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北へ
鋭敏
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ゴツッ。
ドルチェナの剣は弾かれた。
余りの硬さに、怪訝な瞳をオークへ向けていく。
直ぐに大きな拳がドルチェナに向かう。反射的に後ろに跳ね、すぐさまに距離を置いた。
ドルチェナだけではない。リブロやピッポ、シモーネの刃も次々に弾かれてしまう。
後ろに下がったドルチェナに、戦斧を構えたロクが近寄った。
「どこ狙う? 皆目見当もつかん」
「ちょっと待て、付け入る所は必ずある」
「あれは肉が硬いんか? 皮か?」
「分からん」
待つ隙を与えない、目を見張る速度で詰め寄り、速度を持った拳を振り回す。
躍動する拳を右から左から絶え間なく振り回すし、風切り音と共に強烈な圧を感じていた。
圧倒する風圧にドルチェナ達は散開し標的を絞らせない。
「おい! ロク! 貸せ」
リブロがロクから大楯を奪い取るとオークへ突っ込んで行った。
濁った瞳が、迫り来るリブロに向く。
「ロク。膝の裏だ、スピードを殺せ」
ドルチェナが指示する、硬いのは皮と賭けに出た。
収縮する間接の皮。
そこまででの硬さは無いはず。
ロクの回り込む姿を確認。シモーネとピッポも続いて行き、オークの背後を伺う。
リブロが襲い掛かるオークの拳を盾でいなした。
「ぐっ!」
直撃を避けても大きな衝撃がリブロを襲い、全身が一瞬痺れた。
ドルチェナがリブロのあとを追い、オークに突っ込んでいく。
ちょろちょろと動く目障りな存在にオークは苛立ちを露わにした。
ふたりは右に左に振り回す拳の風を感じながら、紙一重で躱していく。
『ブォォオオオオオオオオオ』
血走る白目が見開いた。
拳が作る風の圧が上がる。
一瞬の隙が致命的な結果を生むのは明らかだ。
リブロもドルチェナも、体中から噴き出すイヤな汗に皮膚が粟立った。
歴戦の兵でも感じる、危機感。
頬にチリっと感じる風がさらに危機感を煽っていく。
リブロの盾が大きな擦過音を鳴らし続け、ドルチェナの目前を拳がすり抜けた。
まだか。
久々に感じる焦燥感に、ドルチェナから余裕が薄れていく。
「そらぁ!」
ロクが戦斧を振り抜いた。
両手で握る大戦斧を力の限り振りきる。
破けた皮膚の隙間目掛け、ピッポがナイフを突き立てた。
膝裏に突き立ったピッポのナイフを、シモーネがズブっと深く蹴り込んでいく。
オークの膝がわずかに抜ける。
痛む素振りすら見せないが、間違いなく効果があった。
その姿にロクとピッポが笑みを浮かべる。
シモーネが一息つき下がろうとした瞬間、オークの後ろ蹴りが飛んで来た。
一瞬の油断。
オークは痛みなどもろともせず、虫でも払うかのようにナイフの刺さる足を後ろに振り上げる。
致命的と思えた自らの蹴りの手応えに、シモーネの集中が一瞬途切れていたのも事実。
吹き飛ぶシモーネの姿にドルチェナも、リブロも、作ってしまった瞬間の間。おとりとして、致命的なミスを犯してしまう。
「ごばぁっ⋯⋯」
「かはっ」
リブロは盾ごと地面にめり込み、ドルチェナは真横に飛ばされ、地面を転がった。
ドルチェナは頭を振りながら、痛む体を起こして行く。
リブロは口から血を流しながら、自らの体を引き摺り下がって行った。
オークは辺りを見渡し、倒れた人間を値踏みする。
どれにしようかな、と。
濁った瞳が歌う。
ロクとピッポが倒れるシモーネに駆け出す。
オークは力の入らない膝をガクンとさせながら、身動きひとつしないシモーネに近づいて行った。
前の時を良く思い出せ。
今一度、キルロは思考を巡らせていく。
内側から爆発させたら剣は通った。
肉は斬れる。
皮膚を何とか出来れば⋯⋯。
「おわっ」
思考を巡らす間も拳の勢いが途切れる事はない。
痛みと体力がバカになっているのか?
齧る事で身体能力の底上げが行っているのは間違いない。
何かしらの代償を払っているはずなのだが⋯⋯。
何にせよ、この足を止めないと。
どうする?
先ほどのエーシャの魔法を思い出す。
あの避け方は反射だ。
考えて何かをしている分けではない。
ひたすらに身体能力を底上げた結果、思考能力はゼロ?
単純明快。
とはいえ、この速さに、この威力はキツイがな。
「ユラ! エーシャ! ユラが先。エーシャがそれに続いてかましてくれ。エーシャ、足元だ」
キルロが拳を避けながら、切れ切れに指示を伝える。
後ろに下がるユラは少し怪訝な表情を浮かべるが、言われた通りに詠唱を開始。
エーシャも一瞬、逡巡する素振りを見せたがすぐにキルロの意図を汲んだ。
「ユラ、少しだけ左を狙って」
怪訝な表情を浮かべながらも詠唱しながら頷いた。
エーシャも鞍上から詠う。
吹き飛ぶマッシュの姿に心が揺れるが、詠唱を止めない。
フラフラと立ち上がるカズナの姿に険しい表情になる。
「どけ! 【炎柱】」
ユラは手に赤い光を宿したまま、オークに飛び込んで行った。
キルロ達は後ろへ跳ね。フェインはマッシュを後ろへと引き摺っていく。
ユラの放つ炎がオークを襲う。
オークが体を捻り、ユラの炎を避けた。
「【氷槍】」
ユラの炎に態勢の崩れた足元。エーシャの氷の霧が発生した瞬間、オークの足に無数の氷の針が突き刺さった。地面から突き出す氷の槍がオークの足に無数の穴を開けていく。
エーシャはその姿を確認するとすぐに下がる。
ヘッグの首元を軽く叩き、上手く行った事を労った。
突き刺さった氷の針を不思議そうにオークは見つめている。
動かない自らの足を訝しげな様子も見せず、ただただ視線を落とした。
「エーシャ!」
「キルロさん!」
ハルヲとフェインの呼ぶ声が響いた。
動かぬオークの隙を見逃さない。
エーシャはハルヲの側で呻くカズナの元へ、キルロはフェインが見守るマッシュの元へと飛び込んだ。
「ユラ! 少しだけ頼む!」
ユラは直ぐに動けないオークの元へと疾走する。
ハルヲもフェインも入れ替わるようにオークの元へ飛び込んで行った。
キルロの顔は厳しい、激しい衝撃に白目を剥いて倒れるマッシュの無残な姿に顔をしかめる。
エーシャも荒い呼吸を繰り返すカズナに、唇を噛んだ。
「【癒復回光《レフェクト・サナティオ・トゥルボ》】」
「【癒白光】」
金色の光球と白光の光球は淡く光り、横たわる二人へとゆっくりと落ちて行った。
カズナはゆっくりと体を起こし、自身の具合を確認するかように頭を振る。
マッシュは口から血溜まりを吐くと、顔に血の気が戻っていった。
ゆっくりと上半身を起こして首に手を回す、左右に軽く振ると膝に手を当て立ち上がる。
「いつも、悪いな」
「あんまり、無茶しないでくれよ」
キルロが諌めると、眉をひとつ上げ答えた。
「団長!」
ユラの叫びに、キルロはすぐに反応する。
ずるずると血塗れの足を引きずるオークから、ユラが必死にハルヲを引き離そうと地面を引き摺っていた。
吹き飛んだ衝撃なのか、気を失い力の入っていない体をユラに引き摺られている。
クソ。
拍動は激しくなり、気ばかりがはやった。
地面を叩く激しい衝突音が聞こえる。
パラパラと瓦礫の舞う音が鳴る。
急げとだけ言い聞かせ、足を動かす。
「もろに吹っ飛ばされちまった」
ユラはそれだけ言うと、前線へと駆け出す。
力なく横たわれるハルヲに急いでヒールを落とす。
「【癒白光】」
「団長! そこじゃダメだ!」
え?
ユラの叫びと共に、激しい衝撃が襲う。
しまった、焦った。
かち上げるオークの拳。
高々と吹き飛ぶキルロの体。
途切れる意識。
ハルヲに落とすはずだった消えかけの光球は、吹き飛ぶキルロの手から無情にもオークの頭上へ落ちて行った。
激しく息する二人。
背中越しに互いの呼吸が荒い事を認識出来た。
止めどないホブゴブリンの渦が今もまだ続いている。
ユトやヤクラス達が渦の中心を目指すが、厚いホブゴブリンの黒い壁がそれを阻んだ。
なりふり構わず斬りまくる。
血を浴び、血を流し、どこが傷ついているのか、もはや分からぬほどに赤く染まっていた。
絡みつかれたら飲み込まれてしまう恐怖が、じりっとにじり寄る。
外から矢を放ち、詠唱を続ける。
体力の限界もひたひたと歩み寄る。
「クソ! マインドレスだ」
「すまん、こっちもだ」
魔力切れを起こす者が増えてくるとネガティブな空気が、レグレクィエス(王の休養)を覆い始める。
外からの援軍が減れば、渦中に飛び込んだ者はジリ貧となってしまう。
その様子を見つめていたシャロンが剣を抜いた。
「魔力切れの者は、負傷者のサポートに回って! 動ける者は行きましょう!」
シャロンが厳しい目を外に向け、ホブゴブリンの渦へと飛び込んだ。
その後ろに小さな影がいた事には気が付かない。
シャロンの横をすり抜けた一筋の閃光が、鋭敏な動きでホブゴブリンを斬り刻む。
両手に握る白銀のナイフは止まる事を知らない。
血を浴びる間もなく次へと向かう。
白い閃光が渦の中心へと駆け抜けて行った。
ドルチェナの剣は弾かれた。
余りの硬さに、怪訝な瞳をオークへ向けていく。
直ぐに大きな拳がドルチェナに向かう。反射的に後ろに跳ね、すぐさまに距離を置いた。
ドルチェナだけではない。リブロやピッポ、シモーネの刃も次々に弾かれてしまう。
後ろに下がったドルチェナに、戦斧を構えたロクが近寄った。
「どこ狙う? 皆目見当もつかん」
「ちょっと待て、付け入る所は必ずある」
「あれは肉が硬いんか? 皮か?」
「分からん」
待つ隙を与えない、目を見張る速度で詰め寄り、速度を持った拳を振り回す。
躍動する拳を右から左から絶え間なく振り回すし、風切り音と共に強烈な圧を感じていた。
圧倒する風圧にドルチェナ達は散開し標的を絞らせない。
「おい! ロク! 貸せ」
リブロがロクから大楯を奪い取るとオークへ突っ込んで行った。
濁った瞳が、迫り来るリブロに向く。
「ロク。膝の裏だ、スピードを殺せ」
ドルチェナが指示する、硬いのは皮と賭けに出た。
収縮する間接の皮。
そこまででの硬さは無いはず。
ロクの回り込む姿を確認。シモーネとピッポも続いて行き、オークの背後を伺う。
リブロが襲い掛かるオークの拳を盾でいなした。
「ぐっ!」
直撃を避けても大きな衝撃がリブロを襲い、全身が一瞬痺れた。
ドルチェナがリブロのあとを追い、オークに突っ込んでいく。
ちょろちょろと動く目障りな存在にオークは苛立ちを露わにした。
ふたりは右に左に振り回す拳の風を感じながら、紙一重で躱していく。
『ブォォオオオオオオオオオ』
血走る白目が見開いた。
拳が作る風の圧が上がる。
一瞬の隙が致命的な結果を生むのは明らかだ。
リブロもドルチェナも、体中から噴き出すイヤな汗に皮膚が粟立った。
歴戦の兵でも感じる、危機感。
頬にチリっと感じる風がさらに危機感を煽っていく。
リブロの盾が大きな擦過音を鳴らし続け、ドルチェナの目前を拳がすり抜けた。
まだか。
久々に感じる焦燥感に、ドルチェナから余裕が薄れていく。
「そらぁ!」
ロクが戦斧を振り抜いた。
両手で握る大戦斧を力の限り振りきる。
破けた皮膚の隙間目掛け、ピッポがナイフを突き立てた。
膝裏に突き立ったピッポのナイフを、シモーネがズブっと深く蹴り込んでいく。
オークの膝がわずかに抜ける。
痛む素振りすら見せないが、間違いなく効果があった。
その姿にロクとピッポが笑みを浮かべる。
シモーネが一息つき下がろうとした瞬間、オークの後ろ蹴りが飛んで来た。
一瞬の油断。
オークは痛みなどもろともせず、虫でも払うかのようにナイフの刺さる足を後ろに振り上げる。
致命的と思えた自らの蹴りの手応えに、シモーネの集中が一瞬途切れていたのも事実。
吹き飛ぶシモーネの姿にドルチェナも、リブロも、作ってしまった瞬間の間。おとりとして、致命的なミスを犯してしまう。
「ごばぁっ⋯⋯」
「かはっ」
リブロは盾ごと地面にめり込み、ドルチェナは真横に飛ばされ、地面を転がった。
ドルチェナは頭を振りながら、痛む体を起こして行く。
リブロは口から血を流しながら、自らの体を引き摺り下がって行った。
オークは辺りを見渡し、倒れた人間を値踏みする。
どれにしようかな、と。
濁った瞳が歌う。
ロクとピッポが倒れるシモーネに駆け出す。
オークは力の入らない膝をガクンとさせながら、身動きひとつしないシモーネに近づいて行った。
前の時を良く思い出せ。
今一度、キルロは思考を巡らせていく。
内側から爆発させたら剣は通った。
肉は斬れる。
皮膚を何とか出来れば⋯⋯。
「おわっ」
思考を巡らす間も拳の勢いが途切れる事はない。
痛みと体力がバカになっているのか?
齧る事で身体能力の底上げが行っているのは間違いない。
何かしらの代償を払っているはずなのだが⋯⋯。
何にせよ、この足を止めないと。
どうする?
先ほどのエーシャの魔法を思い出す。
あの避け方は反射だ。
考えて何かをしている分けではない。
ひたすらに身体能力を底上げた結果、思考能力はゼロ?
単純明快。
とはいえ、この速さに、この威力はキツイがな。
「ユラ! エーシャ! ユラが先。エーシャがそれに続いてかましてくれ。エーシャ、足元だ」
キルロが拳を避けながら、切れ切れに指示を伝える。
後ろに下がるユラは少し怪訝な表情を浮かべるが、言われた通りに詠唱を開始。
エーシャも一瞬、逡巡する素振りを見せたがすぐにキルロの意図を汲んだ。
「ユラ、少しだけ左を狙って」
怪訝な表情を浮かべながらも詠唱しながら頷いた。
エーシャも鞍上から詠う。
吹き飛ぶマッシュの姿に心が揺れるが、詠唱を止めない。
フラフラと立ち上がるカズナの姿に険しい表情になる。
「どけ! 【炎柱】」
ユラは手に赤い光を宿したまま、オークに飛び込んで行った。
キルロ達は後ろへ跳ね。フェインはマッシュを後ろへと引き摺っていく。
ユラの放つ炎がオークを襲う。
オークが体を捻り、ユラの炎を避けた。
「【氷槍】」
ユラの炎に態勢の崩れた足元。エーシャの氷の霧が発生した瞬間、オークの足に無数の氷の針が突き刺さった。地面から突き出す氷の槍がオークの足に無数の穴を開けていく。
エーシャはその姿を確認するとすぐに下がる。
ヘッグの首元を軽く叩き、上手く行った事を労った。
突き刺さった氷の針を不思議そうにオークは見つめている。
動かない自らの足を訝しげな様子も見せず、ただただ視線を落とした。
「エーシャ!」
「キルロさん!」
ハルヲとフェインの呼ぶ声が響いた。
動かぬオークの隙を見逃さない。
エーシャはハルヲの側で呻くカズナの元へ、キルロはフェインが見守るマッシュの元へと飛び込んだ。
「ユラ! 少しだけ頼む!」
ユラは直ぐに動けないオークの元へと疾走する。
ハルヲもフェインも入れ替わるようにオークの元へ飛び込んで行った。
キルロの顔は厳しい、激しい衝撃に白目を剥いて倒れるマッシュの無残な姿に顔をしかめる。
エーシャも荒い呼吸を繰り返すカズナに、唇を噛んだ。
「【癒復回光《レフェクト・サナティオ・トゥルボ》】」
「【癒白光】」
金色の光球と白光の光球は淡く光り、横たわる二人へとゆっくりと落ちて行った。
カズナはゆっくりと体を起こし、自身の具合を確認するかように頭を振る。
マッシュは口から血溜まりを吐くと、顔に血の気が戻っていった。
ゆっくりと上半身を起こして首に手を回す、左右に軽く振ると膝に手を当て立ち上がる。
「いつも、悪いな」
「あんまり、無茶しないでくれよ」
キルロが諌めると、眉をひとつ上げ答えた。
「団長!」
ユラの叫びに、キルロはすぐに反応する。
ずるずると血塗れの足を引きずるオークから、ユラが必死にハルヲを引き離そうと地面を引き摺っていた。
吹き飛んだ衝撃なのか、気を失い力の入っていない体をユラに引き摺られている。
クソ。
拍動は激しくなり、気ばかりがはやった。
地面を叩く激しい衝突音が聞こえる。
パラパラと瓦礫の舞う音が鳴る。
急げとだけ言い聞かせ、足を動かす。
「もろに吹っ飛ばされちまった」
ユラはそれだけ言うと、前線へと駆け出す。
力なく横たわれるハルヲに急いでヒールを落とす。
「【癒白光】」
「団長! そこじゃダメだ!」
え?
ユラの叫びと共に、激しい衝撃が襲う。
しまった、焦った。
かち上げるオークの拳。
高々と吹き飛ぶキルロの体。
途切れる意識。
ハルヲに落とすはずだった消えかけの光球は、吹き飛ぶキルロの手から無情にもオークの頭上へ落ちて行った。
激しく息する二人。
背中越しに互いの呼吸が荒い事を認識出来た。
止めどないホブゴブリンの渦が今もまだ続いている。
ユトやヤクラス達が渦の中心を目指すが、厚いホブゴブリンの黒い壁がそれを阻んだ。
なりふり構わず斬りまくる。
血を浴び、血を流し、どこが傷ついているのか、もはや分からぬほどに赤く染まっていた。
絡みつかれたら飲み込まれてしまう恐怖が、じりっとにじり寄る。
外から矢を放ち、詠唱を続ける。
体力の限界もひたひたと歩み寄る。
「クソ! マインドレスだ」
「すまん、こっちもだ」
魔力切れを起こす者が増えてくるとネガティブな空気が、レグレクィエス(王の休養)を覆い始める。
外からの援軍が減れば、渦中に飛び込んだ者はジリ貧となってしまう。
その様子を見つめていたシャロンが剣を抜いた。
「魔力切れの者は、負傷者のサポートに回って! 動ける者は行きましょう!」
シャロンが厳しい目を外に向け、ホブゴブリンの渦へと飛び込んだ。
その後ろに小さな影がいた事には気が付かない。
シャロンの横をすり抜けた一筋の閃光が、鋭敏な動きでホブゴブリンを斬り刻む。
両手に握る白銀のナイフは止まる事を知らない。
血を浴びる間もなく次へと向かう。
白い閃光が渦の中心へと駆け抜けて行った。
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