。
「あ、あの、私はご主人様が望むことが私の望むことです」
キュウの言葉を聞いて心が決まった。
「俺は最初から、キュウにこの世界を見せてやると約束していたぞ。サイにキュウとデートする予定の場所をこれ以上壊されてたまるか。マリアステラ、俺に協力しろ」
「一緒に頑張ろうね、魔王様!」
フォルティシモたちがVRMMOファーアースオンラインからログアウトを行うと、現実の五感が戻って来て、周囲の光景が荘厳な神殿からコンピュータの腹の中のような部屋へと変化した。
フォルティシモとキュウはヘルメス・トリスメギストス社の社長室で、フォルティシモが持ち込んだソファに寄り添うように座っている。
目の前ではシステムチェアに膝を立てた黒髪紅眼の少女ゼノフォーブフィリアが、フォルティシモをじっと睨み付けていた。
「其方は」
「とにかく、サイの奴だ。グズグズするな、ゼノフォーブフィリアも情報を集めろ」
それからキュウを伴って部屋を出ると、すぐにキュウが状況を教えてくれる。
「ご主人様、サイ様を中心にして、急速に魔力が浸透していくのを聞き取れます」
「俺には感じ取れないが、愉快な状況ではないらしいな」
話している間にポケットに入ってるスマホからアラート音が鳴ったので、起動してメッセージを確認する。ゼノフォーブフィリアがネットワーク封鎖を解いたのか、フォルティシモの従者や知り合いから様々なメッセージが送られて来ていた。
「エン、チェックして、必要なのだけまとめて教えてくれ」
『了解だ』
エンシェントは拠点攻防戦で防衛に回っていたため、ほとんど姿を見せなかった。ただし、実を言うと防衛に回っていたものの、専念していた訳ではない。フォルティシモはエンシェントにある行動を取らせていた。
「ダア、アル、こっちにマリアステラを連れて来い。マリアステラはキュウとゼノフォーブフィリアと協力しろ」
『私を前線じゃなくて支援で使おうとするのは、魔王様くらいだね』
「まずいな。マスコミが早々に近付いている」
ゼノフォーブフィリアも社長室から出て来たようで、立ち姿の周囲にいくつもの3Dホログラムディスプレイを掲げている。
「ここはお前の領域で、お前はこの世界の神なんだろ。人の行動くらい操れないのか」
「私はそれがない世界を創造していると言っているだろう。ここ最近の例外は、すべてまーのせいだ」
「ご、ご主人様、サイ様に近付いている乗り物が、落ちます!」
『そしてその後、ヘリコプター乗員含め十名の死者と三十余名重軽傷者。群衆はパニックになるよ』
フォルティシモがすぐに出陣しなかったのは、未来聴と未来視が味方だからだ。何かあっても事前に対応ができるというのは、これほど心強い。
「もう少し情報が欲しかったが、あとは頼む。自在・瞬間・移動」
フォルティシモの身体はヘルメス・トリスメギストス社の本社ビルから消え、世界有数の大都会の夜空へと移動した。
そして夜空を黄金色に染め上げる巨大なドラゴンの姿を見る。VRMMOファーアースオンラインでは幾度となく、異世界ファーアースでは二度戦った最果ての黄金竜サイ。
その羽ばたきに煽られてヘリコプターが墜落しようとしている。
「光速・飛翔」
フォルティシモはそのヘリコプターを片手で受け止めた。
「おい、サイ、てめぇ、何やってんだ?」
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる