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第八章
第三百九十三話 太陽召喚の儀 前編
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大陸中を駆け巡ったデーモンによる女神の神託。それを上書きするように行われた、フォルティシモの魔王託。
「改善は見られるが、戦線の状況はあまり良くないな。まだ女神を信じる者も多い」
フォルティシモはそんなエンシェントの報告を受けても、冷静に受け止めていた。
いや内心はちょっと苛立ったので、目に付いたキュウの尻尾をわしゃわしゃしたお陰で冷静だった。キュウは驚いていたけれど、無言で頷いたら頷き返してくれたので大丈夫だ。
「世界が滅びるって言ってる女神より、これだけ助けてる俺を信じそうなものだけどな」
フォルティシモは物語の英雄のように、フォルティシモの言葉が女神の神託を超えて世界中の人々から支持されて、さすが最強だと言われるのを期待した―――訳ではない。
分かっていた。現実の人々はそう都合良くできていない。
言葉だけで動いてくれる人間は、言葉の通じる人間だけだ。
「フォルティシモ様、この大陸で信仰されていた女神の神託を覆すことは、不可能なはずだったのです。それを効果が悪い、程度に留められたのは最良の結果かと思われます」
フォルティシモはラナリアのフォローを手を掲げて止めた。
「いいか、約束する。次は、この最強のフォルティシモからの託宣は、マリアステラの神託、しかも成り済ましに負けることはない。絶対だ」
「次の機会があるとは思えないが」
「あるかも知れないだろ」
フォルティシモが神戯の主催者である女神マリアステラや、千年間管理運営を行っている太陽神ケペルラーアトゥムの影響力を上書きしなければならないような、そんな機会があるかも知れない。
今はそんな状況は思い浮かばないが、あるかも知れないのだ。
フォルティシモたちが信仰心エネルギーの盛衰を気に掛けている間にも、大氾濫は止まらない。
地上を洗い流す水の如く無限に魔物が発生するため、フォルティシモたちや人々の混乱などお構いなしに戦いは続いている。
偽りの女神の神託のせいで、各地で脱走者が報告され、いくつかの戦線では撤退を余儀なくされてしまった。しかし報告の通り最悪の結果とはならない。各地で奮戦する者がいて、またフォルティシモの言葉を信じてくれる者がいた。
そんな中でフォルティシモは仲間たちへ宣言する。
「作戦変更だ。俺が一撃、大氾濫の魔物へ喰らわせてやる」
「本気か?」
少し前、太陽神ケペルラーアトゥム戦のため、力を温存しなければならないと確認したフォルティシモである。
その考えをあっという間に覆したことに従者たちから反論があったが、フォルティシモも何も考えずにそう言っている訳ではない。
「俺の託宣の直後、ここで派手に大氾濫の魔物を一掃すれば、俺の言葉の真実味が増すはずだ。今なら消費以上のリターンがある」
「それで太陽神に敗北したら、すべてが水泡に帰するぞ」
「エン、それこそ無意味な心配だろ」
フォルティシモは【転移】を発動し、目の前に青い渦のポータルを造り出した。
「フォルティシモは最強だ」
「どうして、こういう時は論理を捨てる? 私たちは主を万全な状態で戦いへ送り出すために、準備をしていた。だから馬鹿主なんだ」
近衛翔のサポートAIエンシェントは、口では文句を重ねながら笑っていた。彼女はよくフォルティシモを理解してくれている。
アクロシア大陸の上空に転移したフォルティシモは、大陸中を見下ろしていた。
使うのは当然、竜神ディアナ・ルナーリスと戦った時に使った魔王のコードである。
「制天・太陽・光鉾」
魔王の太陽は再び大陸中を照らし、魔物だけを消滅させ続ける。
◇
「フォルティシモさん!?」
最前線で戦っているフィーナは、事前に聞いていた作戦とはまったく異なった状況へ戸惑いを覚えた。
フィーナはフォルティシモは神々の戦いのため、大氾濫には力を貸せないと聞いていた。そんなことが喧伝されたら士気に関わるため、最高機密の情報と言って良いだろう。
しかしそれに反して、フォルティシモが動いた。
あのフォルティシモが造り出した無数の太陽が、空を支配している間は、魔物は生まれた瞬間に消滅していく。
魔王の太陽が空に浮かんでいる限り、休憩も、負傷兵の搬送も、治療行為も、部隊再編も、何でも安全に行える。
フィーナは冷静に、まずは板状の魔法道具を取り出しキュウへメッセージを送った。キュウの状況は分からないけれど、メッセージなら彼女が余裕のある時間に返信してくれるはずだ。
> ご主人様が、今から十時間、太陽の魔術を維持されるそうです
四日四晩無限に続く大氾濫の中で、天空の王フォルティシモはたった一人で大陸中の人々が休める時間を作ってくれた。
「怪我人の搬送を! いえ、死んでいても、私が【蘇生】をします!」
◇
キュウは緊張した面持ちでその場に立っていた。
そこはサンタ・エズレル神殿の大礼拝堂で、万人が偉大なる星の女神マリアステラへ祈りを捧げるための場所である。
大礼拝堂にはキュウの他に、主人、セフェール、キャロル、里長タマ、カリオンドル女皇ルナーリス、勝利の女神ヴィカヴィクトリア、そして大礼拝堂の天井を破壊してこちらを見下ろす最果ての黄金竜の姿があった。
最後の一人はサンタ・エズレル神殿よりも巨大な体躯を持つせいで、自分たちが玩具にでもなったようなサイズ感である。
今は主人の御技によって大氾濫が落ち着いていた。
今の内に、太陽神ケペルラーアトゥムを異世界召喚して神戯に参加させる。
『良いか、協力者よ。力を貸してやるのは、あくまでも我が目的のため、太陽の神が邪魔だからだ』
山のように巨大な体躯を持つ最果ての黄金竜は、主人へ向かって話し掛けただけでサンタ・エズレル神殿全体が揺らぐ。
「今更どうした? 拠点攻防戦だって手伝ってくれただろ」
最果ての黄金竜はエルミアに呼び出されて狐人族と戦ったらしい。狐人族にこの強大なドラゴンと戦える戦士がいたことにも驚きだけれど、さらに驚いた事実がある。
彼は<フォルテピアノ>の共有倉庫にある魔法薬や魔法道具などを、強奪していって返していないらしいのだ。
ピアノは「ほとんどフォルティシモのアイテムだったから」と苦笑していたけれど、笑い事ではない。
主人の物が大量に盗まれてしまったのだ。主人は「課金アイテムはあったが消費アイテムばっかだからな」と言いつつ、笑っていなかったし、キュウの耳は主人の憤りを聞き取っている。
最果ての黄金竜と話ができるキュウが、何とか返して貰えるように交渉するべきだろう。いつか、この山のように巨大で、空を黄金に染め上げるドラゴンと。
『化かしと裏切りの得意な狐がいるのだぞ。誇り高き竜神である我でなければ、この場で焼き払ってやるところだ』
この場の注意が里長タマへ集まる。狐と呼ばれるとキュウの可能性もあるけれど、以前に出会った時は敵意を向けられなかったのでキュウではない。
「おいタマ、竜神とお前は仲が悪いのか?」
「いいや? わてからは特に思うところはないかえ」
「なら一方的な恨みか。………いや待てよ。最果ての黄金竜を千年くらい封じ込めたのは、タマの召喚したテディベアだったな? それでも思うところはないと言ってるか?」
「かかか、偶然かえ?」
キュウは里長タマと最果ての黄金竜を交互に聞き回す。里長タマは堂々と嘘を吐いている。
「良し分かった。今は過去のことは置いておけ。とにかく、お前らが俺の要請に応えたのは、太陽神を倒すためだ。それで良いな?」
キュウが二人の感情を読み取って何かフォローをする前に、主人が全員へ話し掛けた。それは相手のことを考えていない言葉だったけれど、この場に居る者たちの総意でもあった。
「作戦を再確認する。お前たちは協力して太陽神ケペルラーアトゥムを、異世界ファーアースへ召喚し、神戯へ強制参加させる。それによって太陽神は、アバターが本体となる。そしてそのアバターと俺が戦い、太陽神を撃破する」
ほとんど全員が肯定する中で、ルナーリスだけが恐る恐る手を挙げていた。彼女は二つの神の神格を受け継いでおり、負担は他者の倍だ。だから精神の安定のため、彼女が最も信頼しているキャロルが同席している。
「なんだ、ルナーリス?」
「た、太陽神に、こちらの作戦が気取られている可能性はないでしょうか? 前回の時みたいに、今すぐこちらへ顕現されたら」
それに答えるのはキュウだ。
「それは問題ありません。知っていても、できないからです」
「できない、ですか?」
「はい。ケペルラーアトゥム様はご主人様へ【最後の審判】で、マリアステラ様が期待された力を示すよう祝福されました。だからケペルラーアトゥム様はご主人様と戦うまでは、何もかも壊すようなことはしません」
「自分が、死ぬかも知れないのに、でしょうか?」
自らの命が失われることを何よりも怯えているルナーリスには、理解して貰えないかも知れない。しかしキュウには分かる。自分の命よりも大切なものは、確かにある。
「はい。ケペルラーアトゥム様は、自分が滅びても神としての矜恃を全うされます」
キュウの言葉は、この場で神の位階を持つ者たちへどう影響したのか。里長タマ、勝利の女神ヴィカヴィクトリア、最果ての黄金竜のキュウを見る目が変わった気がする。
「それからできない理由ですが、神様たちは神戯のルールに則っている者に対しては、ルールの範囲内でしか干渉できないんです」
最果ての黄金竜、ピアノを上回る力を持ちながら、テディベアに敗北を喫している。
里長タマ、管理者としての能力を持っていても自ら戦闘する様子がない。
勝利の女神ヴィカヴィクトリア、強大な神という話で、あれだけアーサーを優先しているのに後方支援しかしていない。
そして何よりも女神マリアステラは、レベル一のノービスだった。主催者であり、太陽神ケペルラーアトゥムの上位者である女神マリアステラでさえ、神戯のルールを守っている。
「危険なのは【最後の審判】だけです。それまでは、誰も神戯のルールを破れません」
だからその前に、太陽神ケペルラーアトゥムを召喚して倒すのだ。そうでなければあの強大無比な太陽の女神を、人類が倒す方法はない。
「とにかく、お前たちは太陽神を呼び寄せれば良い。あとは、この最強のフォルティシモに任せろ」
「改善は見られるが、戦線の状況はあまり良くないな。まだ女神を信じる者も多い」
フォルティシモはそんなエンシェントの報告を受けても、冷静に受け止めていた。
いや内心はちょっと苛立ったので、目に付いたキュウの尻尾をわしゃわしゃしたお陰で冷静だった。キュウは驚いていたけれど、無言で頷いたら頷き返してくれたので大丈夫だ。
「世界が滅びるって言ってる女神より、これだけ助けてる俺を信じそうなものだけどな」
フォルティシモは物語の英雄のように、フォルティシモの言葉が女神の神託を超えて世界中の人々から支持されて、さすが最強だと言われるのを期待した―――訳ではない。
分かっていた。現実の人々はそう都合良くできていない。
言葉だけで動いてくれる人間は、言葉の通じる人間だけだ。
「フォルティシモ様、この大陸で信仰されていた女神の神託を覆すことは、不可能なはずだったのです。それを効果が悪い、程度に留められたのは最良の結果かと思われます」
フォルティシモはラナリアのフォローを手を掲げて止めた。
「いいか、約束する。次は、この最強のフォルティシモからの託宣は、マリアステラの神託、しかも成り済ましに負けることはない。絶対だ」
「次の機会があるとは思えないが」
「あるかも知れないだろ」
フォルティシモが神戯の主催者である女神マリアステラや、千年間管理運営を行っている太陽神ケペルラーアトゥムの影響力を上書きしなければならないような、そんな機会があるかも知れない。
今はそんな状況は思い浮かばないが、あるかも知れないのだ。
フォルティシモたちが信仰心エネルギーの盛衰を気に掛けている間にも、大氾濫は止まらない。
地上を洗い流す水の如く無限に魔物が発生するため、フォルティシモたちや人々の混乱などお構いなしに戦いは続いている。
偽りの女神の神託のせいで、各地で脱走者が報告され、いくつかの戦線では撤退を余儀なくされてしまった。しかし報告の通り最悪の結果とはならない。各地で奮戦する者がいて、またフォルティシモの言葉を信じてくれる者がいた。
そんな中でフォルティシモは仲間たちへ宣言する。
「作戦変更だ。俺が一撃、大氾濫の魔物へ喰らわせてやる」
「本気か?」
少し前、太陽神ケペルラーアトゥム戦のため、力を温存しなければならないと確認したフォルティシモである。
その考えをあっという間に覆したことに従者たちから反論があったが、フォルティシモも何も考えずにそう言っている訳ではない。
「俺の託宣の直後、ここで派手に大氾濫の魔物を一掃すれば、俺の言葉の真実味が増すはずだ。今なら消費以上のリターンがある」
「それで太陽神に敗北したら、すべてが水泡に帰するぞ」
「エン、それこそ無意味な心配だろ」
フォルティシモは【転移】を発動し、目の前に青い渦のポータルを造り出した。
「フォルティシモは最強だ」
「どうして、こういう時は論理を捨てる? 私たちは主を万全な状態で戦いへ送り出すために、準備をしていた。だから馬鹿主なんだ」
近衛翔のサポートAIエンシェントは、口では文句を重ねながら笑っていた。彼女はよくフォルティシモを理解してくれている。
アクロシア大陸の上空に転移したフォルティシモは、大陸中を見下ろしていた。
使うのは当然、竜神ディアナ・ルナーリスと戦った時に使った魔王のコードである。
「制天・太陽・光鉾」
魔王の太陽は再び大陸中を照らし、魔物だけを消滅させ続ける。
◇
「フォルティシモさん!?」
最前線で戦っているフィーナは、事前に聞いていた作戦とはまったく異なった状況へ戸惑いを覚えた。
フィーナはフォルティシモは神々の戦いのため、大氾濫には力を貸せないと聞いていた。そんなことが喧伝されたら士気に関わるため、最高機密の情報と言って良いだろう。
しかしそれに反して、フォルティシモが動いた。
あのフォルティシモが造り出した無数の太陽が、空を支配している間は、魔物は生まれた瞬間に消滅していく。
魔王の太陽が空に浮かんでいる限り、休憩も、負傷兵の搬送も、治療行為も、部隊再編も、何でも安全に行える。
フィーナは冷静に、まずは板状の魔法道具を取り出しキュウへメッセージを送った。キュウの状況は分からないけれど、メッセージなら彼女が余裕のある時間に返信してくれるはずだ。
> ご主人様が、今から十時間、太陽の魔術を維持されるそうです
四日四晩無限に続く大氾濫の中で、天空の王フォルティシモはたった一人で大陸中の人々が休める時間を作ってくれた。
「怪我人の搬送を! いえ、死んでいても、私が【蘇生】をします!」
◇
キュウは緊張した面持ちでその場に立っていた。
そこはサンタ・エズレル神殿の大礼拝堂で、万人が偉大なる星の女神マリアステラへ祈りを捧げるための場所である。
大礼拝堂にはキュウの他に、主人、セフェール、キャロル、里長タマ、カリオンドル女皇ルナーリス、勝利の女神ヴィカヴィクトリア、そして大礼拝堂の天井を破壊してこちらを見下ろす最果ての黄金竜の姿があった。
最後の一人はサンタ・エズレル神殿よりも巨大な体躯を持つせいで、自分たちが玩具にでもなったようなサイズ感である。
今は主人の御技によって大氾濫が落ち着いていた。
今の内に、太陽神ケペルラーアトゥムを異世界召喚して神戯に参加させる。
『良いか、協力者よ。力を貸してやるのは、あくまでも我が目的のため、太陽の神が邪魔だからだ』
山のように巨大な体躯を持つ最果ての黄金竜は、主人へ向かって話し掛けただけでサンタ・エズレル神殿全体が揺らぐ。
「今更どうした? 拠点攻防戦だって手伝ってくれただろ」
最果ての黄金竜はエルミアに呼び出されて狐人族と戦ったらしい。狐人族にこの強大なドラゴンと戦える戦士がいたことにも驚きだけれど、さらに驚いた事実がある。
彼は<フォルテピアノ>の共有倉庫にある魔法薬や魔法道具などを、強奪していって返していないらしいのだ。
ピアノは「ほとんどフォルティシモのアイテムだったから」と苦笑していたけれど、笑い事ではない。
主人の物が大量に盗まれてしまったのだ。主人は「課金アイテムはあったが消費アイテムばっかだからな」と言いつつ、笑っていなかったし、キュウの耳は主人の憤りを聞き取っている。
最果ての黄金竜と話ができるキュウが、何とか返して貰えるように交渉するべきだろう。いつか、この山のように巨大で、空を黄金に染め上げるドラゴンと。
『化かしと裏切りの得意な狐がいるのだぞ。誇り高き竜神である我でなければ、この場で焼き払ってやるところだ』
この場の注意が里長タマへ集まる。狐と呼ばれるとキュウの可能性もあるけれど、以前に出会った時は敵意を向けられなかったのでキュウではない。
「おいタマ、竜神とお前は仲が悪いのか?」
「いいや? わてからは特に思うところはないかえ」
「なら一方的な恨みか。………いや待てよ。最果ての黄金竜を千年くらい封じ込めたのは、タマの召喚したテディベアだったな? それでも思うところはないと言ってるか?」
「かかか、偶然かえ?」
キュウは里長タマと最果ての黄金竜を交互に聞き回す。里長タマは堂々と嘘を吐いている。
「良し分かった。今は過去のことは置いておけ。とにかく、お前らが俺の要請に応えたのは、太陽神を倒すためだ。それで良いな?」
キュウが二人の感情を読み取って何かフォローをする前に、主人が全員へ話し掛けた。それは相手のことを考えていない言葉だったけれど、この場に居る者たちの総意でもあった。
「作戦を再確認する。お前たちは協力して太陽神ケペルラーアトゥムを、異世界ファーアースへ召喚し、神戯へ強制参加させる。それによって太陽神は、アバターが本体となる。そしてそのアバターと俺が戦い、太陽神を撃破する」
ほとんど全員が肯定する中で、ルナーリスだけが恐る恐る手を挙げていた。彼女は二つの神の神格を受け継いでおり、負担は他者の倍だ。だから精神の安定のため、彼女が最も信頼しているキャロルが同席している。
「なんだ、ルナーリス?」
「た、太陽神に、こちらの作戦が気取られている可能性はないでしょうか? 前回の時みたいに、今すぐこちらへ顕現されたら」
それに答えるのはキュウだ。
「それは問題ありません。知っていても、できないからです」
「できない、ですか?」
「はい。ケペルラーアトゥム様はご主人様へ【最後の審判】で、マリアステラ様が期待された力を示すよう祝福されました。だからケペルラーアトゥム様はご主人様と戦うまでは、何もかも壊すようなことはしません」
「自分が、死ぬかも知れないのに、でしょうか?」
自らの命が失われることを何よりも怯えているルナーリスには、理解して貰えないかも知れない。しかしキュウには分かる。自分の命よりも大切なものは、確かにある。
「はい。ケペルラーアトゥム様は、自分が滅びても神としての矜恃を全うされます」
キュウの言葉は、この場で神の位階を持つ者たちへどう影響したのか。里長タマ、勝利の女神ヴィカヴィクトリア、最果ての黄金竜のキュウを見る目が変わった気がする。
「それからできない理由ですが、神様たちは神戯のルールに則っている者に対しては、ルールの範囲内でしか干渉できないんです」
最果ての黄金竜、ピアノを上回る力を持ちながら、テディベアに敗北を喫している。
里長タマ、管理者としての能力を持っていても自ら戦闘する様子がない。
勝利の女神ヴィカヴィクトリア、強大な神という話で、あれだけアーサーを優先しているのに後方支援しかしていない。
そして何よりも女神マリアステラは、レベル一のノービスだった。主催者であり、太陽神ケペルラーアトゥムの上位者である女神マリアステラでさえ、神戯のルールを守っている。
「危険なのは【最後の審判】だけです。それまでは、誰も神戯のルールを破れません」
だからその前に、太陽神ケペルラーアトゥムを召喚して倒すのだ。そうでなければあの強大無比な太陽の女神を、人類が倒す方法はない。
「とにかく、お前たちは太陽神を呼び寄せれば良い。あとは、この最強のフォルティシモに任せろ」
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